取材車両 S15-500990
入庫日 2007年01月13日
走行距離 68066km
リザーバータンクのレベルが下がっています
エンドレス製 Type R ブレーキパッドを用意しました
ユーザーから、サイドブレーキを戻しているのにメーター内のブレーキ警告等が消灯しないと連絡が入った。
早速、現車を入庫していただき、点検する事に・・・。
点検の結果、サイドブレーキに異常は無く、ブレーキマスターシリンダーリザーバータンクのブレーキフルードレベルが低下している事が解った。
ブレーキパッドが摩耗しているようだ。
念の為に、ブレーキフルードの漏れを点検したが、一切の漏れは無く正常な状態だった。
ブレーキパッドは、約40%程残っているが、ユーザーの希望により交換する事になりました。
ユーザーは、エンドレス製ブレーキパッドの取り付けを希望されましたので準備し交換作業に入りました。
フロント : エンドレス EP236TR
リヤ : エンドレス EP064TR
フロントディスクブレーキ
まずは、フロントディスクブレーキのディスクパッドから交換して行きます。
ディスクキャリパーとトルクメンバーを固定しているボルト 2本を取り外します。
取り外した取り付けボルト
取り付けボルトを外します
フックでディスクキャリパーを引っ掛けておきます
ボルト 2本が外せましたら、ディスクキャリパーをハブセンターから遠ざかる方向へ移動させ、取り外します。
この後、ディスクキャリパーを手から離してしまうと、ディスクキャリパーがブレーキホースに支えられる形となり、ブレーキホース等に大きな負担が掛かってしまう為、フック等を予め用意しておきストラット&ナックル連結部等に引っ掛ける様にしておきます。
この時には、ブレーキホースが極端に捻れてしまわない様に注意しておく事が必要です。
トルクメンバーに嵌め込まれているディスクパッドを取り外します。
予め用意しておりましたディスクパッドが、取り外したディスクパッドと同一形状かを確認しておきます。
ディスクパッドが同一かを確認中
音止め用シムを付け替えます
取り外した古いディスクパッドの基台側に取り付けられている音止め用シムを取り外し清掃します。
この音止め用シムが摩耗、損傷等している場合には、新品の音止め用シムを用意し交換します。
清掃が終わりました音止め用シムを新品のディスクパッドに装着します。
スライドピンを抜き取ります
清掃後、給油しました
ピストンツールを使用しピストンを押し込みます
ピストンが奥まで押し込めました
トルクメンバーに取り付けられているスライドピンを抜き取り清掃します。
スライドピンダストブーツに亀裂、損傷等が無い事を確認しておきます。
トルクメンバーのスライドピン挿入部も清掃しておきます。
スライドピンにモリブデングリース等を塗布し、トルクメンバーに挿入します。
スライドピンが滑らかに動く事を確認します。
ディスクキャリパーにピストンを、ディスクキャリパーピストンツールを使用し、奥まで押し込みます。
この時に、ピストンシール部からのブレーキフルード漏れが無く、スムーズにピストンが押し戻せる事を確認しておきます。
また、ダストブーツに亀裂、損傷、捻れ等が無い事も確認しておきます。
トルクメンバーにディスクパッドを取り付けました
ディスクパッドに取り付けた音止め用シムのディスクキャリパーが接触する部分にパッドグリースを薄く塗布します。
ディスクパッドのトルクメンバー接触部分にもパッドグリースを薄く塗布しておきます。
パッドグリースの塗布が出来ましたら、トルクメンバーにディスクパッドを取り付けます。
ディスクパッドの取り付けた音止め用シム等がズレないように注意しながら、トルクメンバーにディスクキャリパーを取り付けます。
この時、ブレーキホースに捻れが発生していない事を確認しておきます。
以上で、フロントディスクブレーキのディスクパッド交換作業は完了です。
リヤディスクブレーキ(CL11H型 )
取り付けボルトを外します
取り外した取り付けボルト
ディスクキャリパーが外れました
S.S.T.を用意しました
サイドブレーキ一体型ディスクキャリパーツール
ピストンの形状を確認します
ピストンの形状に合わせたアタッチメントを用意し・・・
ディスクキャリパーに装着します
ディスクパッドが同一かを確認中
ディスクパッドの基台の突起を確認し・・・
ピストンの凹部とディスクパッドの凸部が合う様にします
フロントディスクパッドの交換作業が完了しました
フロントディスクパッドの交換作業が完了しました
サイドブレーキレバーの引き代を調整します
続いて、リヤディスクブレーキ(CL11H型)のディスクパッドから交換して行きます。
ディスクキャリパーとトルクメンバーを固定しているボルト 2本を取り外します。
ボルト 2本が外せましたら、ディスクキャリパーをハブセンターから遠ざかる方向へ移動させ、取り外します。
フロントディスクキャリパーとは違い、サイドブレーキワイヤーが取り付けられている為、ディスクキャリパーを手から離しても、ディスクキャリパーがブレーキホースで支えられる形とはならないので、フック等を予め用意する必要は無く、そのままの状態にしておいても影響はありません。
ただし、この時には、サイドブレーキワイヤー、ブレーキホースが極端に捻れてしまわない様に注意しておく事が必要です。
トルクメンバーに取り付けられているスライドピンを抜き取り清掃します。
スライドピンダストブーツに亀裂、損傷等が無い事を確認しておきます。
トルクメンバーのスライドピン挿入部も清掃しておきます。
スライドピンにモリブデングリース等を塗布し、トルクメンバーに挿入します。
スライドピンが滑らかに動く事を確認します。
リヤディスクブレーキは、サイドブレーキ一体型ディスクブレーキで、通常のディスクキャリパーピストンツールではピストンを奥へ押し込む事は出来ません。
