クラッチペダルを踏むと異音発生

取材車両 S15-500765
入庫日   2007年06月23日
走行距離 52453km

クラッチオペレーティングシリンダーが見えますi

クラッチハウジングから出ているレリーズフォークを確認します

クラッチオペレーティングシリンダーを取り外します

取り外したクラッチオペレーティングシリンダー取り付けボルト

クラッチオペレーティングシリンダーが外れました

ユーザーからの依頼項目は、クラッチペダルを踏むとギコギコ、キシキシと異音が発生する。

特に最近は、この異音が大きくなって来たので修理してほしいと言うもの。

早速、現車を預かり確認する事になりました。

車両に乗り込み、実際にクラッチペダルを踏むと、ユーザーの言う通りに かなり大きくギコギコ、キシキシと異音が発生しています。

この異音の発生源を確認すると、クラッチペダル&ブラケットからではなく、車両の下側から・・・。

すなわちクラッチオペレーティングシリンダーに押され、レリーズベアリングを押す働きをする、レリーズフォーク周辺から異音が発生している様です。

レリーズフォークは、テコの原理で説明すると棒に当たり、支点はピボットボルト、力点はクラッチオペレーティングシリンダー、作用点はレリーズベアリングとなります。

車両をリフトにセットし、上昇させます。

車両を下側から見て、トランスミッションのクラッチケース外側に取り付けられているクラッチオペレーティングシリンダーを取り外します。

レリーズフォークに摩耗痕が見られます

ラバー製のダストカバーを取り外します

ダストカバーが外れました

Hゴム状の溝が設けられています

クラッチハウジングの内部が見えます

クラッチダストで汚れています

ピボットボルト当たり部には錆も発生しているようです

ブレーキ&パーツクリーナーで洗浄します

洗浄し、綺麗になりました

軽くエアブローし、乾燥させます

スリーボンド 二硫化モリブデン焼付防止潤滑剤

スプレーし、浸透させます

ピボットボルト当たり部全体に浸透しました

ダストカバーを取り付け・・・

クラッチオペレーティングシリンダーを取り付けました

クラッチオペレーティングシリンダーが外れましたら、クラッチホースが捩れない様に、またクラッチオペレーティングシリンダーに取り付けられているプッシュロッドが脱落しない様に注意し、作業の邪魔とならない場所へ移動させておきます。

レリーズフォークとクラッチオペレーティングシリンダーのプッシュロッド当たり部の摩耗状態を確認しておきます。

大きく摩耗している場合や、変形等している場合には、当該部品は交換する必要があります。

また、クラッチオペレーティングシリンダーからクラッチフルードが漏れていないか、クラッチホースに亀裂等がないかも確認しておく必要があります。

レリーズフォークを貫通させる為に、クラッチハウジングに開けられた穴を塞ぐ様に取り付けられているラバー製のダストカバーを取り外します。

クラッチハウジングに開けられている穴に、ダストブーツに設けられている溝部がはめ込まれる様に取り付けられていますので、ダストブーツをダストブーツの中心部へ少し押し込む様にすると、簡単に取り外す事が出来ます。

ダストブーツが外れましたら、ダストブーツに亀裂、変形、損傷等が無い事を確認しておきます。

ダストブーツが外れましたら、クラッチハウジングに開けれてた穴からクラッチハウジングの内部を見る事が出来ます。
クラッチハウジングの内部を見ると、レリーズフォークにはクラッチダストで汚れており、ピボットボルト当たり部は錆が発生している様です。

この事から、レリーズフォークとピボットピン当たり部のグリースが切れている様で、レリーズフォークとピボットピンの当たり部から、クラッチペダルを踏んだ時に異音が発生している事が明らかとなりました。

