1980年(昭和55年)3月・・・。
NISSAN FAIRLADY Zの旗艦である280Zの燃料供給マネージメントシステムが、従来のEGIから新型ECCSへと進化する。
また、アルミロードホイールの意匠変更なども同時に行われた。
このマイナーチェンジから9カ月後の1980年(昭和55年)12月・・・。
NISSAN FAIRLADY Z S130型にT-BARルーフが登場する。
また、L20E型エンジンも従来のEGIから新型ECCSへ進化される等、1980年(昭和55年)はNISSAN FAIRLADY Zにとって、大きな飛躍の年と言っても過言ではないでしょう。
このトップグレードであるNISSAN FAIRLADY Z Z-Tに採用されたT-BARルーフの採用は、クローズドボディーを採用して以来、久しく途絶えていたフェアレディとオープンエアの関係を再び取り戻す事となりました。
NISSAN FAIRLADY Z Z32型まで続く、NISSAN FAIRLADY ZとT-BARルーフのルーツがこの年始まったのである。
当時の価格表を見ると、標準ルーフのNISSAN FAIRLADY Z 280Z 2by 2Z-Tが2404000円、対してT-BARルーフ装備のNISSAN FAIRLADY
Z 280Z 2by2 Z-T T-BARルーフ車は2687000円と、263000円の金額差でこの爽快な一台を手にする事が出来た。
同様に、NISSAN FAIRLADY Z 2000cc Z 2by2の場合、標準ルーフ車が2029000円、T-BARルーフ車が2209000円となっている。
しかし、スロットルを踏んでタービンのブーストが高まると、室内に明確なタービン音が届いた。
その時の加速感は、それまでのどんなハイパワーエンジンや大排気量エンジンのそれとも違う独特のものだった。
このL20型ターボエンジンが、NISSAN FAIRLADY Z 130型に搭載されたモデルが投入されたのが1982年(昭和57年)10月・・・。
次期NISSAN FAIRLADY ZであるZ31型がデビューするまで1年を切った時だった。
NISSAN CEDRIC & GLORIA、NISSAN LAUREL、NISSAN SKYLINE、そしてNISSAN LEOPARDへと搭載されたL20ETがエンジンが何時、NISSAN FAIRLADY
Zに搭載されるのか。
ある意味でファンはその時を首を長くして待っていたに違いない。
そしてNISSAN FAIRLADY ZにL20ET型エンジンが搭載される・・・。
そのニュースが届いた時、ファンの心を擽るアイテムとして、国内では初採用となった215/60R15と言うロープロファイルタイヤもNISSAN FAIRLADY
Z ターボモデルのトップグレード、Z-T、そしてZ-T-BARルーフには標準で装備される事になった。
また、北米使用のDATSUN FAIRLADY Z S130型には、L28E型エンジンをターボ仕様としたL28ET型エンジンを搭載。
発揮する出力は、180PSに達している。
嬉しい事に、ターボエンジンを搭載するNISSAN FAIRLADY Zは、2000ccのZ、Z-L、Z-T、Z-T-BARルーフと、フルグレードでチョイス可能となり、多いに選択肢を広げる事になった。
これでNISSAN FAIRLADY Z S130型で選べるパワーユニットは、L28E、L20ET、そしてL20Eと3機種になる。
パワーとトルクはそれぞれ、155PS 23.5kg・m、145PS 21.0kg・m、125PS 17.0kg・mとなり、おのずと税制上、価格面でも魅力的なターボモデルに人気が集まっていった。
ドライバー、パッセンジャーそれぞれの頭上にある2枚の着脱式のグラスルーフを備えるT-BARルーフ。
その語源は、2枚のルーフを取り外した時に残るルーフの骨格がT字型だった事に由来しているのは有名な話だ。
1970年代後半に、特にアメリカ合衆国のパーソナルスポーツクーペ市場に登場すると同時に、人気の装備となったT-BARルーフ。
NISSAN FAIRLADY ZのT-BAR装着車に向けた特別フィーチャーとして、ブラックメタリック、ブルーメタリックの2色をベースに、ノーズ上面と左右のドア上部だけをシルバーに塗り分けた、通称「マンハッタン仕様」も注文装備として選ぶ事が出来た。
これにより、益々NISSAN FAIRLADY Zの魅力が引き出された事になった。
当時、サンルーフも認可され、多くの車種にオプション装備として高い人気を得る事になった。
このマイナーチェンジでNISSAN FAIRLADY Z 280Z-Lは廃止された。
