取材車両 VY30-217124
入庫日 2005年12月13日
走行距離 182856km
今回のユーザーからの修理依頼内容は、駐車場に油脂が漏れた形跡が有り、ガソリンスタンドで見てもらった所、パワーステアリングフルード(PSF)が漏れてリザーバータンク内のレベルが低下していると言うもの。
ガソリンスタンドで指摘された様に、確かにPSFのリザーバータンク内のレベルがかなり低下している。
早速車両を預かり、リフトアップして車両を下側から確認してみます。
ステアリングギヤボックスのセクタシャフトシールからPSFがかなりの量 漏れている様です。
リザーバータンク内のPSFレベルを確認します
シャシフレームも油脂でかなり濡れています
セクタシャフトシールからPSFが漏れている様です
リビルト部品を用意しました
ピットマンアームとリンケージを分離します
キャッスルナットが外れました
ボールジョイントリムーバーを使用します
ピットマンアームとリンケージが分離しました
診断結果を受けて、ステアリングギヤボックスのリビルト部品を用意し、交換する事にいたしました。
車両が直進状態になっている事を確認します。
まず、ステアリングギヤボックスに取り付けられているピットマンアームとステアリングリンケージを分離します。
ステアリングリンケージのボールジョイントに取り付けられている割りピンを外し、キャッスルナットを取り外します。
ボールジョイントリムーバーを使用し、連結部を分離します。
ギヤボックスとロアジョイントを分離します
接続部の取り付けボルトを外します
ボルトが外れました
PSホースブラケットを取り外します
ギヤボックスとPSホース連結部を緩めておきます
ステアリングギヤボックス上部に取り付けられているパワーステアリングホースのブラケットを取り外します。
この後に再び車両をリフトアップし、パワーステアリングギヤボックスとパワーステアリングホースを接続させておりますアイボルト2本を少し緩めておきます。
大きく緩めてしまうとPSFが下側へ流れ出て来てしまい、作業の妨げとなりますので、軽く緩めておく程度にしておきます。
いよいよパワーステアリングギヤボックス本体を取り外します。
シャシフレーム内側からナット4個で締め付けられておりますので、このナット4個を取り外します。
シャシフレーム外側からボルトが2本 帯金状のスチール材に取り付けられている形状で2組み挿入されておりますので引き抜きます。
これでパワーステアリングギヤボックスは少しフリーな状態となりましたので、手で少し移動させ、先程少しだけ緩めておきましたパワーステアリングホースを接続しておりますアイボルト2本を、取り付けられておりますパッキン4枚と共に取り外します。
この時には、PSFが大量に出て来ますので、トレー等で受ける準備を行ってからアイボルトを取り外す様にします。
ステアリングギヤボックスとステアリングロアジョイントを接続しておりましたボルトは、先程既に取り外しておりますが、この部位のスプラインは締め付けられる様に圧着しており、なかなか手で引っ張るだけでは抜ける事は有りません。
従って、バー等の工具を使用し、テコの原理を利用しながら少しずつ力を加えてスプライン勘合部を抜いて行きます。
このスプライン勘合部が抜けますと、パワーステアリングギヤボックスが一気に落下して来る場合が有りますので、出来れば補助作業員にパワーステアリングギヤボックスを手で支えて貰いながら作業を進める事をお奨めいたします。
また、バー等の工具を使用する際には、当該部品及び周辺の部品等に傷や損傷等を与えない様に注意する事が必要です。
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シャシフレーム内側からナットで・・・
シャシフレーム外側からボルトで取り付けられています
取り付けボルトとナット
PSホースを取り外します
取り外したアイボルトとパッキン
車両からPSギヤボックスが外れました
取り外したギヤボックス(左側)とリビルト部品(右側)
ピットマンアームを取り外します
PSホースブラケットも取り外します
