クラッチオーバーホール (HP10)

取材車両 HP10-316010
入庫日   2007年03月12日
走行距離 165533km

HP10型車 エンジンルーム全景

バッテリーを取り外します

取り外したバッテリー

取り外したバッテリーブラケット

バッテリーブラケットを取り外します

他社から持ち込まれたPRIMERA・・・。

依頼内容はクラッチのオーバーホールで、現在は強化クラッチが取り付けられているが、純正と同様の製品に交換してほしいとユーザーからの依頼を受けたと言う。

以前より、多数の店舗で整備、改造をされている車両のようです。

現車を確認し、クラッチオーバーホールの作業に取り掛かります。

まずは、リフトアップしないで作業可能な箇所の分解から始めます。

バッテリーを取り外し、バッテリーブラケットの取り外します。

バッテリー液が溢れたのか、バッテリーブラケットは塗装が剥げ、錆が浮いています。

この錆びを取り除き、塗装して取り付け時の準備をしておきます。

エアクリーナーを取り外します

取り外したエアクリーナー&レゾネーター

エアクリーナーを取り外すとT/Mケースが見えて来た

スロットルチャンバー入り口に・・・

異物が入り込まない様に対策を施しておきます

クラッチワイヤーを取り外します

アジャストナットを緩め・・・

フックから取り外しました

ブラケットの取り付けボルトを外し・・・

取り外したボルト

ブラケットが外れました

エアフローメーターに接続されているカプラーを抜き、エアフローメーターが取り付けられているエアクリーナーアッパーケースを取り外します。

エアクリーナーエレメントを外すと、エアクリーナーロアケースを取り付けているボルトが見えるので、この取り付けボルトを取り外し、エアクリーナーロアケースを取り外します。

接続されているブローバイホースを取り外し、トランスミッションケースの上部に取り付けられているレゾネーターを取り外します。

ここまでの分解作業が終わると、エンジンルーム上部からトランスミッションケース全体が見えて来るようになります。

これから先の作業に進む前に、エアクリーナー等を取り外すことにより、スロットルチャンバーのエアインテーク側(入り口)が剥き出しとなっていますので、異物、塵等の侵入を防ぐ為に、ウェス、テープ等で入り口を覆い、異物、塵等の侵入を防ぐような対策を施しておきます。

トランスミッション上部に取り付けられているクラッチオペレーティングレバー先端部に取り付けられているクラッチワイヤーを取り外します。

ロックナットを緩め、アジャストナットを緩めて行き、クラッチワイヤーのフックを、クラッチオペレーティングレバー先端部から取り外します。

トランスミッションケースに取り付けられているクラッチワイヤーブラケットの取り付けボルトを外し、クラッチワイヤーが取り付けられたままの状態でクラッチワイヤーブラケットを取り外します。

このクラッチワイヤーブラケットは、トランスミッションを取り外す際に邪魔とならない箇所に移動しておきます。

ロードホイールが外れました

車両をリフトアップし・・・

ハブナットの締結具合を確認しておきます

コネクターを・・・

外しました

エンジンルーム上部から・・・

取り外す事が可能なボルトを外します

スターターモーター取り付けボルトも取り外します

エンジンルーム上部から取り外す事が可能なボルト

トランスミッションには、ニュートラルスイッチ、リバーススイッチ、スピードセンサーのコネクターが接続されていますので、これらのコネクター取り外します。

トランスミッションケース取り付けボルト 1本にコードクランプが取り付けてあり、このコードクランプでアースケーブルが固定されていますので、このコードクランプを解き、アースケーブルをトランスミッションケースから外しておきます。

