8代目「NISSAN SKYLINE」の販売台数は、296,087台。
GT-Rの生産台数は、
GT-R 40,390台
GT-R NISMO 560台
GT-R N-1 223台
GT-R V・spec 1,453台
GT-R V・spec U 1,303台
GT-Rの登録台数は、生産台数の43,934台に対し、登録台数は41,692台となった。
NISSAN SKYLINE GTS-t Type M (HCR32型)
NISSAN SKYLINE GTS-t Type M (HCR32型)
〜〜 開発経緯 〜〜
RB26DETT型エンジンは、開発当時Group Aカテゴリで開催されていた全日本ツーリングカー選手権(J.T.C.)での勝利を目指し、8代目「NISSAN SKYLINE」
(R32型) GT-Rのために開発されたエンジンである。
レースを戦う上で最も有利な排気量を求めた結果、2,600ccという排気量となった。
ライバルの今後の進化の度合いを詳細に分析し、最高出力を600とps定めて開発を進めていった。
ベンチマークとされたのは「FORD SIERRA RS500」である。
〜〜 市販車として中途半端な総排気量の理由 〜〜
自動車税が3,000ccと同じになってしまう2,600cc(厳密には2,568cc)という、日本の市販乗用車としては中途半端な総排気量となった理由は、前述のレースのレギュレーションと深い関係がある。
8代目「NISSAN SKYLINE」 (R32型) GT-Rが参戦を予定していた全日本ツーリングカー選手権では、エンジンの総排気量ごとにクラス分けがされ、そのクラスごとに最低重量とタイヤの最大幅が決まっていた。
また、ターボチャージャーなどの過給機を装着しているエンジンの場合、自然吸気エンジンに対するハンディキャップとして、総排気量に過給係数の1.7を掛けた値を参戦車両の排気量として扱っていた。
当初、8代目「NISSAN SKYLINE」 (R32型) GT-RにはRB24型エンジンをショートストローク化した総排気量2,350ccのターボエンジンを搭載する予定で、それはGroup
Aの総排気量換算で4,000ccクラスに該当していた。
しかし、FRであった駆動形式を、(FRをベースとした)ATTESA E-TSシステムによる4WDへと変更したために、100kgほどの重量増加となった。
そのため軽量化しても4,000ccクラスの最低重量(1,180kg)をかなり上回ってしまう上、予定していた600PSもの出力に、このクラスのタイヤ幅(10インチ)では対応できないと判断した。
そのため一つ上のクラスの排気量枠である4,500ccクラス(最低重量1,260kg・タイヤ幅11インチ)での参戦を選択し、総排気量も2,600ccへと変更された。
ちなみに、4,500ccクラスに該当するターボエンジンの排気量の上限は2,647ccであり、2,568ccである本エンジンは79ccほど余裕があるが、生産ラインの関係上、それ以上の排気量アップには至らなかった。
〜〜 ニュルブルクリンクとのファーストコンタクト 〜〜
RB26DETT型エンジンの開発も進み、8代目「NISSAN SKYLINE」 (R32型) GT-R発売前に、ドイツにある世界一過酷なコースとも言われるニュルブルクリンクへ、外装を「NISSAN SILVIA」に偽装したテスト車両を持ち込むこととなる。
開発グループは自信を持って持ち込んだが、当初は油温・水温ともに完全にオーバーヒート状態で、最終的にタービンブローを喫することとなる。
開発を担当したダーク・ショイスマンもかなり手こずっていたそうである。
その後改良を重ね、なんとか走りきれるまでになったが、その車両を筑波サーキットに持ち込んだところ、かなり強いアンダーステアに悩まされた。この原因としては、アテーサET-Sによるものと、フロントヘビーな重量配分に起因していると開発陣は見ていた。
〜〜 Group A Test Car, 1989 〜〜
(平成元年1989年)5月23日の、8代目「NISSAN SKYLINE」発表会場に展示された。
2台製作されたGroup A仕様車の2号車で、日産自動車の開発コード”043”と呼ばれた実験車両である。
4代目「NISSAN SKYLINE」 (C110型) GT-Rを彷彿とさせる車両で、地味なカラーリングとなっている。
「FORD SIERRA」に勝利を譲り続けていた全日本ツーリングカー選手権・・・。
ついに復活したGT-Rは、平成2年(1990年)3月17日の全日本ツーリングカー選手権デビューまでの間、レースシーンでの絶対的な勝利を、日産自動車ファン、SKYLINEファンは、大きな夢と希望となり膨らませていった。
NISSAN SKYLINE HNR32改型 AUTEC Version |
|
---|---|
車名・型式 | ニッサン E-HNR32改 |
全長(mm) | 4580 |
全幅(mm) | 1695 |
全高(mm) | 1360 |
室内寸法・長(mm) | 1850 |
室内寸法・幅(mm) | 1400 |
室内寸法・高(mm) | 1105 |
ホイールベース(mm) | 2615 |
トレッド・前(mm) | 1465 |
トレッド・後(mm) | 1465 |
最低地上高(mm) | |
車両重量(kg) | 1480 |
乗車定員 | 5名 |
車両総重量(kg) | 17 |
最高速度(km/h) | |
最小回転半径(m) | 5.3 |
燃料消費率 10・15モード |
---- |
エンジン型式・種類 | RB26DE 直列6気筒 D.O.H.C. |
排気量(cc) | 2568 |
内径X行程(mm) | 86.0×73.7 |
圧縮比 | 10.5 |
最高出力(ps(kw)/rpm) | 220(162)/6800 |
最大トルク(kg・m(N・m)/rpm) | 2.0(2.0)/5200 |
燃料供給装置 | ニッサンEGI (ECCS) マルチポイント インジェクション |
使用燃料・燃料タンク容量 | 無鉛プレミアム ガソリン・60 |
変速装置 | 前進(4速) 後退(1速) |
変速比 | 第1速 (2.785) 第2速 (1.545) 第3速 (1.000) 第4速 (0.694) 後退 (2.272) |
終減速比 | (4.375) |
駆動方式 | 4WD |
ステアリングギヤ型式 | パワーアシスト付き ラック&ピニオン式 |
サスペンション・前 | マルチリンク式 |
サスペンション・後 | マルチリンク式 |
タイヤ・前 | 205/55R16 88V |
タイヤ・後 | 205/55R16 88V |
主ブレーキ・前 | ベンチレーテッド ディスク式 |
主ブレーキ・後 | ベンチレーテッド ディスク式 |
駐車ブレーキ | 機械式後2輪制動 |
NISSAN SKYLINE HCR32型 GTS-t Type M |
NISSAN SKYLINE HR32型 GTS |
NISSAN SKYLINE HR32型 GTE |
NISSAN SKYLINE FR32型 GXi |
NISSAN SKYLINE HNR32型 GTS-4 |
|
---|---|---|---|---|---|
車名・型式 | ニッサン E-HCR32 |
ニッサン E-HR32 |
ニッサン E-HR32 |
ニッサン E-FR32 |
ニッサン E-HNR32 |
全長(mm) | 4580(4ドアセダン) 4530(2ドアクーペ) |
4580(4ドアセダン) 4530(2ドアクーペ) |
4580 | 4580 | 4580(4ドアセダン) 4530(2ドアクーペ) |
全幅(mm) | 1695 | 1695 | 1695 | 1695 | 1695 |
全高(mm) | 1340 (4ドアセダン) 1325 (2ドアクーペ) |
1340 (4ドアセダン) 1325 (2ドアクーペ) |
1340 | 1340 | 1360 (4ドアセダン) 1345 (2ドアクーペ) |
室内寸法・長(mm) | 1850 (4ドアセダン) 1805 (2ドアクーペ) |
1850 (4ドアセダン) 1805 (2ドアクーペ) |
1850 | 1850 | 1850 (4ドアセダン) 1805 (2ドアクーペ) |
室内寸法・幅(mm) | 1400 | 1400 | 1400 | 1400 | 1400 |
室内寸法・高(mm) | 1105 (4ドアセダン) 1090 (2ドアクーペ) |
1105 (4ドアセダン) 1090 (2ドアクーペ) |
1105 | 1105 | 1105 (4ドアセダン) 1090 (2ドアクーペ) |
ホイールベース(mm) | 2615 | 2615 | 2615 | 2615 | 2615 |
トレッド・前(mm) | 1460 | 1460 | 1460 | 1460 | 1460 |
トレッド・後(mm) | 1460 | 1460 | 1460 | 1460 | 1460 |
最低地上高(mm) | |||||
車両重量(kg) | 1340(1360) (4ドアセダン) 1320(1340) (2ドアクーペ) |
1240(1260) (4ドアセダン) 1260(1280) (2ドアクーペ) |
1200(1220) | 1120(1140) | 1420(1430) (4ドアセダン) 1390(1400) (2ドアクーペ) |
乗車定員 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 |
車両総重量(kg) | 1615(1635) (4ドアセダン) 1635(1655) (2ドアクーペ) |
1515(1535) (4ドアセダン) 1535(1555) (2ドアクーペ) |
1475(1495) | 1395(1415) | 1695(1705) (4ドアセダン) 1665(1675) (2ドアクーペ) |
最高速度(km/h) | |||||
最小回転半径(m) | 5.2 | 5.2 | 5.2 | 5.2 | 5.2 |
燃料消費率 10・15モード |
9.5(8.0) | 10.2(8.8) | 11.2(9.4) | 12.6(10.6) | 8.3(7.0) |
エンジン型式・種類 | RB20DET 直列6気筒 D.O.H.C. ターボ |
RB20DE 直列6気筒 D.O.H.C. |
RB20E 直列6気筒 S.O.H.C. |
CA18i 直列4気筒 S.O.H.C. |
RB20DET 直列6気筒 D.O.H.C. ターボ |
排気量(cc) | 1998 | 1998 | 1998 | 1809 | 1998 |
内径X行程(mm) | 78.0×69.7 | 78.0×69.7 | 78.0×69.7 | 83.0×83.6 | 78.0×69.7 |
圧縮比 | 8.5 | 10.2 | 9.5 | 8.8 | 8.5 |
最高出力(ps(kw)/rpm) | 215(158)/6400 | 155(114)/6400 | 125(92)/5600 | 91(67)/5200 | 215(158)/6400 |
最大トルク(kg・m(N・m)/rpm) | 27.0(264.8)/3200 | 18.8(184.4)/5200 | 17.5(171.6)/4400 | 14.5(142.2)/3200 | 27.0(264.8)/3200 |
燃料供給装置 | ニッサンEGI (ECCS) マルチポイント インジェクション |
ニッサンEGI (ECCS) マルチポイント インジェクション |
ニッサンEGI (ECCS) マルチポイント インジェクション |
ニッサンEGI (ECCS) シングルポイント インジェクション |
ニッサン EGI (ECCS) マルチポイント インジェクション |
使用燃料・燃料タンク容量 | 無鉛プレミアム ガソリン・60 |
無鉛プレミアム ガソリン・60 |
無鉛レギュラー ガソリン・60 |
無鉛レギュラー ガソリン・60 |
無鉛プレミアム ガソリン・60 |
変速装置 | 前進5速(4速) 後退1速(1速) |
前進5速(4速) 後退1速(1速) |
前進5速(4速) 後退1速(1速) |
前進5速(4速) 後退1速(1速) |
前進5速(4速) 後退1速(1速) |
変速比 | 第1速 3.321(2.785) 第2速 1.902(1.545) 第3速 1.308(1.000) 第4速 1.000(0.694) 第5速 0.759 後退 3.382(2.272) |
第1速 3.592(2.785) 第2速 2.057(1.545) 第3速 1.361(1.000) 第4速 1.000(0.694) 第5速 0.821 後退 3.657(2.272) |
