取材車両 PC24-223995
入庫日 2007年10月13日
走行距離 59474km
PC24型車 エンジンルーム全景
CONSALT-Uで診断します
エンジンルーム上側から見たCVTユニット
車両の下側から見た PC24型車 エンジンルーム全景
ユーザーからの整備依頼内容は、スピードが出なくてエンジンから大きな音が発生しており怖いと言うもの。
早速、車両を引き取り現車を確認してみます。
当該車両には、トランスアクスルユニットとしてCVTユニットが搭載されていますが、どうやらこのCVTユニットが変速していない様です。
車両を40km/hで走行させると、エンジン回転数は約5000rpmにもなってしまいました。
エンジンから大きな音が発生すると言うユーザーからの訴えも、このエンジンが高回転域まで回ってしまっている為の様です。
車両の室内側にある診断用コネクターに”NISSAN
CONSALT-U”を接続し、故障コード(フォルトコー
ド)を確認します。
読み出した故障コードは、
ステップモーター
ライン圧センサー
に、不具合が発生している様です。
”NISSAN CONSALT-U”で故障コードを消去し、
再び故障コードを読み出します。
読み出した故障コードは、
ステップモーター
ライン圧センサー
で、この2つの故障コードは一時的な故障コードでは
なく、現在も継続中の故障コードである事が判明しま
した。
2つの故障コードの内、ライン圧センサーの故障コー
ドは、ステップモーターの故障コードが原因である可
能性も考えられる事から、まずはステップモーターの
故障コードを消去出来る様に・・・。
すなわち、CVTユニットに組み込まれているステップ
モーターを交換する事に致しました。
なお、このステップモーターは、CVTの変速を制御し
ているステップモーターです。
車両下側から見たCVTユニット
ドレーンプラグを取り外し・・・
CVTフルードを抜き取ります
取り外したドレーンパッキン
新品のドレーンパーッキンを用意しました
取り外したドレーンパーッキン(中央)と新品(右)
この向きにドレーンパッキンを取り付けます
ドレーンパッキンをドレーンプラグに取り付けました
ドレーンプラグを取り付けます
規定トルクでドレーンプラグを締め付けます
車両をリフトアップします。
CVTオイルパンに取り付けられているドレーンプラグを外し、CVTフルードを抜き取ります。
ドレーンプラグを取り外す際、ツールを使用しドレーンプラグを緩めた後、手でドレーンプラグを回し取り外します。
この時に、ドレーンプラグのネジ部に異常が無い事を確認しておきます。
取り外したドレーンプラグには、押しつぶされたドレーンパッキンが取り付けられています。
このドレーンパッキンは、新品のドレーンパッキンに交換する事を推奨いたします。
今回の作業でも、新品のドレーンパッキンを用意し交換致しております。
ドレーンパッキンをドレーンプラグに取り付ける際には、方向性がありますので画像の向きに取り付ける様にします。
CVTフルードが抜け、ドレーンプラグに取り付けられておりますドレーンパッキンの交換が出来ましたら、ドレーンパッキンを交換したドレーンプラグをCVTオイルパンに取り付けます。
この時には、トルクレンチを使用し、規定トルクで締め付ける事を推奨致します。
CVTオイルパンを取り外します
CVTフルードが出て来ますので、トレー等で受けます
CVTオイルパンが外れました
マグネットに鉄粉が付着しています
CVTオイルパンのGkt.を取り除き綺麗に清掃しました
CVTオイルパンを取り外します。 CVTオイルパン取り付けボルト 18本を取り外せばCVTオイルパンを取り外す事が出来ますが、同時にCVTフルードがCVTユニットのオイルパン取り付け部とCVTオイルパンの間から漏れ出て来ますので、トレー等で受ける必要があります。
CVTオイルパンが外れましたら、CVTオイルパンに付着しております古いガスケットを、CVTオイルパン等に傷を付けたり変形させない様に注意しながら剥がし、同時にCVTオイルパンを綺麗に清掃します。
CVTオイルパンに取り付けられているマグネットには、特に鉄粉が付着していますので、綺麗に清掃する必要があります。
オイルパンを取り外したCVTユニット下部
ステップモーターが見えています
車両のリヤ側から見ます
ステップモーターに接続されているコネクターを外します
ステップモーター固定ボルト 2本を取りを外します
←
レバーの接続を外しながら、ステップモーターを取り外します
取り外したステップモーター
ステップモーターを取り外したCVTユニット下部
用意した新品のステップモーター
取り外したステップモーター(左)と新品(右)
CVTオイルパンを取り外すと、CVTユニット下部の内部が見えます。
CVTフルードストレーナーのリヤ側に、今回 交換作業を行うステップモーターが取り付けられています。
これより、ステップモーターの交換に取り掛かります。
ステップモーターに接続されているコネクターを取り外します。
ステップモーターを固定している6m/mボルト(頭部対角は10m/m)を2本外します。
ステップモーターの爪部に引っ掛かる様に接続されているコントロールレバーを、車両の右側へ指で移動させます。
コントロールレバーを車両の右側へ指で移動させると、コントロールレバー先端の切れ込みが入った部分がクリアランスの大きな空間に移動する為、ステップモーターの爪部とコントロールレバーの接続を外す事が出来ます。
用意しました新品のステップモーターを、梱包を開け確認します。
取り外したステップモーターと同等の製品である事が確認出来ましたら、新品のステップモーターも取り付け作業に移ります。