エンジンルーム上部から取り外す事が出来るトランスミッション取り付けボルト 3本、及びスターターモーター取り付けボルト 2本を取り外します。

トランスミッションケース上部に取り付けられているブリーダーホースを、トランスミッションを取り外す際、引っ掛かる等で邪魔とならない様な場所に移動しておきます。

その他、トランスミッションを取り外す際、支障となる事が考えられる部品は、支障とならない場所へ移動させておく必要があります。

車両をリフトにセットします。

ハブボルトの締結具合を確認する為に、トルクレンチを使用し規定トルクで締め付けられているかを確認しておきます。

車両をリフトアップし、ロードホイールを取り外します。

リフトを更に上昇させ、エンジンルームを下側より見ます。

エンジンルームを下側より見ます

トランスミッション

ドレーンプラグを外し・・・

ミッションオイルを抜きます

取り外したドレーンプラグ

鉄粉等を取り除き清掃したドレーンプラグ

液体パッキンを塗布しドレーンプラグを取り付けました

オイルドレーナーを用意し、トランスミッション下側に取り付けられているドレーンプラグを取り外しミッションオイル(ギヤオイル)を抜きます。

取り外したドレーンプラグにはマグネットが取り付けられており、トランスミッション内部を浮遊する鉄粉を吸着するようになっています。

このドレーンプラグのマグネットに付着している鉄粉等の異物を清掃し取り除いておきます。

ミッションオイルが抜け終わりましたら、ドレーンプラグのネジ部に薄く液体パッキンを塗布し、トランスミッションに取り付けておきます。

ロアバーが取り付けられていました

フロント側はロアアームと共締めのボルトを外し・・・

リヤ側はブラケット部で分離し・・・

ロアバーを取り外しました

ロアアームのエンジンマウント側を取り外します

ロッドを取り外します

ブラケットを取り外します

取り外したボルト、ブラケット

スタビライザーリンクロッドを外します

スパナで周り止めして外します

傷が付かない様にウェスを宛がいます

スタビライザーブラケットを取り外します

スタビライザーが外れました

取り外したボルト

サイドロッドアウターソケットとナックルを分離します

ボールジョイントリムーバーを使用します

サイドロッドアウタースケットが外れました

キャッスルナットを取り外し・・・

この車両には、外品メーカー製のロアバーが取り付けられていましたので、このロアバーも取り外す必要がありました。



ナックルをフリーな状態とする為に、サスペンションロアアームのエンジンマウント側を取り外します。

スタビライザーとスタビライザーリンクロッドを分離します。

取り付けナットのみを回そうとすると、スタビライザーリンクロッドのボールジョイントが共回りしてしまうので、このボールジョイント部分の六角に整形されている部分にスパナを掛け、ボールジョイントが共周りする事を防ぎながら取り付けナットを取り外します。

ナックルの取り付けられているサイドロッドアウターソケットを取り外します。

コッターピン(割りピン)を取り外し、キャッスルナットをアウターソケットボールジョイントボルト部のネジ先端部と面一となるまで緩めます。

ボールジョイントリムーバー等を使用し、ナックルからアウターソケットボールジョイントを抜きます。

スタビライザーのブラケットを取り外し、スタビライザーをフリーな状態にしておきます。

この時、エキゾーストチューブをスタビライザーが接触してしまいますので、ウェス等を宛がい傷が付かない様に保護をしておきます。

サスペンションロアアームに圧入されたいるロッドの取り付けボルト、及びブラケットの取り付けボルトを取り外すと、サスペンションロアアームとエンジンマウントを分離する事が出来ます。

キャッスルナットを取り外すと、サイドロッドアウターソケットが外れます。

右側ドライブシャフトサポートベアリングBkt.を取り外します

取り外したボルト

取り外したサポートベアリングBkt.

ba-

バー、レバー等を掛けて・・・

ドライブシャフトを抜きます

右側ドライブシャフトは、中央部分にサポートベアリングが取り付けられていますので、このサポートベアリングブラケットをシリンダーブロックに固定しているボルト 3本を取り外し、サポートベアリングブラケットをシリンダーブロックから取り外し、フリーな状態としておきます。

右側ドライブシャフトのトランスアクスル挿入部にバー、レバー等を掛け、ドライブシャフトのスプライン勘合部をトランスアクスルから抜きます。

この時に、トランスアクスルに取り付けられているサイドオイルシール、ドライブシャフトに取り付けられているオイルシールガードを変形、損傷等しない様に注意する事が必要です。

左側フロントハブ

割りピンを外し、ロックプレートを外します

ロックナットを取り外します

右側のドライブシャフトは、ハブ側は取り付けたままで、サポートベアリングブラケットをシリンダーブロックから取り外し、フリーとした状態でトランスアクスルとのスプライン勘合部のみを抜いておきましたが、左側のドライブシャフトは、ハブと分離しトランスアクスルとのスプライン勘合部を抜き、完全にドライブシャフトを取り外しておきます。

トランスアクスルは、車両の左側に移動し取り外しますので、左側のドライブシャフトは完全に抜き取っておかないと、トランスアクスルを取り外す際に障害となってしまいます。