第1速 3.321(3.027) 第2速 1.902(1.619) 第3速 1.308(1.000) 第4速 1.000(0.694) 第5速 0.759 後退 3.382(2.272) |
第1速 3.592(2.785) 第2速 2.057(1.545) 第3速 1.361(1.000) 第4速 1.000(0.694) 第5速 0.821 後退 3.657(2.272) |
第1速 3.580(2.785) 第2速 2.077(1.545) 第3速 1.360(1.000) 第4速 1.000(0.694) 第5速 0.760 後退 3.636(2.272) |
終減速比 | 4.363(4.363) | 4.363(4.363) | 4.111(4.111) | 3.900(4.111) | 4.375(4,375) |
駆動方式 | FR | FR | FR | FR | 4WD |
ステアリングギヤ型式 | パワーアシスト付き ラック&ピニオン式 |
パワーアシスト付き ラック&ピニオン式 |
パワーアシスト付き ラック&ピニオン式 |
パワーアシスト付き ラック&ピニオン式 |
パワーアシスト付き ラック&ピニオン式 |
サスペンション・前 | マルチリンク式 | マルチリンク式 | マルチリンク式 | マルチリンク式 | マルチリンク式 |
サスペンション・後 | マルチリンク式 | マルチリンク式 | マルチリンク式 | マルチリンク式 | マルチリンク式 |
タイヤ・前 | 205/55R16 88V | 205/60R15 89H | 185/70R14 87S | 165SR14 | 205/55R16 88V |
タイヤ・後 | 205/55R16 88V | 205/60R15 89H | 185/70R14 87S | 165SR14 | 205/55R16 88V |
主ブレーキ・前 | ベンチレーテッド ディスク式 |
ベンチレーテッド ディスク式 |
ベンチレーテッド ディスク式 |
ベンチレーテッド ディスク式 |
ベンチレーテッド ディスク式 |
主ブレーキ・後 | ベンチレーテッド ディスク式 |
ディスク式 | ディスク式 | ドラム式 | ベンチレーテッド ディスク式 |
駐車ブレーキ | 機械式後2輪制動 | 機械式後2輪制動 | 機械式後2輪制動 | 機械式後2輪制動 | 機械式後2輪制動 |
NISSAN SKYLINE GTS-t Type M 60thアニバーサリー
(HCR32型)
搭載するエンジンは、
GTシリーズが、直列6気筒で215psを発揮するツインカム・ターボ仕様 RB20DET型を筆頭に、ツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB20DE型、シングルカム仕様 RB20E型、
直列6気筒で180psを発揮するツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB25DE型を追加した。
GXシリーズが、直列4気筒でシングルカム・シングルポイントインジェクション仕様 CA18i型となった。
RB25DE型エンジンを搭載するグレードは、5速マニュアルトランスミッション、4速オートマチックトランスミッションを選択可能。
他のグレードにおいては、5速マニュアルトランスミッション、4速オートマチックトランスミッションを選択可能である。
マイナーチェンジ後 (4ドアセダン)
1990年(平成2年)9月・・・。
NISSAN SKYLINE生産累計300万台達成記念としてアーバンロードを発売。
4ドアセダンのGTSを、ベース車両としている。
シートを専用のものとするなど、各部に専用装備を施される。
ベースカラーは、ダークグリーンメタリック。
〜〜 マルチリンク式フロントサスペンション 〜〜
ハイマウントアッパーアームとロアアームに加え、第3のリンク(サードリンク)を組み合わせた独自のサスペンションシステムである。
この画期的な第3のリンクは、アッパーリンクとキングピン軸を連結するもので、キングピン軸がアッパーアームとの関連から開放されるため、理想的なステアリング・アクシスの設定が可能になっている。
熟成されたマルチリンク式フロントサスペンションの採用により、GT-Rは、対地キャンバー変化、スカッフ変化の最適化と、キャスター・トレール、スクラブ半径、キャスター角設定の最適化を両立。
直進性、旋回性、制動時安定性、そして乗り心地と、フロントサスペンションに要求される全性能を、想像を超えるハイレベルで具現化している。
さらに、アルミ製アクスルハウジングによるバネ下重量の低減も図り、接地性の向上を実現した。
〜〜 マルチリンク式リヤサスペンション 〜〜
強大なエンジン・パワーを路面に確実に伝え、十分なスタビリティを確保すること。
これがリヤサスペンションの基本的な役割である。
GT-Rのマルチリンク式リヤサスペンションは、車体とタイヤの相対位置を正確にガイドすること。
そして路面からの不要な入力を遮断する、という相反する要求を高次元で両立させている。
レイアウトはダブルアッパーリンクを上部に、スラント配置のAアームとその後方のラテラルリンクによるロアアーム系を下部に配し、前後、左右、上下など異なる方向からの入力に応じて、トー角を安定方向にコントロールする。
この結果、充分なスタビリティの確保とタイヤの接地能力を大幅に高め、限界コーナリング時のコントロール性とトラクション性能の向上を達成した。
まさに、オンザレール感覚の走りだ。
また、旋回中のアクセルオフやブレーキングにも、過度のタックインを起こすことなく、安定した制動力を確保できる。
〜〜 新構造ショックアブソーバー 〜〜
2段絞りバルブをもつショックアブソーバーである。
第1次バルブで低速域減衰力のコントロール、および伸側← →圧側の切り換わり時の減衰力のつながりをなめらかにする。
第2次バルブでは高速ピストンスピード領域の減衰力コントロールを受けもつ。
したがって低速時から高速走行時まで、あらゆる走行状況において、しなやかで、しっかりした乗り心地と高い接地性によるスムーズなトラクション性能を確保した。
〜〜 電子制御パワーステアリング 〜〜
カウンターステアのような素早い操舵にも、リニアに追従する応答性。
しかも高い剛性とリニアリティを備えたハンドリングが、スポーツ走行には必須である。
このシステムは、油圧制御バルブを2種類直列に配置。
据切りでは2つのバルブがフル作動してアシスト力を高め、高速では1段目のバルブだけを動かすことで、剛性感のある操舵力を保持する。
中間状態も車速に対応して適正なアシスト量が得られ、あらゆる状態でシェアな操舵を可能にする。
NISSAN SKYLINE GT-R (BNR32型)
8代目「NISSAN SKYLINE」 GT-R(BNR32)に搭載されるエンジン”RB26DETT”の総排気量は2600cc(2568cc)。
一見すると非常に中途半端な総排気量となっている感があるが、これはBNR32が制覇を目指したグループAレースと密接に関わっている。
グループAレースの規定では、総排気量ごとに最低車両重量、最大タイヤ幅が細かく区分されており、 闇雲に総排気量を上げてパワーアップを狙っても、その分車両重量も増加してしまい、戦闘力向上には直結しない。
そのため、企画時に”富士スピードウェイ 1周 1分30秒を切る性能”という目標から、”パワーウェイトレシオ 2.1以下”という値を設定。
ここから、”2350cc ターボ”、”最高出力 540ps”、”車両重量 1140kg”という目標が設定された。
一方、駆動方式については、先代の7代目「NISSAN SKYLINE」 R31型 GTS-Rの450psでも後輪2輪の駆動ではトラクション性能が不足しており、更にエンジンの最高出力が上昇した場合には、このエンジンが発生する出力を有効に活用できない可能性が高い。
この事を踏まえ、総合研究所で開発中の4WDシステムの操縦性の評価が上々であったことから、4WDシステム”ATTESA E-TS”を採用することが決定された。
ATTESA E-TSを搭載した場合の重量増等を見込んだ場合、搭載するエンジンの総排気量が2350ccでは”パワーウェイトレシオ 2.1以下」を達成できる見込みがないため、エンジンの総排気量を拡大し、2600cc
/ 最低重量1260kgとされた。
RB20DET型エンジン 概略図
RB20DET型エンジン
NISSAN SKYLINE (HR32型、HCR32型、FR32型、BNR32型、HNR32型、ER32型、ECR32型)
1995年(平成7年)1月6日・・・。
GT-Rのモデルチェンジを実施し、9代目「NISSAN SKYLINE」へ移行、8代目「NISSAN SKYLINE」の販売は全てのグレードで終了となった。
1993年(平成5年)1月・・・。
GTS-t Type M 60thアニバーサリー、GTS Type J 60thアニバーサリーを追加。
直列6気筒ツインカム・ターボチャージャー仕様 RB20DET型エンジンを搭載するGTS-t Type Mをベースに、直列6気筒ツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB20DE型エンジンを搭載するGTS Type
Jをベースに、プロジェクターヘッドランプ、バンパー組込みフォグランプ、CDプレーヤー、リヤスポイラー、記念キー、エクセーヌシート等を特別装備した。
5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。 2ドアクーペのみに存在したモデル。
日産自動車創立60周年記念車。
1992年(平成4年)4月・・・。
(オーテックジャパンAUTECH JAPAN)より、SKYLINE オーテックバージョンを発売。
搭載されるエンジンは、レーシングエンジンとしても実績を誇るRB26DETT型エンジンをベースに、インテーク、エギゾースト、カムシャフト、ピストン等をオーテックジャパンのスペシャルメイドとし、制御コンピュータにスペシャルチューンを施した2.6L
直列6気筒自然吸気エンジン。
最高出力220PS/最大トルク25.0kgmを発生し、トランスミッションはフルレンジ電子制御4速オートマチックを組み合わせる。
高性能エンジンに見合う様、確かな足回りにチューニングされたサスペンション。
そしてGT-Rと同様のブレーキシステム。
フロントエアロフォルムバンパーを装着し、専用のシートクロス等を用いた室内空間と、本革巻きステアリングホイールとシフトレバーを備える。
設定色はイエロイッシュグリーンパールメタリックのみ。
4ドアセダンにのみ設定された。
RB26DE型エンジン
NISSAN SKYLINE GTS アーバンロード (HR32型)
@ GTS25 Type X・G
直列6気筒ツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB25DE型エンジンを搭載し、5速マニュアルトランスミッションと5速オートマチックトランスミッションを選択可能。
4ドアセダン、2ドアクーペ共に存在したモデル。
SUPER HICASが標準装備され、L.S.D.、ABS、ASCD等がメーカーオプションとなる。
RB25DE型エンジン搭載車は、ロードホイールは4穴とされ、フロント・リヤ共にベンチレーテッドディスクブレーキを装着する。
A GTS Type X
直列6気筒ツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB20DE型エンジンを搭載し、5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。
4ドアセダンのみに存在したモデル。
L.S.D.、ABS、ASCD、運転席SRSエアバック等がメーカーオプションとなり、SUPER HICASの設定は無い。
ナチュラルアスピレーションエンジン搭載車は、ロードホイールは4穴とされ、フロントがベンチレーテッドディスクブレーキ、リヤがディスクブレーキを装着する。
Type Xシリーズは、専用シートを採用する等、標準グレードに対して装備を豪華にしたグレードとなっている。
B GTE Type X
直列6気筒シングルカム仕様 RB20E型エンジンを搭載し、5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。
4ドアセダンのみに存在したモデル。
L.S.D.、ABS、ASCD、運転席SRSエアバック等がメーカーオプションとなり、SUPER HICASの設定は無い.