クラッチペダルを踏んだ時に発生する異音の発生源が特定出来たところで、修理作業に入ります。

クラッチハウジングに開けられた穴から、レリーズフォークに付着しているクラッチダスト等をブレーキ&パーツクリーナー等で綺麗に清掃します。

この時には、発生している錆も出来るだけ取り除く様にします。

ブレーキ&パーツクリーナーはレリーズフォークのピボットピン当たり部付近のみを清掃する様に噴射します。

目視しないで、クラッチハウジング内部を清掃しようとしたり、クラッチハウジングの奥深くまで清掃すると、レリーズベアリング、レリーズスリーブ等に塗布されているクラッチグリース等を溶解し垂れさせる事によって、エンジン運転時にクラッチ部品が回転すると、溶解し垂れたクラッチグリース等がクラッチディスクのフェーシング等に付着してしまい、クラッチが滑ったりクラッチジャダが発生する原因にもなりかねません。

レリーズフォークに付着していましたクラッチダスト等の汚れが清掃出来、ピボットボルト当たり部に発生していました錆が取り除けましたら、エアダスターを使用しレリーズフォーク、ピボットボルトの当たり部を中心に軽くエアブローし、ブレーキ&パーツクリーナー等を完全に除去し乾燥させておきます。

あまり強くエアブローを行うと、クラッチハウジング内に堆積しているクラッチダスト等が飛散し、再びレリーズフォーク、ピボットボルト当たり部に このクラッチダスト等の汚れが飛散し付着してしまう事になってしまいます。

レリーズフォーク、ピボットボルト当たり部に新たに塗布するグリースは、スリーボンド製 二硫化モリブデン焼付防止潤滑剤(スプレー缶)を用意しました。

缶をよく振り、内部の潤滑剤を一定にしてから、レリーズフォーク、ピボットボルト当たり部にスプレーします。

この時には、レリーズフォークをピボットボルトから少し離す(浮かす)様にし、少し隙間を作り、この隙間に潤滑剤を行き渡らせておきます。

この潤滑剤をスプレーする時には、周囲に大きく飛散しない様にする事が大切です。

必要な箇所以外に大きく飛散してしまうと、クラッチディスクのフェーシング部等に この潤滑剤が付着し、クラッチが滑ったり、クラッチジャダが発生する原因となってしまいます。

レリーズフォーク、ピボットボルト当たり部に潤滑剤が塗布出来ましたら、クラッチハウジングに開けられた穴を塞ぐ様に設けられているダストブーツを取り付けます。

この時には、ダストブーツに設けられている溝部を確実にはめ込み取り付けます。

ダストブーツに設けられている溝部が確実にはめ込まれていない場合には、クラッチハウジングに開けられている穴とダストブーツの隙間からゴミ、異物等がクラッチハウジング内部に侵入したり、ダストブーツが外れてしまい、大きな異物等がクラッチハウジング内部に侵入する事があります。

クラッチオペレーティングシリンダーを取り付けます。

プッシュロッドが確実に取り付けられている事を確認し、プッシュロッド、レリーズフォーク当たり部に、グリースを塗布してから取り付けます。

今回は、この当たり部にもスリーボンド製 二硫化モリブデン焼付防止潤滑剤を塗布しています。

ダストブーツ、クラッチオペレーティングシリンダーの取り付けを再確認し、リフトを下げます。

車両に乗り、クラッチペダルを踏んだ時に、発生していました異音が消えている事を確認します。



今回の作業を行っても、当該箇所からの異音が消えない場合には、トランスミッション等を車両から取り外し、クラッチハウジングに取り付けられているレリーズフォークを完全に取り外し、清掃した上で給油等の処置を行う必要があります。

今回の作業を行う上で、レリーズフォーク、ピボットボルト当たり部周辺をブレーキ&パーツクリーナー等で清掃しましたが、レリーズベアリンブ、レリーズフォーク等に塗布されておりますクラッチグリース等を溶解してしまった場合には、クラッチペダルを踏んだ際、重く感じたり、クラッチペダルから足を離した際にクラッチが戻り不良となる場合があります。

溶解させたグリースが垂れてしまった場合には、クラッチディスクのフェーシングに垂れたグリーズ等が付着し、クラッチが滑ったり、クラッチジャダを起こす原因になります。

この様になってしまった場合には、トランスミッション等を車両から取り外し、清掃、再給油を行う必要が発生してしまいます。

簡単な作業ですが、充分に注意し、細心の注意を払いながら作業を行う必要があります。