ハブの中心に挿入されているドライブシャフトの外側に挿入されている割りピンを抜き取ります。

ロックプレートを取り外し、ドライブシャフトロックナットを取り外します。

このままの状態で、手の力だけでハブ中心のスプラインからドライブシャフトが抜ければ良いのですが、なかなかその様にうまくは行きません。

ハブ中心のスプライン部と、ドライブシャフトのスプライン部の挿入部位にルーセン等を噴霧し浸透させます。

サスペンションロアアームとナックルを取り付けているボルト&ナット等を取り外し、ナックルがフリーな状態となる様にしておきます。

次にドライブシャフトロックナットをドライブシャフトに取り付け面一となるまでロックナットを挿入します。

ロックナットを挿入したままの状態で、このロックナットとドライブシャフトの凸出部を銅ハンマー等で衝撃を与えながら、ハブ中心部からドライブシャフトを抜き取ります。

トランスアクスルのドライブシャフト挿入部にバー、レバー等を掛け、ドライブシャフトのスプライン勘合部をトランスアクスルから抜きます。

トランスアクスルの、左側のドライブシャフト挿入部にはリミテッドスリップディファレンシャル(L.S.D.)が取り付けられており、スプライン勘合部は2段階に勘合しています。

この為、左側のドライブシャフトのスプライン勘合部をトランスアクスルから抜く場合には、バー、レバー等を2本用意し、対角にこのバー、レバー等を掛け真っ直ぐに抜き取る様にします。

傾いたままの状態では、ドライブシャフトのスプライン勘合部はトランスアクスルから抜けてはくれません。

この時に、トランスアクスルに取り付けられているサイドオイルシール、ドライブシャフトに取り付けられているオイルシールガードを変形、損傷等しない様に注意する事が必要です。

また、今回の作業車両では、トランスアクスルの左側ドライブシャフト挿入部のオイルシールからギヤオイルが漏れていますので、オイルシールの交換が必須事項となっています。

また、このオイルシールからギヤオイルが漏れている場合には、オイルシールのリップ部の摩耗が原因か、ドライブシャフトのオイルシール当たり面の不良かを点検し、ドライブシャフトに問題が有る場合にはドライブシャフトを修正、または交換する必要が有ります。

左側のドライブシャフトは、トランスアクスルを取り外す際、障害となりますので車両から完全に取り外しておきます。

ロックナットを面一まで挿入します

オイルシールからギヤオイルが漏れています

バー、レバー等を掛けて・・・

ドライブシャフトを完全に抜き取りました

ドライブシャフトが抜けたシール部

シフトコントロールレバー等を取り外します

取り外したボルト、ナット類

左側のエンジン&ミッションマウント

アースケーブルのクランプを外しておきます

ミッションジャッキをセットします

右側のエンジン&ミッションマウントが外れました

取り外した右側のエンジン&ミッションマウント等

リヤ側のエンジン&ミッションマウント

取り外したトランスアクスル取り付けボルト

トランスアクスル本体を取り付けているボルトを取り外します

バー、レバー等でE/G〜T/A間に隙間を開けます

トランスアクスルが外れました

トランスアクスルが外れたエンジン後部

取り外したトランスアクスル

クラッチを取り外します

クラッチを取り外したエンジン後部

取り外したクラッチカバー&ディスク

クラッチカバー取り付けボルト

用意していただいたクラッチカバー&ディスク

新品のクラッチ(左側)と取り外したクラッチ(右側)

フライホイールを取り外したエンジン後部

取り外したフライホイール

フライホイール取り付けボルト

用意していただいた日産純正フライホイール

新品(左側)と取り外したフライホイール(右側) クラッチ取り付け側

新品(左側)と取り外したフライホイール(右側) エンジン側

トランスアクスルの左側オイルシールからギヤオイルが漏れていた原因は、オイルシールのリップ部が摩耗しているのが原因だと判明しました。

右側のオイルシールはギヤオイルが漏れてはいませんでしたが、左側のオイルシールがギヤオイル漏れを起こし、オイルシールの交換が必須となっている為、同条件で使用されて来た右側のオイルシールも交換する事といたします。

左側のエンジン&ミッションマウントを取り外します。

左側のエンジン&ミッションマウントの付近のトランスアクスルケースに取り付けられているクランプに固定されているアースケーブルを取り外しておきます。

ミッションジャッキをトランスアクスル下部にセットします。

左側のエンジン&ミッションマウントを取り外します。

ミッションジャッキはそのままの状態で保持し、リヤ側のエンジン&ミッションマウントをブラケットとセットで取り外します。

リヤ側のエンジン&ミッションマウントブラケットとトランスアクスルを固定している内の1本のボルトは、リヤ側のエンジン&ミッションマウントが干渉し取り外す事が困難な事から、エンジンクロスメンバーとリヤ側エンジン&ミッションマウントを分離しておく事が必要です。