T-BARルーフ車を追加したNISSAN FAIRLADY Z S130型は、1981年(昭和56年)10月にマイナーチェンジを受け、細部のデザイン意匠を変更し、更に魅力を増して登場した。
また、280Zに搭載されているL28E型エンジンは、は圧縮比等の変更で最高出力155PS(+10PS)、最大トルクが23.5kg・m(+0.5kg・m)と強化された点も忘れる事が出来ない。
これは当時、既に大ブレークしていたターボエンジンの台頭にあっても、NISSAN FAIRLADY Zの牙城をファンに伝える格好の出来事となった。
外観上の主な識別点は、バンパーの形状、ストライプの入ったリアコンビネーションランプ、そしてNACAダクトを追加されたボンネットフード等である。
また、アルミホロードイールの意匠も変更を受けている。
1979年(昭和54年)12月・・・。
一台のエポックメイキングな車が日産自動車から発売された。
量産乗用車としては初めてのターボエンジン搭載車となるNISSAN CEDRIC & GLORIA 430型がそれだ。
ボンネットフードを開けると、既にお馴染みになったはずのL20E型エンジンに、Turboの文字が刻まれた黒の結晶塗装のロッカーカバーが与えられている。
L28E型エンジンのボア×ストロークは86.0mm×79.0mm、圧縮比は8.3・・・。
燃焼室形状は、L20E型エンジンと同様にウエッジ型・・・。
そしてカウンターフローの吸排気も同様であり、つまりはL20E型エンジンの拡大版と言える。
このL28E型エンジンが発揮する出力は145PS、23.0kg・m・・・。
L28E型エンジン自体は既に、NISSAN CEDRIC & GLORIA 330型、NISSAN LAUREL C130型の後期型からL26型エンジンに代わって搭載され、ニッサンファンには既にお馴染みとなっているユニットだった。
NISSAN FAIRLADY Z S130型に搭載されたL28E型エンジンは、昭和53年排出ガス規制に適合させる為、燃料マネージメントにニッサンEGIを組み合わせ、ガス中のCO,HC,NOX低減のために三元触媒が装着された仕様の物であった。
シャシ面でもNISSAN FAIRLADY Z S130型には変化が与えられている。
先代NISSAN FAIRLADY Z S30型と同様4輪独立懸架方式ながら、4輪ストラットから、フロント・ストラット + リア・セミトレーリングアームの組み合わせとなっている。
限界域での性能にはリアストラットの性能も侮れないが、振動、音の遮断、そして常用域での性能を見ると、この変更はNISSAN FAIRLADY Z 130型に与えられた大きなメリットの一つになったと言える。
また、ブレーキは全車に4輪ディスクを採用しグレードアップが図られている。
さらにフロントブレーキにベンチレーテッドディスクを採用することで、耐フェード性への配慮にも抜かりがない。
タイヤも全車ラジアルを装着したのも特徴となった。
ボトムグレードのZに175SR-14、Z-L、Z-Tには195/70HR-14とワイドラジアルを・・・。
そしてZ-Tには更に左右非対象トレッドパターンで、当時の高性能タイヤシーンのシンボリックな存在だったミシュランXVSが標準で奢られていた。
モデルチェンジ後のNISSAN FAIRLADY Z S130型が第二の故郷とも言えるアメリカ合衆国でも好評を博したのは言うまでもない。
1979年(昭和54年)には、北米でインポートカーオブザーイヤーを受賞している。
NISSAN FAIRLADY Z S130型、その新たな方向性がアメリカ合衆国でも高い評価を受けた事になる。
何より、ロングノーズ、ショートデッキのスタイリング、誰にでもドライブし易く、そのフィールが単に移動手段の道具に留まらず、その瞬間を楽しませてくれる要素に溢れ、かつリーズナブルな価格で誰もが手に出来る事。
そして1973年(昭和48年)、1974年(昭和49年)、1975年(昭和50年)、1976年(昭和51年)と段階的に厳しくなる排出ガス規制・・・。
「規制車は動力性能が低い」というネガティブなイメージがNISSAN FAIRLADY Zの頭上を通り抜ける事はなく、スポーツカーファンの間には明るい材料が少なくなっていた時代の直後だっただけに、新しいNISSAN FAIRLADY
Zの登場はインパクトが大きかった違いないでしょう。
新型NISSAN FAIRLADY Zは、厳しい53年排出ガス規制もクリアし、スポーツカー冬の時代からの脱兎のごとく走り始めたのです。
