取材車両 VFY11-014775
入庫日   2005年07月15日
走行距離 96180km

ユーザーからの依頼内容

エンジンが、走行中に突然ストールする。再始動は直ちに出来る時と、困難な時がある。


現車での症状確認

エンジンが冷間時は正常。
エンジンが温間時、走行開始後約5分位でアクセルON時、大きく息をつく感じとなる。
車両を停止させるとエンジンもストールし、アクセルONで再始動は容易に可能。アクセルOFFでは再始動は困難。

早速、故障の探究を開始。

メーターパネル内のエンジンチェックランプが点灯している為、ニッサン コンサルトUを使用し、故障箇所を読み取ります。


その結果、水温センサー(P0115)の不具合であることが判明しました。

エンジンチェックランプが点灯

OBDUの端子

ニッサン コンサルトUを使用中

オルタネータの上部辺りに水温センサーが取り付けられている

取り外した水温センサー(左)と新品(右)

ニッサン コンサルトUの診断結果を受け、水温センサー(ECCS C/U用)を交換。

交換時に抜けてしまった冷却水を補充しエンジンを始動。

冷却水が完全に冷却系統内に充填された事を確認。

その後、エンジンをアイドリング状態で約15分位回転させていると、エンジンストールが発生。

水温センサーを交換する前は、若干のハンチングを繰り返してからエンジンがストールしていたが、水温センサー交換後はアイドリングで静かに回転している中、いつの間にかエンジンがストールする感じに変わっていた。

やはり、水温センサーが故障原因の一部になっていた事に違いは無かった。


再びニッサン コンサルトUを接続し診断開始。

しかし、診断の結果は異常無しの表示であった。

ニッサン コンサルトUでは診断出来ない内容の故障である。

ここからは、追浜ガレージのやり方で診断開始。

燃圧計を取り付け

燃圧は規定値

フューエルポンプ脱着用フロアパネルホール

駆動電圧を確認

エンジンがストールする時にガス欠感が有り、フューエルポンプが停止している様だったので、燃圧計をエンジンルーム内のフューエルインテークホースに接続し、燃料ポンプから圧送されてくるガソリンの燃圧を測定開始。

日産自動車発刊の整備要領書によると、簡易点検方法としてエンジンを始動しアイドリング状態で約0.25MPa(2.5kg/cm²)有り、プレッシャレギュレーターのバキュームホースを外した時に約0.29MPa(2.9kg/cm²)になっているかを確認する様に指示されている。

燃圧計を接続しテストすると、いずれも数値的には良好であった。

その後、フューエルポンプの駆動回路に駆動電圧が供給されているかどうかを確認。

フューエルポンプ脱着用フロアパネルホール付近に取り付けられているフューエルポンプに直接接続されている配線のカプラー部分にサーキットテスターのテスト棒を接続し、フューエルポンプに駆動電圧が供給され、アースが落ちているかを点検します。

確認の結果、エンジンが正常に回転している時はフューエルポンプの駆動電圧は、規定値の電源電圧を表示し、アースに落ちています。

エンジンがストールする寸前にフューエルポンプ駆動回路のアース側が電源電圧となり、その後エンジンがストールする事が判明しました。

この中にECCS C/Uが格納されている

グローブボックスを取り外した奥

メーンリレーを確認中

フューエルポンプの駆動電圧が電源電圧、アース側も電源電圧になり電位差が無くなる事が判明した為、電気回路を順次確認して行く事にする。

メーンリレーを電源電圧が正常に掛かっているか、リレー作動時に接点側の抵抗値は正常か、またリレーの接点側の電源側に電源電圧が掛かっているかを点検する。

すると異常な無く、キースイッチをONにしたままだと作動電圧、リレーの接続状態には変化が無く、常に接続している接点側から電圧を供給している事が判明した。

続いてはECCS C/Uの点検です。

ECCS C/Uに電源電圧が確実に供給されているか。
またアースが確実に落ちているか。

この点検の結果、いずれも正常だった。

続いてフューエルポンプのアース制御用端子を確認する。

するとエンジンストール時の直前にアースが解除され、電源電圧が掛かる事が判明した。

ECCS C/Uの制御がうまく出来ていないようだ。

何かECCS C/Uの制御を停止させてしまう信号が誤って発生しているのかも知れない?

もしくはECCS C/U本体の故障か?

一番疑わしい部品から点検を開始する。

POSセンサーとPHASEセンサーはサービスキャンペーンを実施し交換している為、点検を削除しました。

次にNDIS方式のイグニッションコイルを点検する。

1気筒ずつコネクターを外し確認するが、全て同じ様にエンジンが不調となる為イグニッションコイルは正常と判断した。

続いてスパークプラグを確認すると、電極が大幅に摩耗している。

前回の交換時期を確認すると、2003年04月15日 59406km時に交換している。

既に36774km走行している。

これによりスパークプラグを新品に交換。

この作業を実施後、エンジンルーム内をよく見て点検する。

すると、スロットルチャンバー下側からクーラントが若干漏れている。

ラジエーターサブタンクを見ると、クーラントレベルが低下している。

これによりスロットルボディーを取り外してみる。

スロットルチャンバーがアイシングしない様にクーラントが循環する様になっているが、ここの合わせ面のパッキンから漏れている様だ。

早速分解してみると、合わせ面のパッキンが衰損しクーラントが外側に少し、エンジン内部の方へ結構な量が漏れている。

エアコレクタ内部の見てみると、結構な量のクーラントが侵入した形跡が有る。

クーラントが燃焼室内部にも侵入し、混合気の燃焼に影響を与えていた様だ。

ECCS C/Uを取り出したところ

これからECCS C/Uを点検します

(上側)交換済み(左から第1気筒)、(下側)新品

摩耗した中心電極(左から第1気筒)