エンジンとトランスアクスルを取り付けているボルトの内、下部に取り付けられているボルトを全て取り外します。

これで、トランスアクスルを取り付けているボルト&ナット、そしてトランスアクスルに取り付けられているカプラーに接続されているコード等は全て取り外しが完了した事となります。

このままの状態で、取り外しを忘れているボルト&ナット等が残っていないか、またカプラー等の抜き取り忘れも無いかを充分に確認しておきます。

また、トランスアクスルを取り付けているボルト&ナットは、違った種類のボルト&ナットが適宜使用されておりますので、取り付け位置を把握し、取り付け時に間違えない様に整理し保管しておく事も必要です。

なお、今回の作業中に、リヤ側のエンジン&ミッションマウントブラケット取り付けボルトの内、1本が抜け落ち脱落している事が判明しました。

前回に整備した者が締め忘れた等で脱落したものと思われますが、取り付け時には新たなボルトが必要となって来ますので、予め新品のボルトを用意しておきました。

トランスアクスルが外れても、トランスアクスルが不意に落下したりしてしまわない様にトランスアクスルを保持しておく作業員を必ず待機させ、トランスアクスルを手で支えておきます。

この時には、トランスアクスルケース等の表面にあるバリ等で怪我をしない為に、軍手等を嵌め素手ではトランスアクスル等を触らない様にします。

エンジンとトランスアクスルの間に隙間を作る為に、バー、レバー等でトランスアクスルを少し抉ります。

この時に、エンジン、トランスアクスル共に肉厚が薄く、強度的に弱い箇所を抉る事は避け、出来るだけ肉厚が厚い丈夫な箇所を抉る様にします。

肉厚が薄く、強度的に弱い箇所をバー、レバー等で抉ると、バー、レバー等を当てている箇所が損傷等してしまう可能性があります。

エンジンとトランスアクスルの間に隙間が出来ましたら、更に奥へバー、レバー等を挿し込み抉ります。

トランスアクスルは、下側へ傾きながら外れて来ますので、トランスアクスルを出来るだけ水平に保つ様にエンジンから遠ざける様に取り外して行きます。

トランスアクスルが、エンジン後部から外れましたら、ミッションジャッキを降下させ、トランスアクスルをミッションジャッキ上から作業床面に降ろしておきます。

外れたトランスアクスルを、ミッションジャッキ上に載せたままにしておくと、トランスアクスルが不意に作業床面に落下し、トランスアクスル等が損傷したり、作業者が障害を負う可能性があります。

続いて、エンジン後部に取り付けられているクラッチカバー、クラッチディスクを取り外します。

クラッチカバーをフライホイールに取り付けているボルトを、対角線上に均等に少しずつ緩めて行き、取り外します。

この時に、クラッチカバーは予想以上に重く感じる事がありますので、クラッチカバーの重量を十分に勘案しながら作業を行う必要があります。

また、クラッチカバーを取り外すと、フライホイールとクラッチカバーに挟まれる様に取り付けられているクラッチディスクも同時に外れ、慎重に作業を行わないとクラッチディスクを落下させ、クラッチディスク等を損傷させたり、作業者が障害を負う可能性があります。

取り外したクラッチカバー、クラッチディスクを確認します。

クラッチカバーは、クラッチレバー先端が若干摩耗しているだけですが、クラッチディスクは大きく摩耗し、使用限界に到達している事が解りました。

ユーザーの希望で、作業を依頼してきた会社が用意したクラッチカバー、クラッチディスクはエクセディー製の部品でした。

日産純正相当の部品として用意された様です。

パッケージを開封し、製品を確認します。

形状、大きさ等は、作業前に取り付けられていましたクラッチカバー、クラッチディスクが強化クラッチでしたので、新品のクラッチカバー、クラッチディスクとは異なっています。

今回はエンジン最後部に取り付けられているフライホイールも交換も行いますので、この新品のフライホイールに合致したクラッチカバーか?  このクラッチカバーのサイズに適合したクラッチディスクか?  クラッチディスクのスプラインと、トランスアクスルのメインドライブシャフトのスプラインが合致するか?  ・・・等を予め確認しておく必要があります。