装備は、他のType Xグレードと比較し、間けつ式リヤワイパー、本皮巻きシフトノブ&本皮巻きパーキングブレーキレバー、アクティブアメニティシステムが省略されている等以外は、ほぼ同様となっている。
C GTi Type X
直列4気筒シングルカム・シングルポイントインジェクション仕様 CA18i型エンジンを搭載し、5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。
4ドアセダンのみに存在したモデル。
運転席SRSエアバック等がメーカーオプションとなり、L.S.D.、SUPER HICAS、ABS、ASCD等の設定は無い。
このモデルのみ、リヤブレーキがドラムブレーキとなり、フロントはベンチレーテッドディスクブレーキを装着する。
装備は、他のType Xグレードと比較し、ブロンズ又はグレーガラス間けつ式リヤワイパー、本皮巻きシフトノブ&本皮巻きパーキングブレーキレバー、アクティブアメニティシステムが省略されている以外は、ほぼ同様となっている。
他のグレードと比較では、標準装備となっている電動格納式カラードドアミラーが、このグレードのみメーカーオプションとなっている。
D GTS-t Type M
直列6気筒ツインカム・ターボ仕様 RB20DET型エンジンを搭載し、5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。
4ドアセダン、2ドアクーペ共に存在したモデル。
L.S.D.、SUPER HICASが標準装備され、ABS、運転席SRSエアバック等がメーカーオプションとなる。
ASCDの設定は無い。
RB20DET型エンジン搭載車は、ロードホイールは5穴とされ、フロント・リヤ共にベンチレーテッドディスクブレーキを装着する。
フロントにアルミ製対向4potディスクキャリパー、リヤにアルミ製2potディスクキャリパーを装着したモデル。
E GTS25 Type X
直列6気筒ツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB25DE型エンジンを搭載し、5速マニュアルトランスミッションと5速オートマチックトランスミッションを選択可能。
2ドアクーペのみに存在したモデル。
SUPER HICASが標準装備され、L.S.D.、ABS、ASCD運転席SRSエアバック等がメーカーオプションとなる。
ASCDの設定は無い。
RB25型エンジン搭載車は、ロードホイールは4穴とされ、フロント・リヤ共にベンチレーテッドディスクブレーキを装着する。
F GTS Type S
直列6気筒ツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB20DE型エンジンを搭載し、5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。
4ドアセダン、2ドアクーペ共に存在したモデル。
L.S.D.、ABS、ASCD運転席SRSエアバック等がメーカーオプションとなり、SUPER HICAS、ASCDの設定は無い。
ナチュラルアスピレーションエンジン搭載車は、ロードホイールは4穴とされているが、Type Sグレードは5穴とされ、フロントがベンチレーテッドディスクブレーキ、リヤがディスクブレーキを装着する。
G GTS Type J
直列6気筒ツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB20DE型エンジンを搭載し、5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。
2ドアクーペのみに存在したモデル。
L.S.D.、ABS、ASCD、運転席SRSエアバック等がメーカーオプションとなり、SUPER HICAS、ASCDの設定は無い。
ナチュラルアスピレーションエンジン搭載車は、ロードホイールは4穴とされ、フロントがベンチレーテッドディスクブレーキ、リヤがディスクブレーキを装着する。
Type Jシリーズは、スポーツシリーズのハイサポートシートを採用し、ステアリングホイールはType Xシリーズの3本スポークステアリングを採用する。
Type Jの”J”は、”Jolly (楽しい)”の意味である。
H GTS4
直列6気筒ツインカム・ターボ仕様 RB20DET型エンジンを搭載し、4WDシステム ATTESA E-TSを組み合わせる。
5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。
4ドアセダン、2ドアクーペ共に存在したモデル。
L.S.D.、SUPER HICAS、ABSが標準装備され、運転席SRSエアバック等がメーカーオプションとなる。
ASCDの設定は無い。
ターボエンジン搭載車は、ロードホイールは5穴とされ、フロント・リヤ共にベンチレーテッドディスクブレーキを装着する。
RB25DE型エンジン
RB25DE型エンジン
したがって、通常の後輪駆動状態から、後輪にかかる駆動トルクの増大で後輪のスリップ量が大きくなると、前輪へも駆動トルク伝達を行う。
前輪へ伝達する駆動トルクの大きさは、横Gの大きさと前後輪の回転速度差に応じて変化する方式としている。
例えば、アイスバーンのように、タイヤの摩擦係数μ(ミュー)の低い路面で、後輪のスリップ量が大きい場合は、前輪へのトルク伝達を増やす。
ところが、ドライ路面でコーナリングしているような横Gが非常に大きい状態では、ホイールスピンしていても前輪へ伝達するトルクを余り増やさない。
後輪側の駆動トルクを大きくし、かつ前輪の駆動トルクを小さく配分することにより、後輪をアクセルワークによって積極的にコントロールするキャパシティと、前輪の操縦性能を大きくとっている。
前輪に駆動トルクをあまり伝えてしまうと、前輪の操縦性能に影響を及ぼすため、この時は前輪にトルクを出さないようにしたいからだ。
さらに、ABS(アンチスキッドブレーキシステム)との総合制御も実現している。
4輪それぞれに設けられた車輪速度センサーやGセンサーにより、作動タイミングをきめ細かくコントロールできるため、より自然な制動性能を確保している。
急制動時には、4輪すべてに適切な割合でエンジンブレーキを割り振り、ブレーキ性能とアンチスキッド性も高めている。
ATTESA E-TSとは・・・、
Advanced Total Traction Engineering System for All (= 進歩した4輪全体のトラクション技術方式)
Electronic - Torque Split (= 電子制御トルク分配)
・・・の略である。
〜〜 5速マニュアルトランスミッション 〜〜
2速と3速にダブルコーンシンクロ(シングルコーンシンクロの約2倍の容量を持つ)を採用し、操作力の低減を図った。
さらに、シフトレバーの操作ストロークを50mmと大幅にショート化するとともに、シフトレバーの取り出しをトランスファーの上部とし、自然なドライビングポジションとスポーティなシフトフィーリングを実現。
シフト感覚の向上と同時に、クラッチ性能も高めている。強力なパワーと路面への伝達効率の高さに合わせ、圧着力の強いクラッチを設定しているが、ブースターの採用により重すぎることなく、GT-Rにふさわしい操作フィーリングを実現した。
〜〜 メカニカルL.S.D. 〜〜
不整路や左右輪のμが異なるような路面、限界コーナリング時の片輪の接地荷重低下による駆動力変化に対応し、最適なトルクスプリットを行なうのがリミテッド・スリップ・デフである。
GT-Rは、後輪ディファレンシャルに、トルク感応型メカニカルL.S.D.を採用。
このメカニカルL.S.D.は、回転数感応型ビスカスL.S.D.にくらべ、駆動輪への入力トルク、つまりアクセル操作に感応し、ダイレクトに差動制限を行なうことができる。
シャープなレスポンスと高いコントロール性という面で、GT-Rにふさわしいと言える。
〜〜 電子制御トルクスプリット4WD / ATTESA E-TS 〜〜
ATTESA E-TSは、基本的には後輪をベースに駆動し、走行条件に応じて前輪にトルクを配分する。
そのために、後輪へは直結状態で駆動力を伝え、前輪へはトランスファー部で分岐させている。
トランスファー部に組み込まれた油圧多板クラッチの押し付け力を変えることによって、前輪へ伝達されるトルクの大きさを変化させるのである。
このクラッチを放した状態では、後輪駆動。クラッチを結合した状態では、リジッド4駆になる。
この間を無段階に変化させている。
さらに、このシステムには、前後4輪の車輪速度センサーと、横Gをアナログ的に検出するセンサーを付けている。これらセンサーからの信号入力を受け、コントローラーが油圧多板クラッチの圧着力を変化させて、前後のトルク配分を決定する。
RB26DETT型エンジン システム図
『GT-Rは単にレースで勝つための種クルマじゃない!』
「NISSAN SKYLINE」のファンなら当然のように、そうでなくとも多くのクルマ好きにとって渡邉 衡三 氏といえば9代目「NISSAN SKYLINE」 GT-R、10代目「NISSAN SKYLINE」 GT-Rの商品主管として知られるが、8代目「NISSAN SKYLINE」との関係も深い。
例えば、平成5年(1993年)2月に登場した”GT-R V spec”以後の商品主管は渡邉 衡三 氏であるし、また8代目「NISSAN SKYLINE」
GT-Rの開発においては実験主担という立場だった。
「クルマ作りだけを考えていればいい立場で関われたので、色々なことに対応しなければいけない伊藤さんに比べると、ずいぶんと楽しく開発に携れました(笑)」。
初めて関わったNISSAN SKYLINEについてはこう語る。
「R31 SKYLINEの後期に追加したグループAレースのホモロゲーションモデル”GTS-R”が、実験主担としてはじめて見ることになったSKYLINEでした。 それ以前はPULSARの実験主担をしたりと、なかなかSKYLINEに関わる機会に恵まれなかったのです」。
また、「SKYLINEの実験主担になったときに商品主管の伊藤さんに挨拶にいったら、ちょうど『GT-Rを作ることになったよ』と嬉しそうに顔をして話されたことは忘れられません」とも。
こうしたタイミングからもGT-R復活において渡邉 衡三 氏がキーマンであることは明白といえそうだ。
とはいえ、こうも言う。
「最初に関わった”GTS-R”はレースのレギュレーションを満たすための”種クルマ”でしたから、正直言って、実験主担としては最低限のことしかしていません」。
つまり走りを煮詰めようとかではなく、市販して大丈夫なのかどうかの確認をしたに過ぎないということだ。
であれば、同じくグループAレースで勝つための”種クルマ”ともいえる8代目「NISSAN SKYLINE」 GT-Rについても、そうした最低限の確認で済ませる可能性はなかったのか。
「たしかに実験部のトップからは『レース用の種クルマなんだからコストをかけるな』といったプレッシャーはかけられました。たしかに社内的に、GT-Rはレースで勝つためのクルマと位置づけられていましたから」。
「しかし、それはあくまで高性能が必要であることを分かりやすくするためのフレーズであって、商品主管・伊藤さんの胸のうちに『究極のロードゴーイングカーを目指す』という想いがあることを聞かされていましたので、”種クルマ”的な開発をするわけにはいかないと思っていたわけです」。
「たとえば当時、世界ラリー選手権を席巻していたアウディ・クワトロスポーツというクルマがあったのですが、あの市販バージョンはまさしく種グルマで、ロードゴーイングカーとしての完成度は決して高いとはいえませんでした。 GT-Rが目指すのはそうじゃないんだ! という思いでいっぱいでしたね」。
『初モノはいらない、本物を創りたい』
とはいえ、実験主担としての渡邉 衡三 氏の上司は、SKYLINE商品主管の伊藤 修令 氏ではなく、実験部長である。
その直属の上司からかけられたプレッシャーを跳ねのけるのは容易でなかったと想像できる。
その原動力となったのは何だったのだろうか。
「世界一のクルマを作ろうというのですから、ハードウェアをまとめる実験主担としては燃えますね。 でも、それだけじゃありません。 正直、R31 SKYLINEは世間から評価をされず、散々な言われようでもありましたし、それによって商品主管の伊藤さんは汚名をかぶった部分は否めません」。
「R31 SKYLINEの評価がすなわち伊藤さんのせいではないことはよく知っていましたから、R32では伊藤さんの名誉を挽回したいという気持ちが先に立ちました」。
「だから伊藤さんの言うように『究極のロードゴーイングカー』をハードウェアとして目指したわけですし、種クルマであればおざなりで済むところもしっかりと開発したという自負があります」。
と、渡邉 衡三 氏は開発初期を振り返る。
さて、8代目「NISSAN SKYLINE」 GT-RといえばFRベースの前後駆動トルク可変4WDシステム・アテーサE-TSや各気筒独立スロットルやツインターボのRB26DETTエンジンなど注目すべきテクノロジーが注入されている。
実験主担としては苦労した部分だと想像されるが、そのあたりについて渡邉 衡三 氏はどう考えているのだろう?