スロットルチャンバー下側からの水漏れを発見

サブタンクのクーラントレベルも低下している

スロットルチャンバーのエアコレクタ側

エアコレクタのもクーラントが侵入した形跡が有る

スロットルチャンバーのヒーター部分を分解

合わせ面のパッキン 装着品(左)、新品(右)

NDIS方式の点火システム

燃焼室内に水蒸気(クーラントも含む)が侵入すると燃焼温度の低下等の問題となり、最高出力が低下し燃費も悪化する。

またスパークプラグが大きく摩耗しているのに長く使用を続けると、スパークプラグが火花を飛ばす為の要求電圧が大きくなり、二次電圧(高電圧)発生部品のイグニッションコイル等や伝達部品のプラグコード等に無理な要求が突きつけられ、寿命が縮む事が多く発生している。


エンジンが正常に回転している時には、イグニッションコイルを一気筒ずつ全気筒を順番に作動停止させてもエンジンは全て同じ様に不調となる。

しかし、エンジンがストールした時、また再始動出来ない時に一気筒ずつ全気筒を順番にイグニッションコイルをテスト用の手持ち品と交換すると、第二気筒のイグニッションコイルを交換すると再始動が可能である事に気付いた。

著しく摩耗したスパークプラグを使用した事によるのと、燃焼室内にクーラントが侵入していた事により、イグニッションコイルには通常では必要とされない位の大きな
仕事をする事が要求がされていたようだ。

これによりイグニッションコイル自身に疲労が発生し、一次信号を受けても正常に二次信号が発生しない事が少し起きたようだ。

この二次信号の異常をECCS C/Uが察知し、点火されていないものと判断し、フューエルポンプを停止させるのと同時に他のエンジン制御も停止させていたようである。

この診断結果により第二気筒のイグニッションコイルを交換した。

その後、テストを暫く繰り返したが一切異常が認められなかった。

再びニッサン コンサルトUを接続し故障コードが表示されないかを点検する。

その結果、今度はスロットルチャンバー清掃と表示がされた。

カーボン、スラッジ等の汚れが蓄積されているようだ。

エアクリーナーとスロットルチャンバーを繋いでいるエアダクトを外し、続いてAACバルブ(ステップモーター)も外します。

今日もPIT WORKブランドのエンジンシステムコンディショナー(EGI車用)を使用し、スロットルチャンバーからエアコレクター内部と、AACバルブ(ステップモーター)のスピンドル部を洗浄します。

まずスロットルバタフライを手で少し開けエンジンシステムコンディショナーを注入します。

その後エンジンをクランキングし、エンジンシステムコンディショナーをエンジン内部へ吸引させ、クランキングを停止後再びスロットルバタフライを手で少し開けエンジンシステムコンディショナーを注入します。

(左)装着されていたコイル (右)テスト用コイル

異常と判断した第二気筒のイグニッションコイル

今からエアダクトを外します

AACバルブ(ステップモーター)も外します

ここまで外したら洗浄開始

今回も使用したエンジンシステムコンディショナー

汚れた黒い液体が出てきました

洗浄中

エンジンシステムコンディショナーを注入すると内部が洗浄され,真っ黒に汚れた液体(エンジンシステムコンディショナー自身)が出てきます。

続いてAACバルブ(ステップモーター)のスピンドル部も綺麗に洗浄します。

ステップモーター内部にエンジンシステムコンディショナーが入り込むと作動不良を起こしたり、故障の原因となりますから注意が必要です。

洗浄前のAACバルブ

綺麗になったAACバルブ

スロットルチャンバー、エアコレクター、AACバルブが綺麗になったらウェスで綺麗に拭き取って洗浄して汚れたエンジンシステムコンディショナーが垂れて来てAACバルブ(ステップモーター)内部に侵入しない様にします。

その後、AACバルブ(ステップモーター)を取り付け、エアダクトも取り付けます。

ニッサン コンサルトUで故障コードを消去した後、アクセルを少し踏みながらエンジンを始動します。


エキゾ-ストパイプからかなりの白煙を出しながらエンジンが始動します。

いつもこの煙を見ていると綺麗になったなと思っています。

このまま暫くエンジンをアイドリングで回転させた後、人を替えながら試運転を繰り返し、雨天時の影響も確認して異常が無い事を確認。

最後にもう一度ニッサン コンサルトUで故障コードを読み取って、異常が無い事を確認しユーザーの元へ収めさせていただきました。


今回の整備では、これ以外にも故障の原因として考慮されるべきのイグニッションスイッチ、フューエルポンプリレー及びそれらを結び付ける配線、コネクターも点検しています。

一杯白煙が出ます

点検中のイグニッションスイッチ

空白

エンジンが走行中突然ストールする