受け継がれるNISSAN FAIRLADY ZのスポーツカーとしてのDNAに加え、低公害、省燃費、安全性など、スポーツカーとて避けては通れない時代が求める高い社会性までもパッケージされた一台と言う事が出来るのです。
ロングノーズ+ショートキャビンのスタイルは、鋭さを増したノーズの造形でより強調されることになった。
初代S30型 NISSAN FAIRLADY Zと比較して2代目S130型 NISSAN FAIRLADY Zのボディーは長く、ワイド化された。
しかし全高に変化がない為、実車を目の前にすると数値以上のワイドさを感じる事となる。
何より、ラジエターグリルをバンパー上に出さない事で、よりボンネットフード前端が低くかつ伸びやかになり、空気抵抗を示す抗力係数(cd値)が0.385と低く、機能的なデザインである事も証明されている。
また、フロントからリアフェンダーに続くラインは初代S30型 NISSAN FAIRLADY Z同様に抑揚をもち、力のあるラインを描いている。
リアコンビネーションランプのデザインを見るまでもなく、ボディー各部に"Z"の血統が受け継がれているのが解るのである。
NISSAN FAIRLADY Z誕生から9年・・・。
1978年(昭和53年)8月、2代目NISSAN FAIRLADY Zの登場である。
新しいボディーシェルは、一見して先代S30型NISSAN FAIRLADY Zのスタイルを継承し、そのノーズにL28Eを収めた280Zがラインナップに加えられた。
この時を長く待ち望んでいたファンは数しれないはずだったであろう。
NISSAN FAIRLADY Z S130型 (2000Z-L) |
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---|---|
全長(mm) | 4340 |
全幅(mm) | 1690 |
全高(mm) | 1295 |
ホイールベース(mm) | 2320 |
トレッド(mm) | Fr. 1385 Rr. 1380 |
最低地上高(mm) | 150 |
車両重量(kg) | 1175 |
定員 | 2名 |
車両総重量(kg) | 1285 |
最高速度(km/h) | |
最小回転半径(m) | 4.9 |
エンジン型式・種類 | L20E型 水冷直列6気筒 O.H.C.2バルブ |
排気量(cc) | 1998 |
内径X行程(mm) | 78.0X69.7 |
圧縮比 | 9.1 |
最高出力(ps/rpm) | 125/6000 |
最大トルク(kg・m/rpm) | 17.0/4400 |
変速装置 | 前進5速 後退1速 |
変速比 | 第1速 3.592 第2速 2.246 第3速 1.415 第4速 1.000 第5速 0.813 後退 3.658 |
終減速比 | 4.375 |
クラッチ型式 | 乾式単板 |
フロントブレーキ型式 | ベンチレーテッドディスク |
リヤブレーキ型式 | ソリッドディスク |
ステアリング歯車比 | |
フロント・サスペンション | 独立懸架ストラット |
リヤ・サスペンション | 独立懸架セミトレーディングアーム |
タイヤ | 175SR14 |
ガソリンタンク容量(l) | 80(レギュラーガソリン) |
その注目すべき出力は145PSと、L28Eと同等。
最大トルクこそ21.0kg・mと、若干下回るものの、2リッターエンジンとしては、出色のハイパワーユニットと言う事が出来る。
また、排気ガスの圧力を使って吸入空気量を増加させるというターボチャージャーは、エクゾーストノートが低くなる、という二次的なメリットも生んでいた。
日本国内の仕様では、認可の問題で採用が先送りになったスペースセイバーS130(道路状況の好転、タイヤの信頼性の大幅な向上などにより登場した専用スペアタイヤの一種。エアを注入していないタイヤを装着したホイールを納める事でスペースを節約。エアコンプレッサーも装備していた。)も装備され、ラゲッジスペースに195/70HR-14のスペアタイヤを据え付ける国内向けに対し、ユーティリティーも本来の性能を持ち、こちらの方が完成形と言える物だった。
こうしたトータルパフォーマンスは初代NISSAN FAIRLADY Z S30型から引き継がれ、各国のファンの中に、NISSAN FAIRLADY
Zは更に深く潜航を始める事になる。
2000ccのエンジンを搭載するNISSAN FAIRLADY Z S130型のパワープラントは、水冷直列6気筒OHC2バルブから130PS、17.0kg・mを発揮するL20E型エンジン。