「たしかにアテーサE-TSやツインターボエンジンなど先進技術も投入していますが、単に新しいテクノロジーを入れたと思われるのは本意ではありません」。
「たとえば、1980年代の日産車のカタログや広告には『世界初』や『日本初』というキャッチコピーが踊っています。 ですが、いま改めて考えてみれば本質を外したギミックとしての”初”が少なからずあったようにも思います」。
「たしかにGT-Rのメカニズムにしても世界初であったり日本初となる技術は投入されているかもしれませんが、それは”初”ありきではなく、世界一を目指した結果です」。
「その点で、従来の”初”という技術とは大きく違うことは、GT-Rを好きな方には知っていていただきたいですね。 ですから日本国内でしか販売しないクルマをニュルブルクリンクに持ち込んでテストをしたわけです」。
「仮にレース用の種クルマであれば、ニュルで開発する必要はないわけです。 それは、やはり世界一のロードゴーイングカーを作ろうという思いがあったからに他なりません」。
『GT-Rの走りは5点満点なのに6点?』
そうして昭和63年(1988年)にはじめてニュルブルクリンクでのテストを行なうことになる。
「それまでも欧州に行ったテストチームからの報告でニュルブルクリンクという存在やどういった場所なのかは知っていましたが、具体的にどんなコースで、どのくらいスゴイ場所なのかは手探り状態でした。 ただ社内レポートを見る限りはそれほどの場所でもないので普通に走ることができるのかなと考えていたわけです」。
しかし、そうした予想は裏切られる。
「実際にコースに行ってみると、これは容易に攻略できるところでないことは一目瞭然でした。 社内レポートで見たニュルは、観光ドライブのごとく走ってみましたという状態の話で、いわゆる欧州メーカーが開発に使っている走らせ方とは次元の違う話だったのです。 とにかくまともに走ることさえできません」。
「またテストドライバーにしてもニュルを走った経験がありませんから、ドライバーを鍛えることもしなければなりません。 ともかく一筋縄ではいかなかったわけです」。
と苦労をしのばせる。
また評価法でもGT-Rは特別な手法を採った。
「通常、開発目標は5点満点のレーダーチャートを使います。 たとえば走りが5点で、居住性が3点とか、そういった具合です。 これは絶対評価ではないので、どこにプライオリティを置くかを意味するのですが、じつはベースとなるR32 SKYLINEの開発目標として走りのベクトルを5点にしていました」。
「そのままGT-Rも同じ満点(5点)では開発チームがベースと同じレベルの走りでいいと誤解してしまうかもしれません。 そこで思い切って『GT-Rの走りについては、5点満点で6点』という、ありえないチャートにしたのもいい思い出ですね」。
『スゲぇクルマを作ったもんだ』
「ただし、機能を数値化したレーダーチャートだけではロードゴーイングカーとしての品質感などの目標を開発チーム全体で共有するのは難しい面もあります。 そこで生まれたのが”品質機能展開”というものです」。
「たとえば高品質感の一例として、『ボンネットを開けると人が集まってくる』と挙げられていて、そのためには『配線が綺麗であること/エンジン自体がカッコよくあること』といった具体例を示したものです」。
「またシーン・シチュエーションというレポートを書いてくれたスタッフもいて、これは『世田谷に住んでいるGT-Rオーナーが、早朝のドライブで中央道を通って河口湖に行き、そこから富士五湖を走り抜けて御殿場に出て、東名高速を使って帰ってくる』というストーリーが書かれていました」。
「このシチュエーションのすべてにおいて満足できる性能を与えること、つまり市街地から高速道路、そしてワインディングまでの気持ちよさがGT-Rには必要ということで、そうした要素が種クルマではなく究極のロードゴーイングカーであるということを示すことができたのは、開発の方向性を共有するという面では有効だったと考えています」。
その一方、”グループAレースで2年間はトップを走れるポテンシャルを持たせることが最低条件”と商品主管の伊藤 修令 氏が言うように、機能・メカニズムとしての洗練も必要である。
その一例が前述したニュルブルクリンクにおけるテストではあるが、それだけでなくまた開発においても工夫がなされているという。
「GT-Rの開発においては、それ単独で行なうのではなくベースモデルとリンクしているわけですが、開発コストを抑えるために、基本的にはベース車の開発で完成させて、その後にGT-R特有の部分を煮詰めるという手法をとりました」。
「つまり開発サイクルをGT-Rでは一サイクル分後ろにずらしているのです。 それが発表はSKYLINEと同時だったけれど、GT-Rの発売は3ヵ月後となった理由です」と渡邉氏は語ってくれた。
さて、渡邉 衡三 氏も8代目「NISSAN SKYLINE」GT-Rオーナーである。
「1989年のデビュー時に購入したクルマをいまも持っています」というほど大事にしているわけだが、数年前にその愛車を開発ドライバーのひとりである加藤博義氏と二人で、中央道を走ったことがあるそうだ。
そのとき車内での会話は、
「いやぁ、スゲぇクルマを作ったもんだなぁ」というものだったとか」。
「自画自賛と思われるかもしれませんが、『いまの技術水準で見てもまぁまぁのレベルにあるクルマ』になっていると思います」。
では仮に、もう一度やり直すとするならば・・・。
「まず空力は現代の技術で見直したい。当時は、とにかくダウンフォース重視ということで空気抵抗が増えることは覚悟の上で、ウイングで押さえつけるしかなかった。いまならフロア下の整流などにより空気抵抗を大きくせずにマイナスリフトを生み出すことができる」。
と、一瞬だけ、実験主担の顔をのぞかせた。
〜〜〜 R32スカイラインGT-R実験主担 渡邉衡三氏に訊く より 〜〜〜
NISSAN SKYLINE GTS-t Type-M (HCR32型)
1989年(平成元年)5月23日・・・、
モデルチェンジを実施し、8代目「NISSAN SKYLINE」が登場。
ボディタイプは、先代まで存在したステーションワゴンが姿を消し、ピラードハードトップ構造の4ドアスポーツセダンと2ドアクーペの2本立てとなった。
先代よりも大幅にシェイプアップしたスタイリングは、4ドアセダンで70mm、2ドアクーペで130mmも全長が短い、ショート・オーバーハングであった。
車両重量も、50kg以上も軽い。
8代目「NISSAN SKYLINE」より、6気筒エンジン搭載車、4気筒エンジン搭載車に関係なく、全てのグレードにおいて丸型4灯式テールランプが採用された。
また、先代まで設定されたディーゼルエンジン搭載モデルは姿を消している。
新開発4輪マルチリンクサスペンションとの相乗効果で、その走りは飛躍的に向上した。
見た目にもスポーティな8代目「NISSAN SKYLINE」は、運動性を重視した本格的スポーツセダンとして生まれ変わり、そのコンセプトと向上した走りから”超感覚スカイライン”なるキャッチフレーズを与えられる。
8代目「NISSAN SKYLINE」には輸出仕様モデルは存在せず、日本国内専用モデルとなった。
NISSAN SKYLINE GTS-t Type M (HCR32型)
余白
( )内は、A/T車
NISSAN SKYLINE BNR32型 GT-R |
NISSAN SKYLINE BNR32型 GT-R NISMO |
NISSAN SKYLINE BNR32型 GT-R N-1 |
NISSAN SKYLINE BNR32型 GT-R V・spec |
NISSAN SKYLINE BNR32型 GT-R V・spec U |
|
---|---|---|---|---|---|
車名・型式 | ニッサン E-BNR32 |
ニッサン E-BNR32 |
ニッサン E-BNR32 |
ニッサン E-BNR32 |
ニッサン E-BNR32 |
全長(mm) | 4545 | 4545 | 4545 | 4545 | 4545 |
全幅(mm) | 1755 | 1755 | 1755 | 1755 | 1755 |
全高(mm) | 1340 | 1340 | 1340 | 1340 | 1340 |
室内寸法・長(mm) | 1805 | 1805 | 1805 | 1805 | 1805 |
室内寸法・幅(mm) | 1400 | 1400 | 1400 | 1400 | 1400 |
室内寸法・高(mm) | 1090 | 1090 | 1090 | 1090 | 1090 |
ホイールベース(mm) | 2615 | 2615 | 2615 | 2615 | 2615 |
トレッド・前(mm) | 1480 | 1480 | 1460 | 1480 | 1480 |
トレッド・後(mm) | 1480 | 1460 | 1480 | 1480 | 1480 |
最低地上高(mm) | |||||
車両重量(kg) | 1430 | ---- | ---- | 1500 | 1500 |
乗車定員 | 4名 | 4名 | 4名 | 4名 | 4名 |
車両総重量(kg) | 1650 | ---- | ---- | 1720 | 1720 |
最高速度(km/h) | |||||
最小回転半径(m) | 5.3 | 5.3 | 5.3 | 5.3 | 5.3 |
燃料消費率 10・15モード |
7.0 | ---- | ---- | 8.2 | 8.2 |
エンジン型式・種類 | RB26DETT 直列6気筒 D.O.H.C. ツインターボ |
RB26DETT 直列6気筒 D.O.H.C. ツインターボ |
RB26DETT 直列6気筒 D.O.H.C. ツインターボ |
RB26DETT 直列6気筒 D.O.H.C. ツインターボ |
RB26DETT 直列6気筒 D.O.H.C. ツインターボ |
排気量(cc) | 2568 | 2568 | 2568 | 2568 | 2568 |
内径X行程(mm) | 86.0×73.7 | 86.0×73.7 | 86.0×73.7 | 86.0×73.7 | 86.0×73.7 |
圧縮比 | 8.5 | 8.5 | 8.5 | 8.5 | 8.5 |
最高出力(ps(kw)/rpm) | 280(206)/6800 | 280(206)/6800 | 280(206)/6800 | 280(206)/6800 | 280(206)/6800 |
最大トルク(kg・m(N・m)/rpm) | 36.0(353.0)/4400 | 36.0(353.0)/4400 | 36.0(353.0)/4400 | 36.0(353.0)/4400 | 36.0(353.0)/4400 |
燃料供給装置 | ニッサンEGI (ECCS) マルチポイント インジェクション |
ニッサンEGI (ECCS) マルチポイント インジェクション |
ニッサンEGI (ECCS) マルチポイント インジェクション |
ニッサンEGI (ECCS) シングルポイント インジェクション |
ニッサン EGI (ECCS) マルチポイント インジェクション |
使用燃料・燃料タンク容量 | 無鉛プレミアム ガソリン・72 |
無鉛プレミアム ガソリン・72 |
無鉛プレミアム ガソリン・72 |
無鉛プレミアム ガソリン・72 |
無鉛プレミアム ガソリン・72 |
変速装置 | 前進5速 後退1速 |
前進5速 後退1速 |
前進5速 後退1速 |
前進5速 後退1速 |
前進5速 後退1速 |