コントロールレバーを画像の矢印の方向に移動させ、ステップモーターの爪部を引っ掛ける様に接続します。
ステップモーターをCVTユニットに固定します。
→
コントロールレバーを矢印の方向に移動させます
ステップモーターを取り付けました
車両のリヤ側から見ます
コネクターを接続しました
新品のCVTオイルパンGkt.とボルト
綺麗に清掃したCVTオイルパン
CVTオイルパンにGkt.をセットします
CVTユニットのCVTオイルパン取り付け部を清掃します
緩み止めが施されている新品の取り付けボルト
CVTユニットにオイルパンを取り付けました
エンジンルーム上側から見たCVTユニット
レベルゲージを抜き・・・
専用のCVTフルードを規定量注入します
レベルゲージでCVTフルード量を確認します
ステップモーターにコネクターを接続します。
ステップモーターの取り付けが完了しました。
この後、必要であればCVTユニットの下部(CVTオイルパン内部)をブレーキ&パーツクリーナーで洗浄を行います。
綺麗に清掃したCVTオイルパンに、用意した新品のガスケットをセットします。
CVTオイルパンを取り外す際、及び古いガスケットを剥ぎ取る際に、CVTオイルパンに傷を付けたり変形させたり等をしていない限り、フルードパッキン(液体パッキン)を塗布する必要はありません。
もし、CVTオイルパンを取り外す際、及び古いガスケットを剥ぎ取る際に、CVTオイルパンに傷を付けたり変形させたり等をしている場合には、#1000以上の耐水ペーパーで傷を取り除いたり、変形させた箇所を修復する必要があります。 傷等が深く取り除けない場合や、変形させた箇所の修復が出来ない場合には、CVTオイルパンを新品の部品に交換する事を推奨いたします。
CVTユニットのCVTオイルパン取り付け部の取り付けボルト挿入穴にタップを立てておく事を推奨いたします。
CVTユニットのCVTオイルパン取り付け部を清掃し脱脂しておきます。
ガスケットがずれてしまわない様に注意しながら、CVTオイルパンをCVTユニットに取り付けます。
予め緩み止めが施されている新品のCVTオイルパン取り付けボルトで、CVTオイルパンを固定します。
CVTユニットにCVTオイルパンを取り付けましたら、取り付けボルトが規定トルクで均一に締め付けられている事を確認しておきます。
CVTオイルパンガスケットが、CVTオイルパンを取り付け後、均一に圧縮されシール効果が得られる様になるまで少しの時間待ちます。
CVTオイルパンガスケットにシール効果が得られる様になりましたら、リフトを降ろし、エンジンルーム上側からCVTフルードレベルゲージを抜き取ります。
専用の日産純正CVTフルードを、CVTレベルゲージガイドチューブより規定量注入します。
エンジンを始動し、ブレーキペダルをしっかりと踏み込んだままで、CVTセレクターレバーをゆっくりと各段に動かし、CVTフルードをCVTユニット内部に行き渡らせます。
CVTセレクターレバーをパーキング位置に固定し、CVTレベルゲージを用いてCVTフルード量を点検します。
車両をリフトアップし、取り外したCVTオイルパンとCVTユニットのCVTオイルパン取り付け部の間からCVTフルードが漏れていない事を確認します。
リフトを降ろします。
”NISSAN CONSALT-U”を使用し、記憶されている故障コードの消去を行います。
”NISSAN CONSALT-U”で再度 診断を行います。
故障コードとして記憶されておりました、
ステップモーター
ライン圧センサー
の、故障コードは現れませんでした。
CVTの変速を制御しているCVTユニットに組み込まれているステップモーターを交換する事によって、異常として故障コードとして記憶されておりました ライン圧センサー は、ライン圧が規定値となった為に故障コードとして記憶されなくなったものと思われます。
この後、車両の試運転を行いましたが、車両の速度に対するエンジン回転数が規定値の範囲でしたので、CVTユニットは正常に変速を行っていると判断しました。
工場に戻り、再びCVTフルードレベルゲージでCVTフルードの量を確認し、作業は完了です。
今回の作業では、CVTユニット内部の構成部品を交換しました。
この作業を行う時に、軍手等を使用し作業を行うと、CVTユニット内部に糸屑等が入り込み、CVTユニットの作動不良となる事がありますので、軍手等の使用は避ける事を推奨いたします。
CVTフルードは、専用の日産純正CVTフルードを使用する事を推奨いたします。
社外メーカーのATF等でも問題等が発生しない場合もありますが、社外メーカーのATF等を使用する時には、当該車両に搭載されておりますCVTに適応しているATF等である事を確認し使用する事が大切です。
CVTオイルパンをCVTユニットのCVTオイルパン取り付け部に取り付ける際、必要ではないフルードパッキン(液体パッキン)を使用すると、このフルードパッキン(液体パッキン)の内 CVTユニット内部で固体化分離したものがCVTユニット内部を循環する様に作用するCVTフルードに混入し、CVTフルードによって不意に異常を来たす箇所へ送られ、CVTユニットの作動不良を起こす原因となる場合があります。
故障コードは、単にバッテリーの端子を脱着するだけでは消去出来ません。
必ず専用の診断機を用いて故障コードを消去する必要があります。
故障コードを現す部品の交換作業を行い、故障コードの消去を行わない場合には、この故障コードが記憶されている為だけで異常な作動状況となったりする事等があります。
従って、故障コードは、故障コードを現した部品を交換後、速やかに専用の診断機を用いて消去する事を推奨いたします。