PS高圧ホース交換

取材車両 RNU12-012693
入庫日   2005年12月27日
走行距離 113801km

今回のユーザーからの修理依頼内容は、駐車場に車両を停めると、どこからか油脂が漏れているらしく駐車場の床面に油脂が付着している。 この油脂の漏れている箇所を確認して修理してほしいと言うもの。

漏れているのはPSF・・・?

PS高圧ホースから滲んで漏れています

PS高圧ホースの下側はPSFが垂れています

ユーザーから車両を預かり、早速リフトアップして油脂の漏れている箇所を確認します。

どうやらパワーステアリング装置のパワーステアリングポンプからパワーステアリングギヤボックスへパワーステアリングフルード(PSF)を送る為の高圧ホースからPSFが漏れている様だ。

PS高圧ホース上部では、若干の滲みが見られる位だが、下部ではPSFが垂れて落ちそうになっています。

以上の診断結果を受け、PS高圧ホースを交換する事になりました。

PS高圧ホースの下側を取り付けているアイボルトを外します

PS高圧ホースには配線が1本束線バンドで取り付けられています

PS高圧ホースの上側を取り付けているアイボルトを外します

この車両の場合、PS高圧ホースは両端がアイボルトに取り付けられており、中央付近に配線が1本束線バンドで取り付けられています。

配線を取り付ける為の束線バンドは、エンジン発生熱等で硬化が進んでおり、今回交換する事にいたしましたので、ニッパーにより切断しました。

再度取り付ける際には、新しい束線バンドに交換し取り付ける様にします。

硬化の進んだ束線バンドを再使用すると、使用過程において破断する等のトラブルが発生する場合も有ります。

取り外したPS高圧ホース(上側)と新品(下側)

アイボルト(左側)、取り外したパッキン(中央)、新品パッキン(右側)

手でロードホイールを右へ・・・

再び手でロードホイールを左へ・・・

レベルゲージはリザーバータンクキャップに取り付けられています

PSFを補充します

PSFリザーバータンク内にPSFを注入します

PS高圧ホースの上側のアイボルトを取り付けます

PS高圧ホースの下側のアイボルトを取り付けます

PS高圧ホースを取り外したホースと新品のホースを比べてみます。

取り外したホースは、全体的にPSFが滲んで付着しており、車両に取り付けられていた形状が残っています。

また、アイボルトとパッキンも確認し、パッキンは新しい物に交換する事を推奨いたします。

新品のPS高圧ホースを取り付けて行きますが、最初にパワーステアリングポンプのPS高圧ホース取り付け部、パワーステアリングギヤボックスのPS高圧ホース取り付け部に以上が無い事を確認します。
この箇所に傷等が付いている場合には、PSFが漏れる原因にもなりますので修正しておく必要が有ります。

PS高圧ホースの取り付けは、下側から取り付けます。

後からPS高圧ホースの下側を取り付けた場合、手が入り難い上にPS高圧ホースの取り付け角度を勘案しながら作業する事は非常に難しい為、先にPS高圧ホースの下側から取り付ける様にします。

続いて、PS高圧ホースの上側を取り付けます。

ここ迄の作業が完了しましたら、パーツクリーナー等で毀れたPSFを綺麗に洗浄しておきます。

PS高圧ホースに取り付けられておりました配線を新しく準備しました束線バンドで取り付けます。


PSFリザーバータンク内に新しいPSFを注入します。

PS配管内のエアを抜く際、PSFが噴き出す事が有りますので、少な目に注入しておきます。

この状態で、フロントロードホイールを手で持ち、右へ一杯切り、続いて左へ一杯切り、この往復動作を50往復以上くり返し、PS配管内のエアを抜きます。

PSFリザーバータンク内のPSFレベルを通常レベルにし、エンジンを始動してステアリングホイールを左右に動かし、PS配管内のエアを完全に抜きます。

PSFが完全に抜け切った状態でエンジンを始動すると、パワーステアリングポンプが焼き付く原因になります。

完全に焼き付かなくても、金属粉が大幅に出てしまい、この金属粉がPS配管内を循環すると弊害が発生してしまいますので注意が必要です。

フロントロードホイールを手で左右に動かしながら行ったPS配管内のエア抜きが不完全な場合には、エンジンを始動後にステアリングホイールを回しても、ハンドルが切れない状態となりますので、改めてフロントロードホイールを手で左右に動かしながらのエア抜きを行う様にします。

ある程度PS配管内のエアが抜けておりましたら、エンジン始動後ステアリングホイールを回すと自動的にエアが抜けて来ますので、PSFリザーバータンク内のPSFの量に注意しておいて下さい。

PS配管内のエアが完全に抜けましたら、PSFリザーバータンク内のPSFが、エアが噛み込んでいました白濁色から純粋なPSF色に変わります。

また、ステアリングホイールを左右に回した時に、引っ掛かり等が無くスムーズにハンドルが切れる状態となります。

PSF配管内のエアが完全に抜けましたら、今回交換しましたPS高圧ホースの取り付け部を再度確認します。

また当該箇所、及び他の箇所からもPSFが漏れていない事を確認します。

毀れたPSFを洗浄する場合にはパーツクリーナー等を使用しますが、エンジン停止直後にパーツクリーナー等を使用すると引火する可能性が有りますので、周辺の部品の温度が十分に低下した事を確認した上で使用する事を推奨いたします。

PSFのリザーバータンク内の量ですが、冷間時ではレベルゲージの下側(ミニマムレベル)に合わせておきます。

冷間時にレベルゲージの上側(マキシマムレベル)に合わせておきますと、PSFが温間時となった時にリザーバータンクから溢れ出る可能性が有ります。

なお、PSFは必ず指定の製品を使用する事を推奨いたします。

粘度指数の関係等で、ステアリング操舵力の変化が発生する事等や、オイルシールの材質にアンマッチの油脂を使用した場合には、大幅なPSFの漏れが発生する場合も有りますので注意が必要です。

PSFを注入し、完全に循環する様になったら、PSFを抜き取り新しいPSFを注入し、必要であれば再度パワーステアリング配管内のエア抜きを行い、パワーステアリング配管内の洗浄を行う様にお奨めいたします。