変速比 | 第1速 3.214 第2速 1.925 第3速 1.302 第4速 1.000 第5速 0.752 後退 3.369 |
第1速 ---- 第2速 ---- 第3速 ---- 第4速 ---- 第5速 ---- 後退 ---- |
第1速 ---- 第2速 ---- 第3速 ---- 第4速 ---- 第5速 ---- 後退 ---- |
第1速 3.214 第2速 1.925 第3速 1.302 第4速 1.000 第5速 0.752 後退 3.369 |
第1速 3.214 第2速 1.925 第3速 1.302 第4速 1.000 第5速 0.752 後退 3.369 |
終減速比 | 4.111 | ---- | ---- | 4.111 | 4.111 |
駆動方式 | 4WD | 4WD | 4WD | 4WD | 4WD |
ステアリングギヤ型式 | パワーアシスト付き ラック&ピニオン式 |
パワーアシスト付き ラック&ピニオン式 |
パワーアシスト付き ラック&ピニオン式 |
パワーアシスト付き ラック&ピニオン式 |
パワーアシスト付き ラック&ピニオン式 |
サスペンション・前 | マルチリンク式 | マルチリンク式 | マルチリンク式 | マルチリンク式 | マルチリンク式 |
サスペンション・後 | マルチリンク式 | マルチリンク式 | マルチリンク式 | マルチリンク式 | マルチリンク式 |
タイヤ・前 | 225/50R16 92V | 225/50R16 92V | 225/50R16 92V | 225/50R17 94V | 225/50R17 94V |
タイヤ・後 | 225/50R16 92V | 225/50R16 92V | 225/50R16 92V | 225/50R17 94V | 225/50R17 94V |
主ブレーキ・前 | ベンチレーテッド ディスク式 |
ベンチレーテッド ディスク式 |
ベンチレーテッド ディスク式 |
ベンチレーテッド ディスク式 |
ベンチレーテッド ディスク式 |
主ブレーキ・後 | ベンチレーテッド ディスク式 |
ベンチレーテッド ディスク式 |
ベンチレーテッド ディスク式 |
ベンチレーテッド ディスク式 |
ベンチレーテッド ディスク式 |
駐車ブレーキ | 機械式後2輪制動 | 機械式後2輪制動 | 機械式後2輪制動 | 機械式後2輪制動 | 機械式後2輪制動 |
1993年(平成5年)8月19日・・・。
ベースグレードのモデルチェンジを実施し、9代目「NISSAN SKYLINE」へ移行、8代目「NISSAN SKYLINE」の販売は終了となった。
GT-Rは、8代目「SKYLINE」が継続して販売される事になる。
1994年(平成6年)2月14日・・・。
GT-R V・spec Uを発売。
全日本ツーリングカー選手権で4連覇を果たし、記念モデルとなるGT-R V・spec IIは、ブレンボ製ブレーキシステムと17インチ鍛造アルミ+45偏平タイヤ(245/45ZR17)、を装着する。
NISSAN SKYLINE GT-R V・spec U (BNR32型)
1993年(平成5年)8月・・・。
GT-R、GT-R V・specを一部変更。
1994年(平成6年)モデルとなるGT-R、GT-R V・specは、クラッチ構造を油圧作動プッシュ式からプル式へ変更され、路面へ伝達効率の高さと走行フィールの向上が図られた。
NISSAN SKYLINE GT-R V・spec (BNR32型)
1993年(平成5年)5月・・・。
GTS Vセレクション 60thアニバーサリー、GTE Vセレクション 60thアニバーサリーを追加。
直列6気筒ツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB20DE型エンジンを搭載するGTS Vセレクションをベースに、直列6気筒シングルカム仕様 RB20E型エンジンを搭載するGTE Vセレクションをベースに、上級タイヤ&アルミを装着、ゴールドGTバッジ等を特別装備した。
5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。 GTS Vセレクション 60thアニバーサリーは2ドアクーペのみに存在し、GTE Vセレクション 60thアニバーサリーは4ドアセダンのみに存在したモデル。
日産自動車創立60周年記念車。 7月までの期間限定で販売された。
NISSAN SKYLINE GTE Vセレクション 60thアニバーサリー
(HR32型)
1993年(平成5年)2月3日・・・。
GT-Rを一部変更、及びGT-R V・specを追加。
全日本ツーリングカー選手権 Group A レース優勝記念モデルとなるV・specは、ブレンボ製ブレーキシステムとBBS製17インチアルミを装着する。
NISSAN SKYLINE GT-R V・spec (BNR32型)
NISSAN SKYLINE GT-R V・spec (BNR32型)
NISSAN SKYLINE GTS25 Type X・G (ECR32型)
NISSAN SKYLINE GTS-t Type M (HCR32型)
1992年(平成4年)7月・・・。
GTS25 SV、GTE SVを追加。
直列6気筒ツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB25DE型エンジンを搭載するGTS25 Type Xをベースに、直列6気筒シングルカム仕様 RB20E型エンジンを搭載するGTE Type
Xをベースに、専用色に15インチアルミ、リアワイパー、プロジェクターヘッド&フォグ組み込みバンパーを特別装備した。
GTS25 SVは5速オートマチックトランスミッションのみを、GTE SVは5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。 4ドアセダンのみに存在したモデル。
日産自動車累計販売台数4,000万台達成記念車。
NISSAN SKYLINE GTS25 SV (ER32型)
1992年(平成4年)5月・・・。
GTS SVを追加。
直列6気筒ツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB20DE型エンジンを搭載するGTS TypeJをベースに、専用色に15インチアルミホイール、リアスポイラーを装備、内装ではCDプレーヤーや本革巻きステアリングを特別装備した。
5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。 2ドアクーペのみに存在したモデル。
日産自動車累計販売台数4,000万台達成記念車。
NISSAN SKYLINE GTS SV (HR32型)
カタログより
NISSAN SKYLINE オーテックバージョン (HNR32改型)
コックピット
AUTECH JAPAN
1992年(平成4年)1月・・・。
GTS VセレクションUを追加。
直列6気筒ツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB20DE型エンジンを搭載するGTSをベースに、プロジェクターヘッドランプやバンパー組込みフォグランプ、リヤスポイラー、15インチアルミ、本革巻きステアリング、CDプレーヤー等を特別装備した。
5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。 4ドアセダン、2ドアクーペ共に存在したモデル。
GT-Rが1991年度全日本ツーリングカー選手権シリーズチャンピオン獲得を記念しての特別仕様車となる。 ボディカラーはブラックパールメタリックのみを設定し、全国限定1500台のみの販売となる。
NISSAN SKYLINE GTS VセレクションU (HR32型)
1991年(平成3年)10月・・・。
GTS25 Type Xを追加。
直列6気筒ツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB25DE型エンジンを搭載し、5速オートマチックトランスミッションのみを設定。 4ドアセダンのみに存在したモデル。
SUPER HICASが標準装備され、L.S.D.、ABS、ASCD等がメーカーオプションとなる。 RB25DE型エンジン搭載車は、ロードホイールは4穴とされ、フロント・リヤ共にベンチレーテッドディスクブレーキを装着する。
Type Xシリーズは、専用シートを採用する等、標準グレードに対して装備を豪華にしたグレードとなっている。
NISSAN SKYLINE GTS25 Type X (ER32型)
NISSAN SKYLINE GT-R N-1 (BNR32型)
NISSAN SKYLINE GT-R N-1 BNR32型)
NISSAN SKYLINE GTS Vセレクション (HR32型)
NISSAN SKYLINE GTS-t Type M (HCR32型)
FULL RANGE 5E-AT
8代目「NISSAN SKYLINE」は・・・、
4ドアセダン、
GTS Type X (RB20DE型エンジン搭載車)
GTE Type X (RB20E型エンジン搭載車)
・・・以上の型式が、”HR32”
GTS-t Type M (RB20DET型エンジン搭載)
GTS Type S (RB20DE型エンジン搭載車)
・・・以上の型式が、”HCR32”
GXi Type X (CA18i型エンジン搭載車)
・・・以上の型式が、”FR32”
GTS-4 (RB20DET型エンジン搭載車)
・・・以上の型式が、”HNR32”
GTS25 Type X・G (RB25DE型エンジン搭載車)
・・・以上の型式が、”ECR32”
7グレード、5型式。
2ドアクーペ、
GTS Type J (RB20DE型エンジン搭載車)
・・・以上の型式が、”HR32”
GTS-t Type M (RB20DET型エンジン搭載)
GTS Type S (RB20DE型エンジン搭載車)
・・・以上の型式が、”HCR32”
GTS-4 (RB20DET型エンジン搭載車)
・・・以上の型式が、”HNR32”
GTS25 Type S (RB25DE型エンジン搭載車)
・・・以上の型式が、”ECR32”
5グレード、4型式。
合計9グレード、5型式がマイナーチェンジ後、同時に発売となった。
マイナーチェンジ後 (2ドアクーペ)
マイナーチェンジ前 (2ドアクーペ)
マイナーチェンジ前 (4ドアセダン)
1991年(平成3年)8月20日・・・。
ベースグレードのマイナーチェンジを実施。
エクステリアでは、
フロントバンパーが、左右のインテークダクトが上下2分割となっていた前期モデルに対し、中央の格子を廃止。
フロントグリルは、マイナーチェンジ後のモデルには、スモークメッキの飾りが取り付けられた。
エンジンフードの先端に取り付けられているエンブレムが、全グレード共通でシルバーに塗装されていたものに対し、”GTS-t”はレッド/ホワイト、”GTS-4”はブルー/ホワイト、”GTE”はグリーン/ホワイトに塗装され、エンブレム自体が若干大きくなっている。
フロントフェンダーに取り付けられているGTエンブレムも、エンジンフード先端に取り付けられているエンブレムと同様の変更を実施。
4ドアセダン車のみ、リヤエンブレムが全文字一体型となっていた前期モデルに対し、一文字ずつが独立しエンブレム自体が若干大きくなっている。
リヤピッチングプロテクターが、前期モデルに対し大型化された。