フライホイールを取り外します。

フライホイールを取り外した後、クランクシャフトリヤオイルシールを点検し、エンジンオイルの漏れ、滲み等が無いかを確認しておきます。

クランクシャフト後部中心には、焼結合金製のブッシュが嵌め込まれています。

このブッシュも損傷等が無い事を確認しておきます。

車両に取り付けられていたフライホイールは軽量化フライホイールでしたが、ユーザーの希望により日産純正部品に交換する事になりました。

車両に取り付けられていたフライホイールと、新たに用意した日産純正フライホイールを並べて比較してみました。

特に裏側、エンジン側の肉厚が薄く軽量化が図られている事が解ります。

レリーズベアリングを交換します

レリーズベアリングを取り外します

レリーズベアリングが外れました

新品(左側)取り外したレリーズベアリング(右側)

用意したレリーズベアリング

クラッチハウジング&レリーズフォーク等を清掃します

レリーズレバー

クラッチハウジング内のレリーズレバー(上部)

クラッチハウジング内のレリーズレバー(下部)

日産純正 クラッチグリース

レリーズフォークとの当たり面にクラッチグリースを塗布します

スリーブにも同じくクラッチグリースを塗布します

レリーズベアリングの交換が出来ました

スプライン部にもクラッチグリースを塗布します

右側のサイドシールを交換します

トランスアクスルのクラッチハウジング内のレリーズフォークに取り付けられているレリーズベアリングを交換します。

レリーズレバーを動かない様に手で押さえながら、レリーズベアリングを画像の手前方向に引っ張るようにすると取り外す事が出来ます。

レリーズフォーク、レリーズスリーブ等に付着しているグリース等を綺麗に清掃しておきます。

クラッチハウジングの中も、クラッチダストで汚れていますので綺麗に清掃しておきます。

トランスアクスルのレリーズレバーが取り付けられている箇所にルーセン等を噴射し、汚れを押し出すと共にレリーズレバーが軽く動く様に給油しておきます。

余分に出て来ましたルーセン等は、綺麗に拭き取っておきます。

取り外したレリーズベアリングと、用意した新品のレリーズベアリングが同一かを確認します。

今回は、日本精工製のレリーズベアリングを用意していただきました。

取り外したレリーズベアリングに取り付けられていますレリーズフォークに取り付ける為のクリップを、新品のレリーズベアリングに取り付けておきます。

クラッチグリースを用意します。

今回用意したのは、日産純正 クラッチグリースです。

新品のレリーズベアリングに取り付けたクリップの、レリーズフォーク当たり部にクラッチグリースを塗布します。

レリーズベアリング中心のスリーブ部にもクラッチグリースを塗布しておきます。

レリーズベアリングを元通りにスリーブに通し、レリーズフォークに取り付けます。

レリーズベリング中心のスリーブ部に塗布したクラッチグリースの内、余分ではみ出した分を綺麗に清掃し取り除いておきま。

また、レリーズフォーク取り付けに塗布したクラッチグリースも、余分ではみ出した分は綺麗に清掃し取り除いておきます。

トランスアクスルのクラッチハウジングに突出しているメインドライブシャフトのスプライン部にもクラッチグリースを塗布します。

この後、クラッチディスクのスプライン部をメインドライブシャフトのスプライン部に挿入し、クラッチディスクがスプライン上を軽く軸方向に動く事を確認しておきます。

メインドライブシャフトに塗布したクラッチグリースの内、余分な分、及びクラッチディスクに付着したクラッチグリースの内の余分な分を取り除いておきます。

余分なクラッチグリースを、そのまま放置し組み付けた場合、この余分なクラッチグリースがクラッチディスク等に飛散しクラッチが滑ったり、クラッチジャダの原因となる場合があります。

