取材車両 AK12-842840
入庫日 2008年12月05日
走行距離 51641km
現在、当該車両に使用しているエンジンオイルは、”日本サン石油 SUNOCO Svelt 0W-20”です。
”日本サン石油 SUNOCO Svelt”の銘柄のエンジンオイルには全くの問題が無い事から、同じ銘柄で粘度指数のみの変更を行います。
新たに使用を試みるのは、”日本サン石油 SUNOCO Svelt 5W-40”としました。
エンジンオイルの粘度指数変更に伴い、エンジンオイルと同時にオイルフィルターの交換も行う事とします。
”NISSAN MARCH 12SR”がトラブルの為に入庫して来ました。
トラブルの内容は、エンジン温間時に全く加速が出来ないと言うもの・・・。
既に他社の整備工場に入庫し、かなりの日数を掛けて診断と複数の部品を交換している様です。
トラブルを解消出来ない状態が続き、今回 追浜ガレージが相談を受け、入庫の運びとなりました。
エンジンオイルと”ゼロフリクション”を完全に混ぜ合わす事が出来ましたら、当該車両のエンジンに注入します。
エンジンに注入できましたら、エンジンオイルと”ゼロフリクション”の分離を防ぐ為、30分以上のアイドリング、もしくは30分以上の市街地走行を行うようにします。
オイルジョッキにエンジンオイルを注入し、”ゼロフリクション”を注入後に攪拌棒で均一になるまで混ぜ合わせました。
”ゼロフリクション”は400ml使用しますので、エンジンオイルと”ゼロフリクション”の合計量が、当該車両のエンジンオイル容量となる様に予め計算する必要があります。
エンジンオイルとゼロフリクションの攪拌が完了
攪拌棒で混ぜ合わせます
ゼロフリクションを添加中
当該車両のエンジン内部は、多少なりともダメージを受けていると容易に想像が出来るます。
この事から、エンジン内部に受けているダメージの修復を期待し、エンジンオイルの交換に合わせ、同時にエンジンオイル添加剤を注入する事にしました。
エンジンオイル添加剤として選択したのは、”Zi:ta Corporation”の”ゼロフリクション”です。
添加剤の部類は、一切信用していないのですが、この”ゼロフリクション”は、追浜ガレージにて各種試験を実施し、優秀な成績を収めておりますので、今回の作業でも使用する事に致しました。
ユーザーが使用し続けているエンジンオイル
ユーザーが訴えるトラブルの内容
エンジンが冷間時には通常の走行が可能である。
約5分ほど一般道を走行すると、トラブルが発生しエンジンが全く加速しない。
この症状は、特に3000〜3500rpm辺りで顕著に現れる。
坂道を登って行くと、そのスピードを維持出来ずに減速して行ってしまう。
5分間ほどエンジンを停止させ、エンジンを再始動時にはトラブルが解消しているが、再び走行を始めて間も無くトラブルが再発してしまう。
他社の整備工場で診断された結果、及び交換された部品
2008年05月18日
スロットルチャンバーA'ssy交換 (A6119-AX00C)
チャンバーガスケット (16175-AX000)
パッキン (14032-AX010)
パッキン (16523-AX010)
2008年10月20日
イグニッションコイル交換 (22448-AX001) 4個
パッキン (14032-AX010) 4個
2008年10月30日
クランク角センサー交換 (23731-6J90A)
クランク角センサー交換 (23731--4M50B)
2008年10月31日
O2センサーA'ssy交換 (22690-8J001)
吸気圧(吸気温)センサー交換 (22365-AX00A)
追浜ガレージにて問診し収集した情報
ユーザーは、現在の車両”NISSAN MARCH 12SR (AK12)”を所有する直前に”NISSAN SKYLINE GT-R (BNR32)”を所有していた。
ユーザーは、一般道でもレーシーな走りを行っており、頻繁にレッドゾーンに入る入らないのレベルまでエンジンを回している。
エンジンオイルは、新車時より粘度指数0W-20を使用しており、総走行距離が50000kmを越えた現在も同じ粘度指数のエンジンオイルを使用している。
C追浜ガレージで診断した内容
一般の走行レベルでは、トラブルの発生は認められない。
自動車専用道路、高速自動車国道等で、80〜100km/hの法定速度の範囲内で、マニアルトランスミッションギヤ 3速固定で10分以上走行後にも、トラブルの発生は認められない。
サーキット等を走行すると、特に4000rpmを過ぎた辺りからのトルク感がなくなり、アクセル操作時に失速する様な感じとなる。
この症状が現れた場合、約5分間 車両を停止させた後に再び走行を開始すると、症状の発生は一時的には無くなるものの直ぐに症状は再発した。
まとめると、サーキット走行等の極めて過酷な走行条件の下で発生するトラブルである事が認められた。
診断結果 (トラブルの原因)
上記内容の結果を受け、トラブルが発生する原因はエンジンオイルの粘度指数の不適合である事と確信しました。
エンジンオイルの粘度指数が、エンジンの運転状況と照らし合わせた時、軟らか過ぎると判断しました。
エンジン高負荷運転時に、エンジンオイルの粘度指数が低過ぎ、シリンダーとピストン及びピストンリング間の油膜が薄くなり過ぎ、シリンダーとピストン及びピストンリング間の摺動抵抗が大幅に増大。
更に、シリンダーとピストン及びピストンリング間の摺動抵抗が増大する事により、ピストンがオーバーヒートを起こし、ピストンが設計以上の寸法まで膨張してしまい、シリンダーとピストン及びピストンリング間のクリアランスが減少し、摺動抵抗が更に増大してしまっていると思われます。
診断結果に基づく修理の実施
AK12型車 エンジンルーム全景
エンジンオイル交換 51683km
”日本サン石油 SUNOCO Svelt 0W-20”使用時と、”日本サン石油 SUNOCO Svelt 5W-40”使用時を比較すると、”日本サン石油 SUNOCO Svelt 5W-40”使用時の方が、最高出力、最大トルク共に上回っています。
5速でのグラフを比較すると、”日本サン石油 SUNOCO Svelt 0W-20”使用時には約4000rpm付近より出力、トルク共に大きく下降して行っているのが解りますが、”日本サン石油 SUNOCO Svelt 5W-40”使用時にはこの下降がほとんど見られません。
この結果を受け、トラブルの症状が発生した状況を再現してみましたが、再びこのトラブルの症状が現れる事はありませんでした。
この結果を受け、当該車両をユーザーにお返しし、エンジンの運転状態を確認していただきました。
ユーザー自らがトラブルの症状を再現してみようと試みましたが、再びトラブルの症状が現れる事はありませんでした。
エンジンの制御機構等により、自動車メーカーが指定する粘度のエンジンオイルを使用する事は重要ですが、ユーザーの運転状態によりエンジンオイルの粘度指数を変更する事も必要なのかも知れません。
5速
4速
5速
4速
結果
体感による曖昧な感想ではなく、エンジンオイルを”日本サン石油 SUNOCO Svelt 0W-20”使用時と”日本サン石油 SUNOCO Svelt 5W-40”使用時に、それぞれシャシダイナモを使用し、エンジンが発生する最高出力、最大トルクを計測しました。
@”日本サン石油 SUNOCO Svelt 0W-20”使用時 51668km(〜51680km) 外気温 7度
エンジンに注入します
エンジンオイル添加剤としてゼロフリクションを注入
同一銘柄の粘度指数が異なるエンジンオイルを使用します
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