ヘッドライトは、プロジェクターヘッドライトが、ロービームがH3C型バルブ、ハイビームがH3型バルブを使用していた前期モデルに対し、ロービームがH1型バルブ、ハイビームがH3型バルブに変更され、若干レンズの形状が変更となっている。 ハロゲンヘッドライトは、前期モデル、後期モデルでの変更点は無い。
フロントウィンカーは、アウターレンズがクリアーでバルブ部分のみにオレンジ色のカバーが被せてあるタイプであった前期モデルに対し、アウターレンズそのものがオレンジ色となった。
1991年(平成3年)7月19日・・・。
N-1を発売。
N-1は、1991年(平成3年)から始まったN1耐久シリーズの参加者向けに設定されたモデルである。
インタークーラーグリルを廃止。
ブレーキローターのピンホールを廃止し、クラックの発生によるトラブル対策を実施。
ブレーキ冷却用の導風板が追加されている。
ヘッドライトをプロジェクター式から異形角型2灯式に変更。
上記の他に、NISMO純正ホイール、NISMO製ステアリング、マフラー、ストラット・タワーバー等を装備する。
その他は、GT-R NISMOの仕様に準じている。
ボディカラーは、専用色のクリスタルホワイトのみを設定。
製造は、228台のみである。
1991年(平成3年)1月・・・。
GTS Vセレクションを発売。
2ドアクーペのGTSを、ベース車両としている。
リヤスポイラー、アルミホイール、本皮巻きステアリングホイールCDプレーヤー等を特別装備した。
ボディカラーは、ガングレーメタリックのみである。
1990年全日本ツーリングカー選手権のシリーズチャンピオンを獲得を記念した特別限定車。
テールエンド
フードスポイラー
NISMOダクト
NISSAN SKYLINE GT-R NISMO (BNR32型)
1990年(平成2年)2月22日・・・、
GT-R NISMOを、発表。
同年3月11日に、限定500台で販売された。
全日本ツーリングカー選手権 Group A ホモロゲーションモデルとして製作されている。
GT-R NISMOは、全日本ツーリングカー選手権 Group Aを戦うために、レギュレーション上で変更できないパーツを中心に装備が変更された。 レーシングカーの開発は、市販車と同時進行で行われている。
ダクト付きフロントバンパー(通称、NISMOダクト)、フードスポイラー装着等の空力部品の変更、レースに不要なエアコン、オーディオ、ABS、リアワイパーの省略等を実施。 そんな中で、最大の特徴はターボチャージャーの変更だった。
全日本ツーリングカー選手権 Group Aでは、ブースト圧をノーマルの0.7kg/cuから1.6 kg/cu程度まで上げてパワーを絞りだす。 その場合、ノーマルのセラミックタービンでは破損の恐れがあり、異物を吸い込んでも瞬時に壊れない材質が求められたのだ。 そのため、GT-R
NISMOではタービンの材質をメタル(鉄系ニッケル合金=インコネル材)を使用。 合わせて、高出力が期待できる設定に変更している。
具体的には、排気側のタービンホイールの基本仕様はセラミックと同じT25のままだが、トリム径とA/Rを高速型にしている。 吸気側のコンプレッサーホイールは、セラミックのT03からT04Bへと1サイズ大きくされている。 さらにトリム径も61.7まで拡大された。
また、エキゾーストマニホールドも容量が大きくなったターボに合わせ、専用のもの(14004-06U00)が使われた。
モデルコードは”KBNR32RXFSL-RA”となる。
限定台数500台ということで、購入希望者がディーラーに殺到。
購入を逃した希望者向けに、GT-R標準車にNISMOのパーツを取り付けたオリジナル仕様の”NISMO U”を販売したディーラーもあった。
NISSAN SKYLINE GTS-4 (HNR32型)
NISSAN SKYLINE GTS-4 (HNR32型)
16年振りにGT-Rが復活した1989年(平成元年)8月21日・・・、
RB20DET型エンジンに、GT-Rに搭載される4WDシステム ATTESA E-TSを組み合わせたGTS-4を発売。
アルミ製の部品を多用したGT-Rに対して、ノーマルグレードと同様にスチール製の部品を使用。
加えて、ブリスターフェンダーを装着していない為、トレッドが1460mmとノーマルグレードと同一となっている。
GTS-4はGT-Rのデチューン版という訳ではなく、GTS-tのオールウェザー版という位置付けとなっている。
4ドアセダン、2ドアクーペ共に存在したモデル。
GT-R
Group A 人気の主役達
NISSAN SKYLINE GT-R (BNR32型)
NISSAN SKYLINE GT-R (BNR32型)
平成元年(1989年)、16年の沈黙を破って復活したGT-R。
”GT-R”と名付けられた使命はただひとつ、レースでの勝利でした。
しかし、8代目「NISSAN SKYLINE」 (R32型) GT-Rはレーシングカーではなく、国産初の”GT”という名を冠した「NISSAN SKYLINE」の1モデルとして生まれたのです。
デビューから20年たった今、8代目「NISSAN SKYLINE」 (R32型) GT-R搭載のRB26DETT型エンジン開発を担当した石田
宜之 氏のインタビューを、お伝えします。
〜〜 サーキットへ・・・ 〜〜
平成2年(1990年)3月17日、平成元年(1989年)まで参戦していた7代目「NISSAN SKYLINE」 (R31型) GTS-Rに替わり、RB26DETT型エンジンを搭載した2台の8代目「NISSAN SKYLINE」
(R32型) GT-R (BNR32型)が全日本ツーリングカー選手権 第1戦 西日本サーキット(後の、MINEサーキット)に登場した。
この日の予選では、”CALSONIC SKYLINE”と”REEBOK SKYLINE”とが、それまでGroup A最強を誇っていた「FORD SIERRA」に大差をつけ、フロントロウを独占し、ポールポジションを”CALSONIC
SKYLINE”に乗り込む星野 一義 / 鈴木 利男組が獲得。
翌3月18日の決勝では、スタートと同時に2台の8代目「NISSAN SKYLINE」 (R32型) GT-R (BNR32型)が同クラス(ディビジョン1,2,501cc以上のマシン)の他のマシンを、別クラスであるかのように突き放し、レースを進めていった。
しかし、そんな中でも不安がなかったわけではなかった。
まず不安材料の一つ目はRB26DETT型エンジンから搾り出される600PSもの出力によってトランスミッションにかなりの負荷がかかり、ミッショントラブルの発生の危険性があったこと(単なるミッションブローだけでなく、3速から抜けなくなるトラブルもテストでは発生していた)。
そしてレギュレーション上、ブレーキ冷却ダクトの断面積をむやみに拡大できない事と、そもそもの車重によるブレーキのフェードの可能性であった。
そのため、決して余裕のある戦いではなかったのだった。
しかし、そんな状況にもかかわらず、”CALSONIC SKYLINE”が2位以下の車両を全て周回遅れにし、ポールトゥウィンを果たし、2位には不安視されていたミッショントラブルを抱えながらも長谷見 昌弘 / アンダース・オロフソン組の”REEBOK SKYLINE”が入り、3位以下に大差をつけ、8代目「NISSAN SKYLINE」 (R32型) GT-R (BNR32型)のレース復帰の初陣をすばらしい結果で飾ったのだった。
その後、破竹の勢いで平成2年(1990年)シーズンを戦い、”CALSONIC SKYLINE”がシリーズチャンピオンを獲得し、1戦だけリタイアしてしまった”REEBOK
SKYLINE”がシリーズ2位を獲得したのだった。
もはや、”GT-RのライバルはGT-Rのみ”という状態であった。
そのためにディビジョン1は2,501cc以上のマシンの争いといいながら、GT-Rの事実上のワンメイククラスとなっていた。
その後、平成5年(1993年)まで全日本ツーリングカー選手権JTCを戦い、全29戦29勝という金字塔を打ち立てた。
国内選手権に関しては、Group Aレギュレーションのレースだけでなく、N1耐久シリーズ(後の、スーパー耐久)という改造範囲がかなり狭いレースにも参戦した。
ここでもほぼ敵無しの状態であったが、筑波12時間ではブレーキトラブルによって優勝争いから脱落し、「HONDA CIVIC」が優勝するということもあった。
その後、日産はブレンボ社製ブレーキキャリパーを装着した8代目「NISSAN SKYLINE」 (R32型) GT-R V-spec N1を発売し、ブレーキ関連のトラブルはほぼ起きなくなった。
また、RB26DETT型エンジンを搭載した8代目「NISSAN SKYLINE」 (R32型) GT-Rは海外レースなどにも進出し、スパ・フランコルシャン24時間やニュルブルクリンク24時間、マカオギアレース(マカオグランプリのサポートレース)、デイトナ24時間レース、バサースト1000kmなどで活躍した。
ちなみに、マカオギアレースでは800PSもの出力で予選を戦っていた。
Group A Test Car, 1989
Group A Test Car, 1989
CALSONIC SKYLINE
CALSONIC SKYLINE
REEBOK SKYLINE
REEBOK SKYLINE
アルミキャリパー対向ピストンブレーキ
〜〜 アルミキャリパー対向ピストンブレーキ 〜〜
速いクルマほど、安全でなければならない。
サーキットの制動力をそのまま移植した4輪アルミキャリパー対向ピストンブレーキ。
フロントは、アルミ合金製キャリパー対向4ピストン型。
リヤは、アルミ合金製キャリパー対向2ピストン型。
対向ピストンは、シングルピストンにくらべ、ブレーキローターの押し付け力を高め、ブレーキの剛性を向上させることができる。
〜〜 タイヤ & ロードホイール 〜〜
225/50R16 92Vサイズのタイヤ。
これも、GT-R専用に開発された。
高いグリップ性能とコントロール性。
強大なエンジン・パワーも確実に路面に伝える。
そして、このタイヤには16in×8JJ鍛造アルミロードホイールが組み合わされる。
ワイドリム設計により、タイヤの接地面積を拡大。
高速耐久性、操縦安定性、乗り心地を高次元でバランスさせるため、高剛性化と軽量化を徹底して図った。
SUPER HICAS
SUPER HICASシステム構成図
〜〜 スーパーハイキャス 〜〜
SUPER HICASは、人間の感覚により忠実な安定性と応答性の両立を目標に開発された最新の4WSである。
転舵初期に一瞬後輪を逆相にステアすることで、後
のコーナリングフォースを、回頭性を高めることに利用している。
さらに、旋回中は同相に制御して安定性を確保する。
これらの制御により、ドライバーは転舵初期から、イメージ通りのスムーズな車両挙動を感じることができる。
4輪マルチリンクサスペンション+SUPER HICAS。
どこまでも人間の感性に自然な操舵感とアクティブ・セーフティな機能を合わせ持つ、最先端のシャシー・テクノロジーである。
HICASとは・・・、
HIgh Capacity Actively controlled Suspention (= 優れた能力の積極的に制御されたサスペンション)
・・・の略である。
ATTESA E-TS 概略図
RB26DETT型エンジン 諸元表
〜〜 ツインセラミックターボチャージャー 〜〜
タービン自体にセラミックを使用し軽量化を図るとともに、小径のタービンローターを採用し、回転部分の慣性モーメントを約40%も減らした。