取り外した付属品
リビルト部品も直進状態にします
ピットマンアームを取り付けました
PSホースブラケットを取り付けました
取り外しましたパワーステアリングギヤボックスの直進状態が保たれているのを確認しピットマンアームを取り外します。
取り外したパワーステアリングギヤボックスとピットマンアームに合いマークを付けておくと、ピットマンアームを取り外した後で役立つ事も多いです。
ピットマンアーム取り付けナットを取り外し、ピットマンアームにプーラー等を使用し、ハンマー等で衝撃を与えながらスプライン勘合しておりますパワーステアリングギヤボックスのセクターシャフトとピットマンアームを分離します。
非常に硬く分離し難いですが、過熱して取り外しますとピットマンアームを新品に交換しなければならない事となりますので、加熱する行為は避ける様にします。
用意しておりますリビルト品のパワーステアリングギヤボックスも直進状態にしておきます。
左右に一杯切った所をマーキングし、その中間点が直進状態の位置となります。
この状態で、取り外しましたピットマンアームを、取り外しましたパワーステアリングギヤボックスに取り付けられていた角度位置に取り付けます。
また、パワーステアリングホースブラケットも組み替えておきます。
ステアリングロアジョイントを取り外します
インストルメントロアカバーを外します
室内側からボルトを抑え、エンジンルーム側からナットを外します
ロアジョイントが外れました
パワーステアリングギヤボックスをこの状態から取り付けて行っても良いのですが、パワーステアリングギヤボックスとステアリングロアジョイントのスプライン勘合箇所が余りにも固く、外す時に大変だった為、車両側のコラムシャフトからこのステアリングロアジョイントを一旦取り外し、先にパワーステアリングギヤボックスに取り付けてから、再度車両側のコラムシャフトに取り付ける方法を選択いたしました。
ステアリングロアジョイントを取り外す際には、エンジンルーム内からだけでは取り外し作業が出来ない事から、室内のインストルメントロアパネルを取り外し、ステアリングコラムシャフトを確認できる状態迄にしてから、ステアリングシャフトジョイントプレートとステアリングロアジョイントを結合させておりますボルトを室内側から押さえ、ナットをエンジンルーム側から外す作業といたしました。
これにより外れましたステアリングロアジョイントを直進状態を考慮し、取り付けの向きに注意しながらパワーステアリングギヤボックスに取り付けます。
やはり、かなり硬く、ステアリングロアジョイントを車両側から一旦取り外して作業をした方が良かった事を確認出来ました。
ロアジョイントを取り付けました
ステアリングコラムシャフトに接続します
PSホースを取り付けて行きます
パワーステアリングギヤボックスを車両に取り付けて行きます。
ステアリングシャフトジョイントプレートにステアリングロアジョイントを取り付けます。
車両をリフトアップし、パワーステアリングホースを2本取り付けます。
この時、パッキンは新品に交換する事を推奨いたします。
アイボルトが挿入出来ましたら、軽く工具で締めておきます。
PSホースを取り付けました
ギヤボックスを車両に取り付けました
パワーステアリングギヤボックスを車両に取り付けます。
続いてパワーステアリングギヤボックスに取り付けられているピットマンアームに、ステアリングリンケージを接続しキャッスルナットで固定します。
この後、忘れない様に割りピンを挿入しておきます。
エンジンルーム側から、パワーステアリングギヤボックス上部に取り付けられているブラケットに、パワーステアリングホースを取り付けます。
先程仮締め状態としておりましたパワーステアリングホースを2本 本締めします。
ピットマンアームとリンケージを接続します
PSホースをブラケットでギヤボックスに取り付けます
室内側を元通りに組み付けます
室内側の取り外しておりました部品を、元通りに組み付けて行きます。
ダストカバーが兼用になっている部品も有りますので、ボディーとの間に隙間等が出来ない様に注意しながら組み付けて行きます。
