メーター周辺から異音発生 修理

取材車両 VY30-217124
入庫日   2005年12月26日
走行距離 183897km

ユーザーからの依頼によると、右フロントホイール周辺から、車両の速度に同調する様な異音が発生しているので修理してほしいと言う。

早速、現車を試運転して異音の発生状況を確認します。

試運転の結果、スピードメーターケーブルからの異音か、スピードメーターからの異音の様だ。

ユーザーから車両を預かり、早速 分解して確認してみます。

コンビネーションメーターを取り外します

メーターフードは鉄板ビス3本で取り付けられています

メーターフードが外れました

コンビネーションメーターを取り外します。

チルトステアリング機構を利用してステアリングコラムシャフトを一番下迄下げます。

コンビネーションメーターの周囲に取り付けられておりますメーターフードを取り外します。

メーターフードは、上部の下側に鉄板ビス3本で取り付けられています。

この取り付けビス3本を外し、メーターフードを引き出し、スイッチ類に挿入されておりますコネクターを外します。

メーターフードが外れました。

コンビネーションメーターは、メーターフードを取り付けているビスと同等のビス4本で取り付けられています。

このビス4本を外し、コンビネーションメーターを少し手前に移動させます。

スピードメーターケーブルはダッショボード側に固定されていますので、特にコンビネーションメーターから取り外す作業を行わなくても自然に外れます。

コンビネーションメーターにはコネクターが3個取り付けられていますので取り外します。 この時、イグニッションキーは必ずOFFの状態にしておく必要が有ります。

コンビネーションメーターが車両から外れましたら、メーターカバーを取り外します。 メーターカバーは鉄板ビス4本と、メーターカバーと一体の爪でメーターケースに取り付けられています。

メーターカバーを外しますと、照明誘導板等も同時に外れますので、落下して破損等させない事が必要です。

メーターケース裏側から、スピードメーター取り付け様ビス2本を外し、スピードメーターを取り外します。

スピードメーターにはオドメーター、トリップメーターが取り付けてあり、トリップメーターをリセットする為のボタンが取り付けられていますので、破損等しない様に注意が必要です。

スピードメーターが外れましたら、裏返してドライブ&ドリブンギヤを確認します。

スピードメーターケーブルから直接回転を受ける電磁誘導コイルに噛み合わされている減速用ウォームギヤ、オドメーター、トリップメーターに回転を伝達する為のスキューギヤ、及びスパーギヤ。

どのギヤを見ても、給油されていたはずのグリースが無くなり、またギヤ自身にバリが出ており噛み合わせ部分に若干のガタが発生している様です。

これで、スピードメーター本体から異音が発生していた原因は解りました。

これから少し、このスピードメーター内部に組み込まれているギヤを修正して行きます。

まず、ギヤ自身に出来ておりますバリを、カッタナイフ、小型精密ヤスリ等で綺麗に修正をして行きます。

各ギヤ共に綺麗に修正が出来ましたら、パーツクリーナー等で当該ギヤを洗浄します。

この時に、スピードメーターの文字盤にパーツクリーナー等がかかりますと、変色等のトラブルが発生する場合が有りますので、十分に注意しながら作業を行う事が必要です。

各ギヤ共に綺麗に洗浄が出来ましたら、各ギヤにシリコングリースを塗布しておきます。

これで潤滑性能が確保出来るのと、若干のガタが有る為に発生する異音を低減させる事が出来ます。

スピードメーターをメーターハウジングに組み付け、コンビネーションメーターのユニット単体での組み立てを完成させておきます。

減速用ウォームギヤが摩耗しています

スキューギヤが摩耗しています

積算計用スパーギヤが摩耗しています

整形し、給油しました

整形し、給油しました
整形し、給油しました

PIT WORK RP-Cを使用しました

スピードメーターピニオンには1ケ所スリットが・・・

スピードメーターケーブルには1ケ所突起が・・・

スピードメーターピニオンとケーブルを分離しました

トランスミッション後部に取り付けられています

スピードメーターピニオンと接続されています

スピードメーターケーブルはエンジンルームへと入り・・・

右シャシフレーム沿いにフロアパネル下側へ・・・

ダッシュボード奥に固定されています

回転させながら、潤滑材を注入します

スピードメーターケーブルを確認します

次に、スピードメーターケーブルを確認します。

トランスミッションに取り付けられているスピードメーターピニオンからの回転信号をスピードメーターへ伝達する役割を担っています。

車両のフロアパネル下側からエンジンルーム内を通り、室内のダッシュボード迄通っており、緩やかにカーブさせているとは言え、理想の直線状態とはかけ離れたカーブが多く有ります。

このスピードメーターケーブルを回転させながら潤滑材を注入して行きます。

スピードメーターケーブルを回転させるには、フリーローラー上でエンジンを始動し、ドライブギヤを入れロードホイールを回転させれば可能です。

しかし、コンビネーションメーターを取り外したままイグニッションキーをACC、ONにする事はコネクター形状が外側に端子を設ける構造で有る事から、短絡等しない様にウェス、テープ等を巻き、絶縁状態を保たせる事が非常に大切です。

スピードメーターケーブルを回転させながら潤滑材を注入すると、結構な量を注入する事が出来ます。

これにより、内部の洗浄も出来、潤滑効果も得られる訳です。

その後、車両をリフトアップし、スピードメーターケーブルに外的な損傷箇所や、設計通りにスピードメーターケーブルが取り付けられており、急激なカーブを描く様な箇所が無い事を確認します。

また、トランスミッションにスピードメーターピニオンをケーブルの接続を外し、ピニオン側のスリット、ケーブル側の突起に異常が無いかを確認し、スピードメーターケーブルを手で回した時に引っ掛かりや異常が無い事を確認します。

異常が無ければ、スピードメーターケーブルをピニオンに確実に取り付け車両をリフトから降ろし、ダッショボードにコンビネーションメーターを取り付けます。

今回は、スピードメーターケーブルに注入する潤滑剤として、PIT WORKブランド 和光ケミカル製造のラスペネ(RP-C)を使用しました。

他のスプレー式潤滑材よりも浸透性に優れ、潤滑性能も大幅に高く長持ちする為 選択いたしました。

コンビネーションメーターを取り付けましたら、試運転を行い、スピードメーター、オドメーター、トリップメーター等の作動状態を確認します。

稀に
スピードメーターケーブルをスピードメーターの挿入状態が不確実となり、スピードメーターが動かない事も有りますので確認しておく必要が有ります。

スピードメーターが作動しない場合には、再度コンビネーションメーターを取り外し、取り付けをやり直す必要が有ります。

本来であれば、スピードメーター、メーターケーブルを交換する手段を選びますが、今回はユーザーからの依頼により潤滑材の注入等で様子を見る事となりました。

その後、様子を伺いました所、最初に入庫された時に訴えられていました異音も消えて静かになっている事が確認出来ました。

また、スピードメーター等の作動状態にも問題は無く、安価に修理が完了した事を喜んでおられました。