トランスアクスル右側に取り付けられているサイドシールを交換します。

必ずしも交換する必要はありませんが、今回は車両の総走行距離から判断し、予防整備の一貫として交換を実施します。

用意したオイルシールは、日産純正部品です。

トランスアクスルに傷等をつけない様にオイルシールをドライバー等を使用し取り外します。

用意した日産純正 オイルシール

新品のオイルシールを取り付けます

右側サイドシールが交換出来ました

オイルシールを取り外した後、トランスアクスルの当該オイルシール取り付け部に傷等が無い事を確認し、もし傷等が有る場合には綺麗に修正しておきます。

傷等が有るのに、そのままの状態でオイルシールを取り付けると、作業完了後に注入するミッションオイルが漏れ出て来る事があります。

新品のオイルシールをハンマー、ドリフト等を使用し、均等に挿入してゆき、トランスアクスルケースと面一となる様に取り付けます。

左側サイドシールはミッションオイルが漏れていました

用意した日産純正 オイルシール

新品のオイルシールを取り付けます

左側サイドシールが交換出来ました

トランスアクスル左側に取り付けられているサイドシールを交換します。

左側に取り付けられているオイルシールは、既にミッションオイルが漏れており、必然的に交換する必要があります。

用意したオイルシールは、日産純正部品です。

トランスアクスルに傷等をつけない様にオイルシールをドライバー等を使用し取り外します。

オイルシールを取り外した後、トランスアクスルの当該オイルシール取り付け部に傷等が無い事を確認し、もし傷等が有る場合には綺麗に修正しておきます。

傷等が有るのに、そのままの状態でオイルシールを取り付けると、作業完了後に注入するミッションオイルが漏れ出て来る事があります。

この左側のオイルシールからは、既にミッションオイルが漏れていた事から、充分に点検しミッションオイルが漏れていた原因を究明する事も必要です。

今回のミッションオイルが漏れていた原因は、オイルシールリップ部の摩耗によるものでした。

新品のオイルシールをハンマー、ドリフト等を使用し、均等に挿入してy行き、トランスアクスルケースと面一となる様に取り付けます。


エンジン後部に取り付けられているクランクシャフトリヤオイルシールも今回の作業で交換する事としました。

この交換作業も、必ずしも実施する必要はありませんが、車両の総走行距離から判断した予防整備の一貫です。

用意した新品のクランクシャフトリヤオイルシールは、日産純正部品です。

クランクシャフトリヤオイルシールを交換します

用意した日産純正 オイルシール

ドライバー等を使用し、オイルシールを取り外します

新品のオイルシールを取り付けます

ハンマー、ドリフト等を使用し取り付けます

オイルシールの交換が出来ました

クランクシャフト、クランクシャフトリヤオイルシールリテーナー等に傷等をつけない様にオイルシールをドライバー等を使用し取り外します。

クランクシャフトリヤオイルシールリテーナーに傷等は有りませんでしたが、クランクシャフトのオイルシールリップ接触部には摩耗痕が有り、当該箇所に新品のオイルシールリップ部が当たると、摩耗痕に沿ってエンジンオイルが漏れて来る可能性があります。

この為、クランクシャフトリヤオイルシールは、リテーナーと面一ではなく、約1mm奥まで挿入し摩耗痕の無い場所にリップ部が当たる様に取り付けました。

新品のフライホイール

ピンを取り付け・・・

脱脂、清掃し取り付け準備が出来ました

取り付けが終わったフライホイール

クラッチアライニングバー

フライホイールの取り付け準備をします。

クラッチカバー取り付け位置決め用のピンが別パッケージとなっておりますので、このピンをフライホイールに挿入し取り付けます。

このピンは、フライホイール取り付け穴の奥まで挿入します。

フライホイールは、酸化(錆)防止の為、油脂が表面に塗ってあります。

この油脂を脱脂すると共に、フライホイール全体を清掃しておきます。

フライホイールは、思った以上に重量があり、高所より落下等させると、作業者が重大な障害を負ったり、車両、工場等を大きく損傷させる事に繋がる事があります。

クランクシャフトリヤ部にフライホイールを取り付けます。

フライホイールに回り止め用工具を取り付け、フライホイール取り付けボルトを規定トルクで締め付けます。

また、この取り付けボルトには、ネジロック等を塗布し取り付ける様にします。

クラッチアライニングバーを用意し、クラッチの取り付け作業に入ります。

クランクシャフトリヤ中央部に圧入されている焼結合金製ブッシュに付着しています油脂、塵等を綺麗に清掃し取り除いておきます。

クラッチアライニングバーに付着しています油脂、塵等も綺麗に清掃し取り除き、クランクシャフトリヤ中心部にクラッチアライニングバーを挿入しセットします。

クラッチディスクの向きに注意しながら取り付け、このクラッチディスクに被せる様にクラッチカバーを取り付けます。

クラッチディスクを取り付け・・・

クラッチカバーを取り付けます

センター出しが確実に行われている事を確認します

クラッチカバー取り付けボルトを仮締めし、クラッチアライニングバーを抜きます。

この時、少し力を加えた位では抜けない様であれば、クラッチのセンターが確実に出ていない可能性があります。

クラッチカバー取り付けボルトを少し緩め、クラッチアライニングバーが比較的容易に抜ける位置にクラッチディスクを少し移動する必要があります。

クラッチアライニングバーを抜き取り、目視でクラッチセンターが確実に出ている事を確認し、クラッチカバー取り付けボルトを規定トルクで増し締めします。

このクラッチのセンターが確実に出ていない場合、トランスアクスルのメインドライブシャフトがクラッチディスク、クランクシャフトリヤ中心部に圧入されています焼結合金製ブッシュへと入って行かず、トランスアクスルの取り付けが出来ません。