もし、若干でも隙間が出来ていると、走行時の騒音やほこり等の異物の車内への侵入、雨天時等には水が車内へ浸入して来る事も有りますので、慎重に組み付けて行く事が大切です。
また、ステアリングコラムシャフトと接触する部分には特に注意を払い取り付けます。
万が一、走行中にステアリングコラムシャフト回転時に当該部品が引っ掛かりますと、ステアリング操作不能となり事故等の危険性も有ります。
ブレーキペダル周辺の部品もブレーキ操作時にブレーキペダルに当該部品が引っ掛かりますと、ブレーキング時にブレーキペダルが踏めない等の事態が発生し、事故等に繋がる危険性も有ります。
室内側の部品が元通りに組み付けられましたら、PSFが相当量漏れて濡れていますので、パーツクリーナー等を使用し綺麗に洗浄します。
PSFを注入します
リザーバータンク内に注入します
手でロードホイールを右側へ一杯切って・・・
左側へも一杯切ります
エアブリーダーからエアが出ないか確認します
レベルゲージでコールドレベル内に合わせます
リザーバータンクからPSFを注入します。
リザーバータンク内に一杯PSFを入れてしまうと、パワーステアリング配管内のエア抜きをする時に溢れて出てしまいますので、少な目に入れておきます。
今回使用しましたリビルト部品のパワーステアリングギヤボックスは、予めPSFが封入してありエア抜きも出来ている状態で手元に届きましたので、パワーステアリングギヤボックス本体内のエア抜きは特にしておりません。
ただし、パワーステアリングギヤボックス内にPSFが封入させていない物や、エア噛みを起こしている場合には、次の手順でパワーステアリングギヤボックス内のエア抜きを行います。
車両をリフトアップし、エンジンは停止したままで、手でロードホイールを右側へ一杯切り、続いて左側へも一杯切ります。
この作業を50往復以上させてエアを抜きます。
パワーステアリングギヤボックス内のエアが抜けましたら、エンジンを始動してリザーバータンク内にPSFを注入しながらパワーステアリング配管内のエアを完全に抜きます。
パワーステアリングギヤボックスに取り付けられているエアブリーダーを少し緩め、エアが出ない事を確認します。
エアが出て来る様であれば、そのままこのエアブリーダーからエアを抜きます。
パワーステアリングギヤボックスのエアブリーダーからエアが出て来ない事が確認出来ましたら、リザーバータンク内のPSFの量に注意しながら、エンジンを始動したままでステアリングホイールを左右に切ります。
途中で引っ掛かったりせず、スムーズなハンドリングとなりましたら、リザーバータンク内のPSFにエア噛み時に発生する白濁が無く、本来のPSFの色である事を確認します。
最終的なリザーバータンク内のPSFレベルは、レベルゲージのコールドレベル内に調整します。
エンジンが完全な暖気状態となっていても、PSFは少し暖かい位にしか温度は上昇しておらず、この状態でホットレベルに合わせてしまうと、PSFの温度が上昇した時にリザーバータンクからPSFが溢れ出て来る事が有りますので注意が必要です。
また、PSFは必ず指定の物を使用する事を推奨いたします。
粘度指数の関係等で、ステアリング操舵力の変化が発生する事等や、オイルシールの材質にアンマッチの油脂を使用した場合には、大幅なPSFの漏れが発生する場合も有りますので注意が必要です。
PSFを注入し、完全に循環する様になったら、PSFを抜き取り新しいPSFを注入し、必要であれば再度パワーステアリング配管内のエア抜きを行い、パワーステアリング配管内の洗浄を行う様にお奨めいたします。
最後に、PSFの漏れが無い事を確認し、ステアリングホイールの操作具合、必要であればブレーキペダルの踏み代も確認しておきます。
その後、試運転を行い、ステアリングホイールの直進状態を確認します。
直進状態を確実に出してから、パワーステアリングギヤボックスの交換作業を進めた場合には、ステアリングホイールの直進状態は保たれていますが、万が一狂ってしまっている場合には、ステアリングホイールをコラムシャフトから取り外し、直進状態となる様に取り付け直す必要が有ります。