↑ 低圧配管接続口
取材車両 332-009094
入庫日 2008年04月04日
走行距離 20422km
以上の点検を終え、異常が見受けられなければエンジンを停止し、マニホールドゲージのホースをエアコンディショナーの配管等に設けられたサービスバルブから取り外します。
冷媒ガスと一緒にエアコンディショナー配管内を流れるコンプレッサーオイルの量を具体的に把握する為に、コンプレッサーオイルチェッカーを使用し確認致しました。
リキッドタンクを交換した為に若干少な目となっていると思われましたが、確認の結果 適切な量である事が判明しています。
もし、少な目と確認されれば、別途コンプレッサーオイルを補充する必要があります。
マニホールドゲージの低圧ゲージ、高圧ゲージのメーターの指針が、共にエアコンディショナー配管内が真空状態を示したままの状態である事を確認します。
フロンガス回収・再生機で回収しましたフロンガス(R-12)、もしくは当該車両に適合する代替えフロンガスをエアコンディショナー配管内に充填して行きます。
エンジンを始動しエアコンディショナーのコンプレッサーを作動させ、吹き出す風量を最大として、規定量の冷媒を、エアコンディショナー配管内に充填しました。
分解し、新たに組み付けたリキッドタンク、アダプター、エアコンディショナー配管等の締め付け度合い、取り付け等を再確認しておきます。
マニホールドゲージに接続されている冷媒ガス注入、真空引用ホースをエアコンディショナー配管用真空ポンプに接続し、エアコンディショナー配管内の真空引きを行います。
エアコンディショナー配管内の真空引きを約30分以上実施し、その後マニホールドゲージの低圧バルブ、高圧バルブを共に締め、約1時間以上放置しました。
約1時間以上過ぎた後、マニホールドゲージの低圧ゲージ、高圧ゲージを共に確認し、エアコンディショナー配管内が真空状態を保っている事を再確認しておきます。
懐かしいクルマが入庫して来ました。
”NISSAN CEDRIC (332型)”の入庫です。
整備の依頼事項は、エアコンディショナーを作動させた時、全く冷えないと言うもの。
早速に現車を確認すると、エアコンディショナーを作動させ、温度設定を最低温度値、風量を最大風量としても、風量は最大風量となるものの全く冷たさを感じる事が出来ず、返って暖かい風が出て来ている様です。
エアコンディショナー配管内に規定量の冷媒が充填出来ましたら、リキッドタンク上部に設けられているサイトグラスで冷媒ガスの流れを目視で確認します。
冷媒ガスの流れは勿論ですが、エアコンディショナー配管内を流れる異物等は無いか。
またエアコンディショナー コンプレッサーオイルの質(色)は適切か。
酸化物(錆)、金属粉、酸化したコンプレッサーオイル(褐色に変化している)等が見受けられた場合には、別途 修理、清掃等が必要となって来ます。
出口側の配管を調整し、リキッドタンクに合わせます
エアコンデシショナーの配管が、アダプター等を取り付けたリキッドタンクに確実にマッチングする様になりましたら、フレアナットをリキッドタンクに取り付けたアダプターに挿入し、締め付け固定します。
この時には、エアコンディショナーの配管を取り外した際と同様に、リキッドタンクのエアコンディショナー配管取り付け部に設けられております六角部にレンチを掛け、リキッドタンクが動いたり回ったりする事を防止しながら、エアコンディショナー配管に取り付けられておりますフレアナットをレンチで回し、固定する様にします。
リキッドタンク入り口側、出口側共に確実なマッチングを図り、確実に配管を締め付け固定します。
汎用バンドを使用しリキッドタンクを固定しました
リキッドタンクのエアコンディショナー配管取り付け部にOリングを取り付け、アダプターを取り付けました。
アダプター等を取り付けたリキッドタンクをエンジンルーム内に挿入し、リキッドタンク取り付け用汎用バンドを使用し、取り外したリキッドタンクが取り付けられておりましたボルト穴を利用し新しいリキッドタンクを取り付けます。
エンジンルーム内のエアコンデジショナー配管を長さ調整(配管固定位置変更等)、角度調整(曲げ伸ばし加工等)を施します。 エアコンデジショナー配管に巻きつけておりますテープ等を取り外し、アダプター等を取り付けたリキッドタンクとエアコンディショナー配管とが確実にマッチングする事を確認しておきます。
日産純正部品、その他のメーカーで同一形状のリキッドタンクを探してみましたが、既に何年も前より製造が中止されており残念ながら在庫を見つける事が出来ませんでした。