また、クランクシャフトリヤ中心部に圧入されています焼結合金製ブッシュ、及びトランスアクスルのメインドライブシャフト先端部に油脂、塵等が付着している場合、クラッチの切れ不良となる場合がありますので、綺麗に清掃しておく必要があります。

トランスアクスルを取り付けます

高さを合わせ、隙間が均等となる様にします

クランクプーリーをツールで回しています

トランスアクスルをミッションジャッキにセットし、エンジン後部に沿わせる様にします。

エンジン後部のトランスアクスル取り付け部と、トランスアクスルのエンジンへの取り付け部の高さを合わせ、隙間が外周上で全て同一となる様にします。

手の力でトランスアクスルをエンジンの方向へ押し、トランスアクスルをエンジン後部へ取り付けます。

トランスアクスルには、位置合わせ様ガイドピンが取り付けられていますので、このピンをエンジン後部のピン挿入穴に合わせ挿入する様にします。

トランスアクスルのメインドライブシャフトスプラインが、クラッチディスクスプラインに入って行かない場合には、トランスアクスルのギヤを、どの段でも良いので入れます。

これでも入って行かない場合には、エンジン前部に取り付けられているクランクプーリー取り付けボルトにツールを掛け、エンジンを回転方向にゆっくりと回しながらトランスアクスルを手の力で押し、トランスアクスルのメインドライブシャフトスプラインを、クラッチディスクスプラインに挿入して行きます。

エンジン後部にトランスアクスルが隙間無く取り付けられましたら、トランスアクスル取り付けボルトを挿入し締め付けます。

右側のドライブシャフトを挿入しました

左側のドライブシャフトも挿入します

トランスアクスルがエンジン後部に確実に取り付けられましたら、リヤ側及び右側エンジンマウント、シフトコントロールレバー、ドライブシャフト等を、取り外した時とは逆の順番で取り付けて行きます。

フロントハブ、サイドロッドアウターソケット等に使用されていますキャッスルナットの周り止めとして使用されていますコッターピンは、再使用せず新品の物と交換する事を推奨いたします。

エンジンルーム下側から取り付けます部品が、全て取り付けられましたらトランスアクスルのミッションオイルフィラープラグを取り外し、指定粘度のギヤオイルを注入して行きます。

フィラープラブを取り外します

ミッションオイルを注入します

ミッションオイルが溢れ出て来ました

エンジンルーム下側からの作業が完了しました

エンジンルーム下側からの作業が完了しました(リヤ側から)

ミッションオイルをフィラープラグ取り付け穴から溢れ出て来るまで注入します。

溢れ出て来たミッションオイルは、必ず出し切る様にします。

出し切らないでフィラープラグを取り付けた場合、ミッションオイルが入り過ぎている場合があり、この場合にはトランスアクスルのエアブリーダーからミッションオイルが噴出して来る事があります。

ミッションオイが規定量 注入出来ましたら、フィラープラグのネジ部に液体パッキンを薄く塗布し取り付けます。

ドレーンプラグ、フィラープラグ共に、若干のテーパーが付けられており、ミッションケースと面一以上に締め付けた場合、ミッションケースにクラックが入り、ミッションオイルが漏れ出る原因となる可能性があります。

暫く時間を置き、注入したミッションオイルがトランスアクスルのドレーンプラグ、フィラープラグ、ドライブシャフト挿入部等から漏れ出ていない事を確認します。

エンジンルーム下側で作業を行った箇所を再点検し、取り外した部品が確実に取り付けられているか、またボルト、ナット等が確実に締め付けられているかを再確認しておきます。