これによって、ターボチャージャーのレスポンスは画期的に改善されている。
そしてこのターボチャージャーを2個装着したツインセラミックターボチャージャーは、馬力の向上と同時に、低回転域からの鋭い立ち上がりを可能にする。
つまり、スロットルワークに対して、常にリニアなレスポンスが得られるということだ。
〜〜 シリンダーブロック剛性強化 〜〜
エンジンの高出力化に伴い、各パーツの剛性強化は、徹底してなされている。
まず、ブロックとクランクシャフト。
燃焼過程で受ける爆発エネルギーは、ブロックからヘッドを押し離そうと作用する。このエネルギーを受け止めるヘッドボルトのサイズをアップ。
一方、エンジンとトランスミッションとの結合剛性、クランクシャフト、コンロッドなどの剛性も高めた。
〜〜 直動式軽量インナーシム型バルブリフター 〜〜
高回転でバルブサージングの限界を上げるには、まずカムが駆動しているバルブシステム全体の軽量化と追随性の向上を図る必要がある。
そこで、小型・軽量のインナーシム型直動式バルブリフターを新開発した。
クリアランスを調整するシムを内側にセットし、この部分を徹底的に軽量化することで高回転化に対応している。
〜〜 ナトリウムム封入中空エキゾーストバルブ 〜〜
排気バルブの中に金属ナトリウムを封入。
金属ナトリウムは、常温帯では固体。
高温域では液化状態となって、排気バルブ全体の熱伝導を高め、排気バルブの温度上昇を抑える。
〜〜 6連スロットルチャンバー 〜〜
量産車では通常、スロットルバルブ(絞り弁)は吸気流路に1箇所、スロットルバタフライが付いている。
レスポンスにこだわった結果、このエンジンでは、インテークマニホールドのすぐ上、それぞれのマニホールドにスロットルバルブを設けるという、緻密なエンジンのメカニズムを採用した。
これにより、スロットルバルブからシリンダーまでの吸気管長が短くでき、スロットルに対するシリンダー側の反応が俊敏になる。
全開状態からの加速レスポンスのフレキシビリティ。
スロットルをわずかに開きかけた時のレスポンスの立ち上り。
GT-Rは、スロットル操作の微妙なリニアリティにも妥協せず、より人間の感性に近い性能を実現している。
RB26DETT型エンジン
〜〜 パワーユニット RB26DETT 〜〜
GT-R復活の原動は、あくまでもこのRB26DETT型エンジンである。
直列6気筒 2568cc、ツインカム24バルブ インタークーラー付きツインターボチャージャー。
ターボチャージャーは、コンプレッサー側にギャレット製T3型、タービン側にセラミックローターを使用したギャレット製T25型を組み合わせたハイブリッドタイプとし、レスポンスの良さと全域での高い過給効率を両立している。
2基のターボチャージャーは同一方向に向けて配置され、エキゾーストを後方で1本に結合するレーシングタイプのレイアウト。
排気干渉を抑え、レスポンスの向上を図った。
このエンジンの潜在能力は凄い。
第一級のレーシング・エンジンを目指し開発されたという点で、他の市販エンジンとは確実に一線を画す。
パワーがある。 レスポンスが素晴しい。 そして、どこまでも飽和を知らない加速感。 アクセルを踏めば、瞬時に加速する魅力のリニアリティ。
そこには、ドライバーの期待値をはるかに超えた、圧倒的な走りの世界が存在する。
ツインターボチャージャー
RB26DETT型エンジン
RB26DETT型エンジン
NISSAN SKYLINE GT-R (BNR32型)
1989年(平成元年)8月21日・・・、
4代目「NISSAN SKYLINE」(”ケンとメリーのSKYLINE”)以来、16年振りとなるGT-Rが復活。
日本国内のみならず、日本国外の自動車レースを席巻する事となる。
かつてのSKYLINE GT-Rは、直列6気筒 D.O.H.C. 24バルブ 2000cc 自然吸気エンジンを搭載する後輪駆動(FR)であったが・・・、
復活した8代目「NISSAN SKYLINE」のGT-R(BNR32型)は、直列6気筒 D.O.H.C. 24バルブ 2600cc 過給機付きエンジンとなった。
過給機は、セラミック製ホイールを持つターボチャージャーを2機装着。
後輪駆動方式(FR)をベースとしているが、電子制御システムによって前輪にも自在に駆動力を配分できる4輪駆動システム(アテーサ E-TS)を装備する。
5速マニュアルトランスミッション車のみの設定となる。
NISSAN SKYLINE GT-R (BNR32型)
8代目「NISSAN SKYLINE」 GT-Rは、レースで勝つためにレギュレーションに準じただけの”種クルマ”になっていた可能性があったのだろうか。
それは、のちに第二世代GT-Rのすべてに関わることになる渡邉 衡三 氏がいる限り、きっとありえない。
渡邉 衡三 氏は、伊藤 修令 氏の想いを真剣に実現させたかった。
だから、ニュルブルクリンクにも試作車を持ち込み、究極のロードゴーイングカーを作ったのだ。
8代目「NISSAN SKYLINE」 GT-R 実験主担 渡邉 衡三 氏
教習車仕様モデル
@ GTS-t
直列6気筒ツインカム・ターボ仕様 RB20DET型エンジンを搭載し、5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。
4ドアセダン、2ドアクーペ共に存在したモデル。
L.S.D.、SUPER HICASが標準装備され、ABS、ASCD等がメーカーオプションとなる。
ターボエンジン搭載車は、ロードホイールは5穴とされ、フロント・リヤ共にベンチレーテッドディスクブレーキを装着する。
A GTS-t Type M
ベースグレードとなる”GTS-t”に対し、フロントにアルミ製対向4potディスクキャリパー、リヤにアルミ製2potディスクキャリパーを装着したモデル。
B GTS
直列6気筒ツインカム・ナチュラルアスピレーション仕様 RB20DE型エンジンを搭載し、5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。
4ドアセダン、2ドアクーペ共に存在したモデル。
L.S.D.、ABS、ASCD等がメーカーオプションとなり、SUPER HICASの設定は無い。
ナチュラルアスピレーションエンジン搭載車は、ロードホイールは4穴とされ、フロントがベンチレーテッドディスクブレーキ、リヤがディスクブレーキを装着する。
C GTS Type S
ベースグレードとなる”GTS”に対し、ロードホイールを5穴化したモデル。
SUPER HICASが標準装備される。
D GTE
直列6気筒シングルカム仕様 RB20E型エンジンを搭載し、5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。
4ドアセダンのみに存在したモデル。
L.S.D.、ABS、ASCD等がメーカーオプションとなり、SUPER HICASの設定は無い。
E GXi
直列4気筒シングルカム・シングルポイントインジェクション仕様 CA18i型エンジンを搭載し、5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションを選択可能。
4ドアセダンのみに存在したモデル。
L.S.D.、SUPER HICAS、ABS、ASCD、等の設定は無い。
このモデルのみ、リヤブレーキがドラムブレーキとなり、フロントはベンチレーテッドディスクブレーキを装着する。
GTS-t Type M
GTS-t Type M
GTS-t Type M
GTS-t
マルチリンク式サスペンション 概略図
ドライバーズ & アシスタントシート
コクピット
「私がR31の主管となったのが昭和60年(1985年)1月の事で、デビューのわずか半年前ですから、櫻井さんから引き継いで発表だけをやった、という感じしかないんですよ。 遅れて出した2ドアはちょっと手を入れましたが、この2ドアが出るまでの間もお客様から『こんなのSKYLINEじゃない』という様な厳しい声を随分いただきまして、これにはどうにかしないと、という危機感を強く感じたのも事実です。」
ハイソカー・ブームの影響で大きく豪華になったR31は、スポーツセダンとして愛されてきたSKYLINEのイメージとはかけ離れたものだった。
当然の様にユーザーの評判も厳しく、販売台数も伸び悩んでしまう。
「その頃、日産の社長も石原さん(石原 俊)から久米さん(久米 豊)の変わって、業績を上向かせる為にも構造改革に取り組まねば、という事になって、例えば上司を肩書きではなく『さん』付けで呼ぶ様にして風通しを良くしようとか、色々変えていこうという気概が出て来ていました。 でも、私がプリンスに入った頃は『さん』付けなんて当たり前で櫻井さん(櫻井
眞一郎)の事を『櫻井課長』なんて呼んだ事は一度もなかったですから。 まあ、上(上司)ばかり見ないで、お客さんの方を見ながらクルマを作っていこうとなった訳です。」
そんな中で、伊藤 修令 氏はR31の次、R32の姿を具現化するプロジェクトに取り掛かる。
「R31の6気筒ターボに関しては、僕はちょっと煮詰めが足りないんじゃないかな、という気もしていましたが、ジャーナリストの人達からも『SKYLINEのエンジンとしてはパンチが足りない』といった指摘が少なくなかったですね。 当時、日産のエンジン部門は技術部門の中でもトップクラスの連中が集まっていたんですが、この評価には戸惑った様で、その後若い人達が中心になって、エンジン部門ももっと活性化を図ろう!、という様な気概も出て来ました。 エンジンの開発部は横浜の鶴見にあったんですが、その名を取って『鶴見商事』を作って、もっと遊び心を持って開発していこう、なんてこともありましたね。」
業績悪化の閉塞感もあって、何かやらなければ、という気持ちはエンジン開発部門に限らず、日産の社員一人一人の中にも出て来ているのだろう。
「私自身もR31デビューの後、各地のディーラーを回ってバッシングを受けながら(笑)市場調査をしていたんですが、85年(昭和60年)の暮れにはR32のプランニングを始めて、翌86年(昭和61年)の3月にはコンセプトを決めて開発部門に対して『開発宣言』をやってます。 R31デビューの時、私はSKYLINEだけでなくLAURELとLEOPARDの主管も務めていたのですが、R32を始める頃には、日産はもっといい商品を出していかないとダメだ、という事で担当を絞り、86年(昭和61年)にはSKYLINE専任の主管となります。 この開発宣言にはまだGT-Rの復活までは取り入れてなかったんですが、心の中には構想がありました。 会社の業績があまり良くない中で、はっきり言い出せないでいたんですが・・・・・・。」
こうして1986年(昭和61年)にはR32の開発がスタートする訳だが、伊藤 修令 氏の中にあったSKYLINE復活のコンセプトは、とにかく『分かりやすいSKYLINEにする』という事だった。
「まず、SKYLINEの販売台数低下になんとか歯止めをかけなければ、という事があったんですが、その為に『SKYLINEはどうあるべきか』とか『SKYLINEに期待されているもの』を考えると、やはり『走って楽しいセダン』という事に尽きるんです。 R31は周囲を見過ぎた事で、大きく、広く、豪華になって、セダンとしての満足度は高まりましたが、SKYLINEのあるべき姿とはちょっと離れてしまったんですね。」
確かにR31はスペックもスタイルも優れたセダンではあったが、こと『SKYLINEらしさ』という点ではイメージが希釈だ。