仕方がありませんので、少し改造を施しリキッドタンクを取り付ける事にしました。
不二工機社製 汎用リキッドタンク (製品番号 Z42KPSF-1)を使用し、アダプターを介し取り付ける事にします。
↓ Oリング
Oリングを取り付けます
リキッドタンクの配管接続部に・・・
用意した新品のリキッドタンクとアダプター等
↑ テーピング
リキッドタンクをエンジンルームから取り出します。
エアコンディショナー配管のリキッドタンクが接続されていた部分を、異物等が進入しない様にテープを巻き付ける等の処置を施しておきます。
リキッドタンクに接続されているエアコンディショナーの配管は緩めておく状態のままで、この段階では まだ取り外しません。
リキッドタンクを車体に取り付けているボルト3本を外します。
リキッドタンクが車体から外れた状態となりましたら、リキッドタンクに接続されているエアコンディショナー配管を、フレアナットを緩め入り口側、出口側共に完全に取り外します。
取り外したリキッドタンクと取り付けボルト
取り外したリキッドタンク取り付けボルト
← ボルト
← ボルト
↓ ボルト
リキッドタンクを取り外します。
リキッドタンクのエアコンディショナー配管結合部に設けられている六角部にレンチを掛け、リキッドタンクが動いたり回転しない様に押さえます。
この状態にした後、エアコンディショナー配管のリキッドタンク取り付け部に挿入されているフレアナットを緩めます。
リキッドタンク入り口側、出口側共に同様の方法でリキッドタンクに接続されているエアコンディショナー配管を緩めておきます。
リキッドタンク
これより、今回の故障の原因となったリキッドタンクの交換作業に入ります。
リキッドタンクを取り外す前に、エアコンディショナー配管内の冷媒ガス(フロンガス R-12)をフロンガス回収機で完全に抜き取りました。
エアコンディショナー配管内の冷媒ガスを完全に抜き取った後、リキッドタンクを取り外す様にします。
フロンガス回収・再生機
マニホールドゲージから延びる真空引き・冷媒ガス充填用ホース
キャップを外し、ホースを接続します
← 霜が付いている
← 霜が付いている
エンジンフードを開け、原因の探求を開始します。
エアコンディショナーのコンプレッサーを目視にて確認すると、真新しいコンプレッサーが取り付けられており最近どこかの整備工場等で交換されている様でした。
コンプレッサーを作動させ、冷媒の量、冷媒の流れ具合を確認する事にします。
エンジンをアイドリング状態のままエアコンディショナーのコンプレッサーを作動させ、風量を最大風量としていると、暫くして冷媒が流れる高圧配管が結露し霜が付き始めました。
今回の作業で使用しました不二工機社製 汎用リキッドタンク (製品番号 Z42KPSF-1)には、上部にプレッシャスイッチが取り付けられています。
NISSAN 332型車の場合には、エアコンディショナー配管にプレッシャースイッチが取り付けられており、このリキッドタンクに取り付けられているプレッシャースイッチは使用しませんので、配線は接続等せずに製品に取り付けられている状態のままとしました。
汎用のリキッドタンクを車両に取り付ける際、リキッドタンクが車体と接触し走行時の振動等により異音が発生する可能性があります。
この様な状態となる場合には、緩衝用ウレタンスポンジ等をリキッドタンクを車体との間に取り付ける様にします。
ただし、緩衝用ウレタンスポンジ等の耐熱性、取り付け位置等を純分に考慮し取り付けを行わないと、エンジン等が発する熱により、最悪の場合には発火する事が考えられます。
新しい汎用のリキッドタンクを取り付ける際、車両に取り付けられているエアコンディショナー配管を長さ調整(配管固定位置変更等)、角度調整(曲げ伸ばし加工等)を施しますが、この時には無理な力を掛け、エアコンディショナー配管等を損傷してしまわない様に十分に注意する事が必要です。
エアコンディショナーの冷媒ガスが流れている箇所の部品を交換する場合には、コンプレッサーオイルが当該部品を取り外す事で減量されてしまします。
従って、これらの部品を交換する場合には、必ずエアコンディショナーの冷媒ガスに含有されるコンプレッサーオイルの量を確認し、的確な量となる様に適宜補充する事が必要です。
