暖機後エンジンストール

取材車両 ECR33-060799
入庫日   2006年05月29日
走行距離 78950km

ECR33型車エンジンルーム全景

エンジン冷機状態ならば問題は無いが、エンジン暖機後アイドリング回転状態でエンジンストールを起こす車両が入庫して来ましたので、修理の内容を報告させていただきます。

ユーザーからの訴えとして、特に減速時にエンジンストールを起こし易い旨を聞いています。

早速、エンジンフードを開け、エンジンルーム内を確認させていただきます。

ユーザーに問診の結果、吸気管内部の清掃は、今迄1度も行った事は無い様です。

A.A.C.バルブを確認します

インテークマニホールド後部に取り付けられています

I.A.A.ユニット内部の様子です

カーボンが堆積して真っ黒です!

エンジンシステムコンディショナーで清掃します

カーボンが洗い流されて出て来ました

分解して隅々迄清掃します

ガスケット、Oリングを交換し組み付けました

1番疑わしいI.A.A.ユニットを取り外し、内部を確認する事にしました。

ブローバイホース2本を外します。

I.A.A.ユニットに取り付けられているA.A.C.バルブ、F.I.C.D.のコネクターを取り外します。

I.A.A.ユニット本体をインテークマニホールドに取り付けている6m/m(頭部対角10m/m)のボルト3本を取り外し、インテークマニホールドよりI.A.A.ユニットを取り外します。

I.A.A.ユニットの内部を目視で点検すると、ご覧の様にカーボンが堆積し真っ黒になっていました。

これでは正常なアイドリング制御は出来なかったでしょうね・・・。

綺麗に清掃が出来ましたら、A.A.C.バルブ取り付け部のOリングを新品に交換し、またF.I.C.D.取り付け部のパッキンも新品に交換し、I.A.A.ユニットに組み付けます。

I.A.A.ユニットの清掃、組み付けが完了しましたらI.A.A.ユニット取り付け部のガスケットを新品に交換し、3本の6m/m(頭部対角10m/m)取り付けボルトでインテークマニホールドにI.A.A.ユニットを取り付けます。

A.A.C.バルブ、F.I.C.D.のコネクターを接続します。

ブローバイホース2本を元通りに取り付けます。
一通り清掃出来ましたら、I.A.A.ユニットに取り付けられているA.A.C.バルブ、F.I.C.D.を取り外し、それぞれ隅々迄綺麗に清掃を行います。
エンジンシステムコンディショナーを使用し、内部に堆積しているカーボンを清掃する事にします。

エンジンシステムコンディショナーを噴射し汚れを浮かせます。

ブレーキ&パーツクリーナーを使用し、汚れを綺麗に取り除きます。

再びエンジンシステムコンディショナーを噴射し汚れを浮かせます。

エンジンコンディショナー、ブレーキ&パーツクリーナーを交互に使用しながらI.A.A.ユニット内部を綺麗に清掃します。

I.A.A.ユニットの取り付け状態を確認し、エンジンを始動します。

エンジンシステムコンディショナーがエンジン燃焼室内部で燃焼し、エキゾーストチューブから白煙となって排出されます。

数回エンジンをレーシングし、アイドリング状態のまま保持します。

エンジンシステムコンディショナーが燃焼した白煙も出なくなり、アイドリング回転も安定しました。

試運転を行ってみます。

交差点で停止する時等で、減速しクラッチペダルを踏み込んだ時にエンジンストールしていたのが、正常なアイドリングを保つ様になっていました。

このまま30分程度試運転を行いましたが、修理前に発生していたエンジンストールは一切発生しなくなっていました。


今回作業を行いましたI.A.A.ユニットの内、A.A.C.バルブは吸引式の為、直接エンジンシステムコンディショナーを吹き付け清掃を行いましたが、ステップモーター式A.A.C.バルブを使用している車両では、直接エンジンシステムコンディショナーを吹き付けると、ステップモーター内部にエンジンシステムコンディショナーが入り込み動作不良の原因となったり、内部損傷を起こす原因となりますので、ステップモーターには一切エンジンシステムコンディショナーを使用せずに、先端のニードルのみを清掃するに留める様にする事が大切です。

ステップモーターを使用しているA.A.C.バルブでも、I.A.A.ユニット本体側はエンジンシステムコンディショナーを使用し清掃する様にします。

ブローバイホースは熱、油脂により硬化が進んでいる場合が多いようですので、脱着時に硬化が酷い場合には割れ等が発生していなくても、エアの吸い込み等が考えられる事から、新品のブローバイホースに交換する事を推奨いたします。

また、今回の作業では、I.A.A.ユニットに組み込まれているA.A.C.バルブ、F.I.C.D.のコネクターを外しますので、イグニッションスイッチは必ずOFFに状態を保ちながら作業を進める様にする事が大切です。

作業中にイグニッションスイッチをONにしてしまった場合には、E.C.C.S.コントロールユニットに断線信号が入力されてしまい、エンジン制御が正常に行われなくなる可能性も有ります。

この様になってしまった場合には、NISSAN CONSULTUを使用し、フリーズフレームデータの呼び出し消去を行う必要が有ります。

また、最も重要な事柄として、エンジンシステムコンディショナーが目に入った場合、最悪の場合には失明に至る事が事が有ります。

この様な場合には、流水で長く目を洗浄し、眼科医に相談する事を推奨いたします。

また、作業完了後にエンジンを始動する際、エンジンシステムコンディショナーがエンジン燃焼室内で燃焼し、白煙となってエキゾーストチューブから排出されますので、直接この煙を吸い込んだ場合、咳き込む等の障害が発生する可能性があります。

直接吸い込まなくても、白煙が周りに排出されますので、環境には十分に配慮された作業を行う事を推奨いたします。