このL20E型エンジンは、既にNISSAN FAIRLADY Zのエンジンとしてはお馴染みのもとなっていた。
このL20E型エンジンよりも、NISSAN FAIRLADY Z S130型で気になるのは、やはりL28E型エンジンであろう。
室内に目を移しても、S130型にはNISSAN FAIRLADY Zの系譜を見つける事が出来る。
特にNISSAN FAIRLADY Zの系譜を色濃く見せるのがインストルメントパネルである。
スピードメーター、タコメーター等、NISSAN FAIRLADY Z S30型では、深いナセルの奥にそれぞれ独立した5連メーターを特徴としていたが、NISSAN FAIRLADY
Z S130型もダッシュボード中央に据えられた小径3連メーターを踏襲している。
特に、リアクォーターウインドウのサイズの違い等顕著にその違いが現れている。
また、リアパッセンジャーの閉所感を和らげる為に、2by2では専用のローバックタイプのシート+別体ヘッドレストの組み合わせを選んでいる。
2シーターでは、従来通りのハイバックシートを装備。これによって、2シーター、2by2両車のキャラクターはきれいに塗り分けられたと言える事となる。
事実、スパルタンさだけがNISSAN FAIRLADY Zの装飾語ではない事を、このS130型は雄弁に語り始めたのである。
2シーター、2by2と言う二つのボディーラインナップも先代のNISSAN FAIRLADY Z S30型と同様・・・。
しかし、2シーター、2by2をより明確に差別化するデザインを採用したことも特徴となった。
2シーターにはより流れるようなルーフラインを与え、2by2では後席の居住空間拡大を狙ってルーフを伸ばす等、先代のNISSAN FAIRLADY
Z S30型からの進化を遂げている。
北米仕様のDATSUN FAIRLADY Zは、240Zから始まり、排出ガス対策や2by2の追加や衝突安全基準をクリアする為に増加した車重と動力性能のバランスを得る為にエンジンユニットが2400ccから2600ccへ・・・。
そして2600ccから2800ccへと拡大された。
日本国内の仕様を持つNISSAN FAIRLADY Zも一時は同じ道筋を歩みかけていた。
1971年にNISSAN FAIRLADY Z 240Zがデビュー。
新たにグランド(G)・ノーズとオーバーフェンダーを装着した240ZGがラインナップされ、その空気の壁を切り裂く様なスタイルで人気を博した事は言うまでもない。
そのポテンシャルは国内のレーシングシーンや、海外のラリーでの結果からもお馴染みのものだ。
特にケニアのサバンナを舞台にしたサファリラリー、雪と氷のモンテカルロでの活躍は、2400ccのハイパワーユニットとシャーシ等、NISSAN FAIRLADY
Zのバランスの良さを証明したといえる。
そして1973年の第20回 東京モーターショーでは260Z2by2が出展され、パフォーマンスも、Zの道も順風満帆に感じられていた。
しかし、その年に訪れたオイルショックの影響で、ついにそのNISSAN FAIRLADY Z 260Zがショールームに並ぶことはなかったのです。
NISSAN FAIRLADY Z S130型
メインメーターパネルはコンビネーションスタイルとなったが、FAIRLADY Zらしさは見事に表現されていた。
また、メーター照明の色も、コンベンショナルなグリーンからオレンジ系の色へ変更され、照明方式も透過式となった。
また、ストップウォッチ機能も備えるデジタル時計がZ-Tには与えられている。
それは新しいNISSAN FAIRLADY Zの契約書に、ディーラーでサインする人ばかりではなく、全てのスポーツカーファンにとって、「Zの復権」「スポーツカーへの回帰」的な大見出し付でそれぞれの心の中に留められる事になったのである。
それは、既にZファンが着々と進化していた輸出仕様のDATSUN FAIRLADY Zの過程と、国内仕様のNISSAN FAIRLADY Zとが、途中から大きく異なることを知っていた。
余白
L20型ターボエンジン
280Z T-BARルーフ装着車
280Z T-BARルーフ装着車
280Z クローズドボディーとT-BARルーフ
280Z エンジンルーム
S130型 コックピット
当時のカタログに掲載された2シーター、2by2の比較
NISSAN FAIRLADY Z S130型
NISSAN FAIRLADY Z S130型
北米仕様のDATSUN 280Z(S30型)
爆走中の260Z(S30型)
サーキットを走る240Z(S30型)
サファリラリーで激走中の240Z(S30型)