今回の作業では、前回エアコンディショナー部品の整備、交換等を行った整備作業者が余分にコンプレッサーオイルを注入した事が考えられ、今回の作業でリキッドタンクを交換する事でコンプレッサーオイルの量が減量され、適切なコンプレッサーオイルの含有量となった事が考えられます。
また、エアコンディショナーのコンプレッサーを交換した場合には、必ずと言って良い程、エクスパンションバルブとリザーバータンクを同時に交換することを推奨致します。
折角に交換したエアコンディショナーのコンプレッサーが早期に故障してしまう事が十分に考えられます。
エアコンディショナー配管内に酸化物(錆)、金属粉等が混入している場合には、その発生源を取り除き、またエアコンディショナー構成部品、配管内を洗浄するか、洗浄が不可能な場合には、洗浄が不可能な部品を交換する必要性があります。
コンプレッサーオイルが酸化している場合には、同じくエアコンディショナー構成部品、配管内を洗浄し、新しいコンプレッサーオイルと交換する必要があります。
サイトグラスでは、エアコンディショナー配管内を流れる冷媒ガスの大まかな流量は確認出来ますが、正式な流量はマニホールドゲージの低圧ゲージ、高圧ゲージの指針が示す数値を確認する様にします。
また、完全な真空状態からエアコンディショナー配管内に冷媒ガスを充填する場合には、自動車メーカーが指定する冷媒ガス量を補充する様にします。
冷媒ガスは少なくてもエアコンディショナーの効きが悪いですが、多過ぎても効きが悪くなります。
同様に、コンプレッサーオイルの量も、少なくてもエアコンディショナーの効きが悪いですが、多過ぎても効きが悪くなります。
フロンガス(R-12)等はオゾン層を破壊する原因となりますので、大気放出は絶対に行わない様にします。
また代替えフロンガス(Hfc134a)等も地球温暖化を起こすガスである事を認識し、大気放出は絶対に行わない様にします。
少し冷媒ガスが漏れているだけだから、あるいは修理するのに費用が掛かり過ぎるからと言った事を理由に冷媒ガスの補充を行う事は、既に冷媒ガスが漏れているから更に冷媒ガスの漏れを助長させているに等しい事から避ける様にする事を推奨します。
エアコンディショナーのサービスバルブにマニホールドゲージの低圧ホース、高圧ホースを接続する際には、必ずエンジン停止状態で接続する様にします。
エンジンの回転部分に当該ホース等が巻き込まれ、作業者等が重大な障害を負ったり、車両等が損傷する事が考えられます。
エアコンディショナーの冷媒ガスを取り扱う時には、高圧ガスである事を認識し、十分な知識を持った者が作業を行う事を推奨します。
冷媒ガスの取り扱いを誤ると、サービス缶に入っている等の冷媒ガスが爆発、噴出等し、作業者が重大な障害を負ったり、車両等が損傷してしまう事があります。
製造から大きく年数が経過している自動車でも、ユーザーが大切にする気持ちさえあれば、整備を担当する者としては、そのユーザーの為に、そして当該自動車の為に全力で対応出来ますね。
配管内の真空引きを行います
緩衝用ウレタンスポンジ
↑ プレッシャーS/W
リキッドタンクに取り付けられているプレッシャースイッチ
キャップは確実に取り付けます
低圧側・高圧側共に正常に圧力を示す様になりました
入り口側の配管のフレアナットを締め付け固定します
入り口側の配管を調整し、リキッドタンクに合わせます
出口側の配管のフレアナットを締め付け固定します
アダプターを取り付けたリキッドタンクをエンジンルーム内へ・・・
アダプター (配管取り付け側)
アダプター (リキッドタンク取り付け側)
リキッドタンクを外した配管にテープ等を巻き付けておきます
リキッドタンクが外れたエンジンルーム内
リキッドタンク入り口側配管を取り外しました
リキッドタンク入り口側配管を取り外しました
リキッドタンク取り付けボルトを外します
リキッドタンク取り付けボルトを外します
入り口側、出口側共に配管を外します
リキッドタンクの設けられている六角部を押さえ、緩めます
配管内の冷媒を完全に抜き取ります
低圧配管内の圧力が高い様です
キャップを外し、ホースを接続します
マニホオルドゲージの高圧配管を・・・
リキッドタンク〜エバポレーター間は霜が付いています
リキッドタンクを境にして霜が付いています
← 霜が付いていない
←
結露し霜が付いた高圧配管
332型車 エンジンルーム全景
サイトグラスで配管を流れる冷媒ガスの状態を確認します
↓ テーピング
マニホオルドゲージの低圧配管を・・・
↑ 高圧配管接続口
真新しいコンプレッサーが取り付けられていました
高圧配管が結露し霜が付いています
←