取材車両 W30-733940
入庫日 2005年09月21日
走行距離 102981km
クランクプーリーの付け根からエンジンオイルが漏れています
結構 漏れています
ユーザーから、駐車場にクルマを停めると、少し以前からエンジンの下辺りにエンジンオイルが漏れた様な跡が付いているから見てください、と依頼が有りました。
早速、車両を下側から確認すると確かにエンジンの前の方からエンジンオイルが漏れている様だ。
よ〜く観察すると、クランクプーリーの根元からエンジンオイルが漏れています。
クランクシャフトのフロントオイルシールのリップ部からエンジンオイルが漏れていると断定しました。
クランクシャフトフロントオイルシールの状態を確認する為に、クランクプーリーを外してみます。
まずクランクプーリーに掛かっていますファンベルト、エアコンコンプレッサーベルト、パワステベルトを取り外します。
これらの補機類の駆動ベルトを取り外したのを機会に確認します。
パワステベルトに大きくヒビが入っており、他の2本も若干のヒビが入っているのが認められる事から、今回は全ての補機類の駆動ベルトを交換する事にいたしました。
続いてクランクプーリーを取り外します。
補機類の駆動ベルトを確認します
補機類の駆動ベルトを取り外しました
クランクプーリーを取り外しました
オイルシールのリップ部からエンジンオイルが漏れています
取り外したクランクプーリー
クランクプーリーを取り外して確認すると、やはりクランクシャフトフロントオイルシールのリップ部からエンジンオイルが漏れている事が判明いたしました。
エンジンオイルが漏れて、非常に汚れた状態となっていますので、パーツクリーナー等で綺麗に清掃します。
取り外したクランクプーリーもパーツクリーナー等で綺麗に清掃します。
綺麗になったら、これらの部品について異常が無いかどうかを点検します。
綺麗になったエンジンのフロント部
クランクプーリーに異常が・・・
オイルシールのリップ部との接触面が摺り減っています
綺麗に清掃後、確認するとクランクシャフトのオイルシルリップ部と接触する部分が、大きく擦り減っている事が確認出来ました。
これではクランクシャフトフロントオイルシールのみ交換してもエンジンオイルの漏れは解消出来ない事が推測出来ます。
ユーザーに確認すると、出来るだけ安価に整備してほしい旨の連絡が入ったので、このままこのクランクプーリーを再使用する事にいたしました。
オイルシールを取り外します
傷を付けない様に慎重に・・・
用意した新品のオイルシール
取り外したオイルシール(左)と新品(右)
これから、いよいよエンジンフロントカバーに取り付けられているクランクシャフトフロントオイルシールを交換します。
今回の様なオイルシールはドライバーを差し込んでテコの原理を利用すると簡単に取り外す事が出来ます。
ただし、エンジンフロントカバー、クランクシャフトには傷を付けない様に作業をする事が大切です。
特にクランクシャフトに傷を付けてしまった場合、傷の程度にもよりますがエンジンオイルが漏れてしまう原因にもなります。
また工具はしっかりと握り、作業者自身が怪我をしたり、使用している工具が飛んで行って、近くに有る違う部品を破損しない様にする事も留意して下さい。
オイルシールが取り外せましたら、ウエス等で綺麗に清掃し、エンジンオイルが漏れた原因を探求します。
今回はリップ部等に切れている箇所は無く、クランクプーリーのオイルシールリップ部の接触部の擦り減りと、オイルシールリップ部の摩耗によりエンジンオイルが漏れたものと断定いたしました。
続いて、対策を施しながら部品を取り付け、組み付けて行きます。
綺麗に清掃してからオイルシールを取り付けます
特殊工具を使用します
特殊工具を当ててオイルシールを打ち込みます
オイルシールを取り付けました
エンジンフロントカバーのオイルシールを取り付ける部分をパーツクリーナー等で清掃します。
新品のオイルシールに特殊工具を当て、ハンマーで少しずつ叩いて歪めない様に真っ直ぐ挿入して行きます。
特殊工具が無い場合には肉厚が分厚く、オイルシールの直径とほぼ同じ直径のパイプ等で代用します。
クランクプーリーの取り付け位置は一定ですので、オイルシールを取り付けられていた位置(面一の位置)より約2mm奥迄挿入します。
オイルシールの挿入位置を変更する事によって、クランクプーリーの擦り減っている箇所にオイルシールのリップ部が当たる事がなくなり、擦り減っていない箇所にオイルシールのリップ部が当たる様になり、クランクプーリーを再使用した場合でも、エンジンオイルの漏れを防ぐ事が出来ます。
オイルシールの挿入が完了いたしましたら、オイルシールに傷が付いていないか、変形していないか、均等に挿入されているかを再度確認します。
次にクランクプーリーですが、オイルシールのリップ部に接触する箇所を大き目に1000番以上の耐水ペーパーで軽く研磨します。
この場合には、円方向に耐水ペーパーを当てる様にします。
軸方向に耐水ペーパーを当てた場合、耐水ペーパーを当てた事による傷が軸方向に付いてしまい、この傷からエンジンオイルが滲み出て来る可能性も有りますので注意する事が必要です。
軽く研磨が完了しましたら、パーツクリーナー等で清掃し、オイルシールのリップ部に接触する箇所にエンジンオイル、グリース等を薄く塗布します。
これによりオイルシールのリップ部との初期の馴染みも可能となり、オイルシール自身の寿命も長くする事が出来ます。
クランクプーリーは耐水ペーパーで処理します
クランクプリーと補機類の駆動ベルトを取り付けました
補機類の駆動ベルトはPIT WORK製品を使用しました
クランクプーリーを取り付けますが、その前にクランクシャフトのフロント部にスピルキーが確実に取り付けられている事を確認します。
少しの衝撃で外れたり、位置がずれたりしますので、確実に取り付けられている事を確認します。
次にクランクプーリーを取り付けますが、初めに取り付けられていた箇所迄確実に挿入できたか、スピルキーをエンジンフロントから見た時に確実にクランクプーリーの溝に入っているかを確認します。
以上が確認出来ましたら、ここでクランクプーリー取り付けボルトとワッシャーを取り付けます。
クランクシャフトとクランクプーリーの摺動が悪く、中々奥迄クランクプーリーが入って行かない場合にはクランクプーリーの取り付けボルトを取り付け、締め付ける事によってクランクプーリーを挿入して行きますが、この場合には特に後からクランクプーリー取り付けボルトを一旦取り外しスピルキーに状態を確認する事を推奨いたします。
この後、クランクプーリーの取り付けボルトを確実に締め付けます。
次に補機類の駆動ベルト(ファンベルト、エアコンコンプレッサーベルト、パワステベルト)の取り付けます。
今回は新品に交換する必要がありましたので、PIT WORKブランドの製品を手配して、使用させていただきました。
今迄取り外した箇所が、確実に元通りに取り付けられているかを再度確認します。
確実に取り付けられていればエンジンを始動して、エンジンオイルの漏れを点検します。
エンジンを始動して、エンジンオイルの漏れを点検します
余白