コネクター類を接続します

クラッチワイヤーを取り付け調整します

バッテリーブラケットを取り付けます

エアクリーナーを取り付けます

エンジンルーム上側からの作業が終了しました

脱落していた為、用意したボルト

エンジンマウントリヤ側

リフトを下げ、エンジンルーム上側からの作業に入ります。

トランスアクスル取り付けボルトの内、エンジンルーム上側から取り外しましたボルトを取り付けます。

コネクター3箇所を接続します。

クラッチワイヤブラケットをトランスアクスルに取り付け、クラッチワイヤー先端部をレリーズレバーに引っ掛けます。

クラッチワイヤーを規定値に調整し、室内からクラッチペダルを数回踏み込み、クラッチペダルの遊び等が規定値通りとなっている事を確認します。

クラッチワイヤーの調整が終わりましたら、アジャストナットのロックナットを締め付けます。

バッテリーブラケットを取り付けます。

この車両に取り付けられていたバッテリーブラケットは、溢れ出たバッテリー液で侵され、塗装は剥離し腐食していましたので、錆を綺麗に落としパスターで仕上げ取り付けています。

また、バッテリーブラケット取り付けボルトも腐食し、痛みが甚だしいので新品のボルト等を用意し交換しています。

エアクリーナーを取り付けます。

この車両のエアクリーナーケースは、間に合わせ程度のボルトで取り付けられていた為、正規のボルト等を用意し、取り付けています。

またエアクリーナーケースに塵が入っている場合には、予め綺麗に清掃してから取り付けます。

レゾネーター、ブローバイホース等を接続します。

最後にバッテリーを取り付け、ターミナルを取り付けます。

エンジンルーム上側からの作業も終了しました。

エンジンルーム上側で作業を行った箇所を再点検し、取り外した部品が確実に取り付けられているか、またボルト、ナット等が確実に締め付けられているかを再確認しておきます。

確認作業が終わりましたら、ロードホイールを取り付け、トルクレンチを使用して規定トルクで締め付けます。

車両をリフトから降ろし、試運転を実施します。

特にトランスアクスルのギヤの入り具合、発進時の半クラッチの状態、低速から加速して行くに従う時の動力伝達具合等を充分に点検します。

今回、作業を行った車両では、間に合わせ程度のボルト等で部品が取り付けられていたり、ボルト自身が脱落している箇所もありました。

新車時には、絶対的に正規のボルト等で取り付けられていたはずです。

過去に作業を行った者が、取り外した部品、ボルト等を適切に管理していなかったか、あるいは不適切な作業を行ったのかは解りません。

脱落していたボルトが取り付けられている場所は、エンジンマウントブラケットとトランスアクスルの接合箇所で、非常に作業がやり難い箇所です。

作業がやり難いからといって、ボルトの挿入を行わなかったり、あるいは忘れたり、規定値で締め付けなかったりする事は、設計通りの状態が保たれず、他の部位に過剰な負担が圧し掛かる結果を招き、時として非常に危険な状態に陥る事が予想されます。

新車時の状態を保ち、維持する様に整備を行う事は大切な原点です。


今回の作業は、道路運送車両法により認証工場の認可を受けた自動車整備工場で作業を行い、整備主任者が完成検査を行わなければならないとされています。

作業の内容におきましても、容積の大きい部品、重量の大きな部品があり、1人の作業では非常に危険な場合があります。

従いまして、作業は2人以上で行う事を推奨いたします。

また、トランスアクスルケースはバリが多く残っており、素手で作業を行った場合には怪我をする事があります。

必要であれば軍手を嵌める等、手を保護する様 心掛けて下さい。

配線のカプラーを取り外す際、接続を間違えると最悪の場合 車両に取り付けられているコントロールユニット等に障害が発生し、修理費用に莫大な費用が必要となる事もあります。

配線のカプラーは不用意に取り外さず、元の接続が解らなくなる可能性があるならば、事前に印を付ける等して必ず元通りに戻せる様にしてから取り外す様にします。

トランスアクスルをエンジンと分離する際、手で揺すっただけでは隙間が出来ない場合が多くあります。

この様な場合には、マイナスドライバー、バー等の工具を使い隙間を開けますが、この前に取り付けボルトが全て取り外されている事を再確認する必要があります。

クラッチディスクは、フライホイール、クラッチカバー、クラッチディスク本体の形状次第では逆に取り付けが可能な物もあります。

クラッチディスクを逆に取り付けた場合には、クラッチが切れなくなるばかりか、周辺の部品をも損傷させる場合がありますので注意が必要です。

クラッチカバー取り付けボルトは、規定トルクで全てを均等に締め付けないと、クラッチジャダー等の原因となる事があります。

確実な整備作業・・・。

簡単な様ですが、実は難しいのかも知れません・・・。