「そこで、R32はもっとメリハリのあるクルマにする為に、譲ってはならない部分はあくまでも譲らず、切る所はバサバサ切るという考えでコンセプトを煮詰めました。 他車に負ける部分もあるかも知れないが、ここでは絶対負けないぞ、というところ持ってないと、他のクルマと並べても埋没すてしまいますから。 とにかく他のメーカーが一目置く様な、光る部分を持つクルマにしたい、と考えていましたね。」
万人向けを目指し過ぎたR31への反省から、R32はもっと『SKYLINEらしさ』を大事にして、走りの性能に磨きをかける事を第一に考えたといっていいだろう。
「そのコンセプトを実現する為に、世界のどのクルマにも負けない様な走りを実現する事を目指しました。 これが『90年(平成2年)までに世界一の走りを実現する』という901活動の始まりなんです。 86年(昭和61年)暮れにはR32 SKYLINEのコンセプトが、例えば重量は140kg削るとかいう事も含めて具体化されていったのですが、そのときシャシー設計のほうから、SKYLINEをひとつのターゲットとして901活動を盛り上げていく、という事になったんだと思います。」
プロジェクト901とも呼ばれた901活動は、SKYLINEだけでなくPRIMERAなどのサスペンション設計にも生かされたと当時はPRされていたはずだが・・・・・・。
「確かにZ32 FAIRLADY ZやINFINITI、そしてPRIMERA(P10型)の開発にも901活動が反映されていたと思います。 Zも31までは走りが今ひとつと評価される事が多かったのですが、それも901活動で改良されましたし、PRIMERAの『ヨーロッパ車の走りを目指す』というコンセプトも901活動の成果です。 でも、エンジンやボディーまで全部含めてかっちりとやったのはR32 SKYLINEだけだったと思います。 もともと、シャシー設計部が言い出した901活動でしたが、目指すべき『世界一の走り』はとてもシャシーだけでは達成出来ません。 エンジンもボディーも全部合わせて煮詰めていって、初めて達成出来るものですから。」
確かに卓越した高性能はエンジンだけでも成り立たないし、シャシーだけが勝っていても『走って楽しい』クルマにはならない。 だが、エンジンもさる事ながら、やはりサスペンションの向上が901活動の肝だった様に記憶している。
「901活動が本格的に動き出したのは86年(昭和61年)の暮れ頃だったと思うんですが、もうその時はR32のサスペンションの基本構想であるフロント・ダブルウィッシュボーン、リヤ・マルチリンクというレイアウトはほぼ決まっていました。 ストラット
+ セミトレーリングアームのレイアウトは、3代目のC10 SKYLINEの時に採用したもので、熟成されていたとはいえあまりに時代が経っていましたし、この足をなんとかしなければ、という気持ちはR31の頃からありました。 そういえば、私がSKYLINEを離れていた頃に、ジャーナリストの人と雑談する機会があったんですが、R30について『伊藤さん、SKYLINEはあの旧態依存としたサスペンションをいつまで使うつもりなんですか』と聞かれた事があります。 そのときは『タイヤメーカーなんかもR30をベンチマークにしてテストとかやってますし、悪くないですよ』と答えたんですが、実際にはドキッとしましたね。 私がシャシー屋だという事を知っていて、そんな質問をしたと思うんですが、SKYLINEもそろそろ新しいものに挑戦していかないと、と常々感じていましたから。」
こうして901活動と共にR32のサスペンションは、R31までのストラット + セミトレーリングアームから前後マルチリンクへと大きく進化する事になる。
「R32の主管を引き受けたときから、シャシーは新しいものにする、と決めていました。 勿論、かなりコストのかかる仕事でしたが、これを今やらないと本当にSKYLINEはダメになるという危機感がありましたし、コストはSKYLINEが持つから、とシャシー設計を説得して開発が始まったんです。 ストラットはどうしてもジオメトリーの自由度が制限されているので、ジオメトリーをキチっと狙い通りに決められるダブルウィッシュボーンがいいと考えていたんですが、追浜の中央研究所では前々からマルチリンクの研究を進めていた様で、そこからシャシー設計部に『このマルチリンクはどうか』と提案があった様です。」
これでサスペンションも全く新しくなり、ボディーも軽量コンパクトなものに変わり、エンジンも更に煮詰められてSKYLINEのコンセプトが揃い、R32に本格的な開発がスタートする事になる。
「R30とR31時代はSKYLINEの開発から離れていましたが、私自身、もともとSKYLINEがやりたくてプリンスに入社した位ですから愛着は人一倍ありましたし、担当していなくてもその動向はいつも気になっていました。 外部の人の評価も耳に入って来て、批判的な意見も数多くありましたが、やっぱりSKYLINEは分かりやすくて、作った側がとやかく説明しなくても、誰もがすぐにその高性能を分かってくれる様なクルマにしなければ、と感じていましたから。」
その901活動の一番のアウトプットとなったのがR32 GT-Rで、卒業試験としてニュルブルクリンクに持ち込んで走らせて最後の仕様を決めたというが、SKYLINEはイコールGT-Rとはならない。
FRの2リットルのSKYLINEも、SKYLINEらしさという点ではGT-Rに負けていないはずだ。
「GT-RはR32 SKYLINEの象徴ではありましたが、やはりメイン車種はFRのGTS-tのタイプMですね。 R32のラインナップは、GT-Rは別格としてまず4気筒のGXi、そして6気筒シングルカムのGTE、ツインカムのノンターボのGTS、そしてツインカムターボのGTS-tとしていました。 R31時代はワゴンまで含めて50車種あったバリエーションを半分以下に絞ったんですが、今思うとまだ多かったかな、という気もします。 ノンターボのGTSにはタイプS、ターボのGTS-tにはタイプMという上級グレードを置いたんですが、今考えるとGTSやGTS-tはいらなかったかも知れませんね。」
タイプMは16インチアルミホイールなどを装備し、215psで4ドアセダンが2,385,000円とリーズナブル。
そしてNAのタイプSはタイヤは15インチとなるがアルミホイールを履いて2ドアクーペで2,186,000円。
こういうFRが欲しいという人は今でも少なくないだろうが、軽くて速いという点においてはGT-Rよりもむしろ魅力的かも知れない。
「タイプMを頂点とするFR SKYLINEも走り味はGT-Rと変わりませんし、かえって回頭性や機敏な走りという点ではGTS-tタイプMのほうが優れていた部分もあるはずです。 ドリフトも簡単に出来ますしね。 勿論絶対性能はGT-Rのほうが上ですが、タイプMのほうが面白いクルマだったんじゃないですか。」
あれだけの性能を与えられて4,450,000円というGT-Rは確かにお買い得だったのかも知れないが、現実的に考えると誰もが買えるクルマではない。
伊藤 修令 氏がSKYLINEのコンセプトとして重要視した『走って楽しいセダン』という意味では、タイプMのほうがぴったりハマるともいえるだろう。
「部品点数が増えてクルマが重くなり、レースではトラブルが出やすい4WDは、私はあまり好まなかったんです。 R31の時代にも機械式センターデフを持つ4WDの試作車を作ってみたんですが、ドライ路面での限界走行域で問題が多くて実現しませんでした。 ただ、当時のグループAレースでは、タイヤの幅が制限されていた事もあって、FRではチューニングエンジンのパワーをリヤタイヤだけで路面に伝える事が出来ず、長谷見選手でさえ『コーナーではアクセルを全開に出来ないよ』という状態で、グループAに勝つには4WDしかないかな、と考える様になりました。 より強大なパワーを有効に使うには前輪にも駆動を伝える必要があったんです。 そのとき、中央研究所で開発していたのがE-TSで、乗ってみるとFR感覚で走る事が可能で、市販車にもフィードバック出来ると考えてGT-Rに採用した訳です。 でも、4WDとはいってもあくまでも『FR的に走れる』事が条件でしたから、そういう意味でもSKYLINEの本来の姿はFRだと、今でも思っています。」
ちょっと話は外れるが、R32まで根強く残っていた4気筒車についても伊藤 修令 氏は面白いエピソードを聞かせてくれた。
「4気筒車はもう無くしてもいいだろうという意見も少なくなかったんですが、私は残す事を強く主張したんですよ。 SKYLINEは6気筒の2リットルが基本ではありますが、4気筒車のユーザーも決して少なくないんです。 それをメーカーの都合で切ってしまっていいのだろうか、と思いましたし、4気筒のSKYLINEも継続させていく事が必要だと考えたんですね。 バリエーションを増やすとコストがかかりますし、それほど売れないとも思っていましたが、シャシーを6気筒車と共有にしたり、わざわざ実験車は作らずに6気筒車で得たデータを活用して原価を下げるなどの方策をして、なんとか残す事が出来たんです。」
R31まで4気筒車はリアアクスルがリジットになるなど区別される部分もあったが、伊藤 修令 氏がいう様にR32では4気筒車にも6気筒車と同じ4輪マルチリンクが与えられた。
GXi用のCA18iは91psしかなかったが、ボディーと足に関しては十分SKYLINEの良さを味わう事が出来た訳だ。
それともう一つ、GT-Rと同じE-TSを備えたGTS-4というクルマもあったが・・・・・・。
「GTS-4はGT-Rのデチューン版という訳ではなく、GTS-tのオールウェザー版という位置付けで作りました。 エンジンは4輪を駆動させる力が必要な事もあってターボにしましたが、タイプMの様な味付けにはしませんでした。」
GT-Rが頂点に立ち、中堅をしっかりしたタイプMが固めたR32はユーザーにも受け入れられ、既にスポーティーカー不振がささやかれ始めていたにも関わらず、見事に販売台数の下落をストップさせる。
残念ながら、それを長続きさせる事は出来なかったが、ミニバンなどRV指向が強まる中での健闘ぶりは十分評価していいだろう。
現在、伊藤 修令 氏は最終型(1995年式)のR32 GT-Rを自ら所有しているが、このクルマを手放す気は無く「孫が免許を取って乗るまで置いておきたい」と嬉しそうに語ってくれた。
そういえば、櫻井 眞一郎 氏も、S&Sでボディー補強などを施した2リットルのR32を愛車にしているが、自分達が作ったクルマだからという訳ではない。
R32はSKYLINEの原点というだけでなく、何かクルマの原点を感じさせる様な魅力を持っている。 (2007年9月1日)
〜〜〜 901活動の中のSKYLINEより 〜〜〜
「昭和50年代の後半でしたか、日産自動車のシェアが目に見えて落ちてきて、業績も悪化した時期があったんです。 同じ様にSKYLINEの販売台数も落ちてきて、これはどうにかしなきゃならんな、という状況になってしまった訳です。」
昭和50年代後半というとNISSAN SKYLINEは6代目(R30型)の時代だが、日産自動車初のD.O.H.C.ターボエンジン(FJ20ET)の投入など話題は少なくなかったものの、販売台数は落ちている。
そして次のNISSAN SKYLINE、7代目(R31型)も待望の6気筒D.O.H.C.ターボエンジンを搭載しながら、評判は今一つだった。
8代目「NISSAN SKYLINE」 開発主管 伊藤 修令 氏
マルチリンク式サスペンション リヤ
マルチリンク式サスペンション フロント
NISSAN SKYLINE GTS-t Type-M (HCR32型)
NISSAN SKYLINE GTS-t Type-M (HCR32型)
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