簡易的な方法として、ラジオペンチ等を使用し、回転させながら押し込む方法と取る場合もありますが、今回はJTC製S.S.T.を用意し使用する事にしました。
ディスクキャリパーのピストン形状を確認します。
ピストンに設けられている凹部の形状にに合わせ、アタッチメントを選択します。
このアタッチメントをS.S.T.に取り付け、ディスクキャリパーに装着し、固定します。
右回転(時計回り)方向にS.S.T.のハンドルを回転させると、自動的に奥へ押し込む様にも作動します。
このS.S.T.を使用すると、安全、確実、簡単に作業を行う事が出来ます。
この時に、ピストンシール部からのブレーキフルード漏れが無く、スムーズにピストンが押し戻せる事を確認しておきます。
また、ダストブーツに亀裂、損傷、捻れ等が無い事も確認しておきます。
トルクメンバーに嵌め込まれているディスクパッドを取り外します。
予め用意しておりましたディスクパッドが、取り外したディスクパッドと同一形状かを確認しておきます。
ディスクパッドのディスクキャリパーが接触する部分、及びトルクメンバー接触部分にパッドグリースを薄く塗布します。
パッドグリースの塗布が出来ましたら、トルクメンバーにディスクパッドを取り付けます。
ディスクキャリパーのピストンの凹部が、ディスクキャリパーをトルクメンバーの取り付けた際、ディスクパッドの基台の突部と、ディスクキャリパーのピストンの凹部が嵌まり込む位置にあるかどうかを確認しておきます。
ディスクキャリパーを取り付けます。
ブレーキペダルを数回踏み込み、踏み代に変化が無くなる事を確認します。
ブレーキペダルを踏み込んだままエンジンを始動し、マスターバックの作動状況を確認します。
エンジンを運転し、ベレーキペダルを踏み込んだままの状態で、ブレーキ部品各部からブレーキフルードが漏れていない事を確認しておきます。
特に、今回 部品を取り外した部位に関しては、重点的にブレーキフルードの漏れを確認します。
エンジンを停止させ、サイドブレーキレバーの引き代を調整します。
数回サイドブレーキレバーを引き、サイドブレーキレバーの引き代に変化が無くなる事を確認します。
サイドブレーキレバーを引き、サイドブレーキレバーの前部下側から10m/mのソケットレンチを挿入し、右回転(時計回り)方向に回して行き、サイドブレーキレバーの引き代が6〜8ノッチとなる様に調整します。
ブレーキマスターシリンダーのリザイバータンクのブレーキフルードレベルをMAXレベルとします。
この後、ブレーキテスターで4輪のブレーキ制動力を測定し、サイドブレーキの効き具合も測定します。
またサイドブレーキ使用時には、1/5の勾配でもサイドブレーキのみで停止を保持する事が出来るかを点検する事も必要です。
今回 実施しました作業は、道路運送車両法により、国土交通省各地方運輸局長が認可した認証工場で作業を行い、整備主任者が完成検査を実施しなければならないと規定された作業に該当します。
慣れてしまえば、比較的簡単に行える作業ですが、ブレーキが効かなくなると事故等を起こす可能性が高く、重要保安部品に該当しています。
安易な考えで作業には取り掛からず、充分に知識と経験を踏まえた上で作業を実施する様にする事が大切です。
走行直後に当該作業を行う場合には、ブレーキ各部品が熱くなっていますので、充分に注意が必要です。
ディスクキャリパーのピストンを奥へ押し戻す際、ブレーキマスターシリンダーのリザーバータンクのブレーキフルードレベルが上昇し、溢れ出る事がありますので、この様になる前に吸引する等でブレーキフルードレベルを一定以上とならないように注意する事が大切です。
また、ブレーキブルードは、塗装面当を侵す成分が含有されていますので、ボディー等に付着させない様に十分な注意が必要です。
今回の作業では、ディスクローターの交換、研磨等は行っておりません。
この様な場合には、ディスクローターの形状に新しいディスクパッドが馴染むまで、ブレーキの効きが若干弱くなっています。
新しいブレーキパッドが、ディスクローターの形状に馴染むまでは、この事を予め理解し特に安全運転に心掛けるようにします。
ディスクローターの形状が歪、あるいは偏摩耗等を起こしている場合には研磨等の修正、あるいは新品に交換する事を推奨します。
酷く形状が歪、あるいは偏摩耗しているディスクローターを継続して使用し、新品のディスクパッドの交換する事は、ブレーキの制動力が設計通りに得られず大変に危険です。
ディスクパッドの基台側に取り付ける音止め用シムは、特に取り付ける必要はありませんが、音止め用シムを取り付けずにディスクパッドを取り付けた場合には、ブレーキ作動時を中心に異音が発生する事が多いようです。
また、ディスクパッド等に塗布するパッドグリースも、特に塗布する必要はありませんが、パッドグリースを塗布せずにディスクパッドを取り付けた場合には、ブレーキ作動時を中心に異音が発生する事が多いようです。
パッドグリースをディスクパッド等に塗布する際、多く塗布し過ぎると余分なパッドグリースがディスクローター等に飛散等し、ブレーキ制動力に大きく影響を与える場合があるので注意が必要となります。
サイドブレーキ一体型ディスクブレーキのピストンを奥まで押し戻す際、ピストンを回転させながら押し込みますが、この時にダストブーツが捻れてしまいます。
捻れて損傷しないように注意する事が必要です。
簡易的にラジオペンチ等を使用する事もある旨を記述しておりますが、ラジオペンチ等を使用し、ピストンを回転させながら押し込んだ場合、工具が滑り、作業者自身が傷害を負ったり、当該部品や車両等を損傷させる場合がありますので、やむを得ない場合を除き、極力S.S.T.を使用し安全な作業を行う様にする事も大切です。