取材車両 S15-500990
入庫日 2006年11月13日
走行距離 65471km
ユーザーから、エンジンオイルをディーラーで交換していただいた際に、フロントサスペンション テンションロッドのゴム部に亀裂が入り、制振用油脂が漏れ出していると言われたので確認してほしいとの整備依頼がありました。
早速確認すると、指摘通りにフロントサスペンション テンションロッドのゴム部に亀裂が入り、制振用油脂が漏れ出しています。
フロントサスペンション テンションロッドの交換が、早急に必要となっていました。
ユーザーに報告すると、アライメント調整機能が付いたテンションロッドの装着を希望されましたので、CUSCO ピロテンション 232473ANを取り寄せ、交換する事にいたしました。
車両をリフトアップします。
この状態でテンションロッドの状態を確認すると、画像の様にテンションロッドブラケット取り付け部のゴム部に亀裂が入り、制振用油脂が漏れ出し、周囲にこの油脂が飛散している様子が見て取れます。
テンションロッドの取り外し作業に入ります。
S15型車の場合、エンジンアンダーカバーを取り外さなくてもテンションロッドの交換作業は可能です。
CUSCO ピロテンション
車両をリフトアップします
テンションロッド(右側)
テンションロッド(左側)
テンションロッドBkt.接合部のナットにメガネレンチを掛けます
同じくボルトにソケットレンチを掛けます
テンションロッドが外れました
ゴム部に亀裂が入り制振用油脂が漏れ出ています
テンションロッドが外れた車両側の状態
テンションロッドが外れたブラケット部
テンションロッドが外れたロアアーム部
飛散している油脂を拭き取り清掃します
パッケージを開けピロテンションを取り出します
ピロボール部に取り付けられているタイラップを取り除きます
規定の寸法に予め調整します
ロアアーム部より締め付けます
ピロボール部を締め付けます
捩れない様に取り付けます
4輪ホイールアライメントテスターをセットします
シャフトを回しアライメントを調整します
ロックナットを手で締め付け・・・
スパナを使用し本締めします
後部のナットも同様に本締めします
製品に添付されている取り付け説明書より
製品に添付されている取り付け説明書より
テンションロッドのテンションロッドブラケット取り付け部取り付けボルト&ナットを緩めます。
次にテンションロッドのロアアーム取り付け部のナットを緩めます。
テンションロッドブラケット取り付け部のボルト&ナット、ロアアーム取り付け部のナットを取り外します。
これらのボルト、ナットを取り外す際には、テンションロッドを片手で持ち、ボルト、ナットが全て外れた時にテンションロッドを落下させない様に注意しながら外して行きます。
テンションロッドをテンションロッドブラケット、ロアアームから取り外します。
取り外したテンションロッドを確認してみます。
ゴム部が円周的に亀裂が入り、内部の制振用油脂が漏れ出しています。
やはり、交換が必要な状態となっていました。
テンションロッド、テンションロッドブラケットのテンションロッド取り付け部、ロアアームのテンションロッド取り付け部に損傷、変形等が無い事を確認しておきます。
テンションロッドのゴム部に亀裂が入り、周囲に飛散している制振用油脂を綺麗に拭き取り清掃しておきます。
製品に添付されている取り付け説明書に記載されている様に、ピロボールテンションロッドの寸法を調整します。
この時には、カラー(ピロボール部)とロッド(ロアアーム取り付け部)を固定し、シャフト(中央の青色部分)を回転させ長さを調整します。
シャフトを固定し、カラーのみ回転させたり、ロッドのみ回転させる事は絶対に避けます。
シャフトを固定させる場合には、カラーとロッドを同等数回転させ、長さを調整します。
カラーのみを回転させたり、ロッドのみを回転させ、長さを調整した場合には、回転させた方のネジ部の掛かりが回転させていない側よりのネジ部の掛かりより少なくなり、応力が掛かり易くなり耐久性等に問題が発生する事があります。
ロックナットは大きく緩めた状態としておきます。
ピロボールテンションロッドを車両に取り付けます。
テンションロッド取り付けボルト&ナットを元通りの箇所に使用し仮締めします。
テンションロッドのロアアーム取り付け部のナットを本締めします。
純正品のテンションロッドを取り付ける際には、ロアアームが車両接地状態と同様となる様に、ロアアーム下側にミッションジャッキ等を掛け、ロアアームを上昇させます。
今回は、ピロボールテンションロッドを取り付けますので、純正品の様にゴム部が無く、この様にミッションジャッキ等でロアアームを持ち上げてボルト&ナットを締め付ける必要は特にありません。
ピロボールテンションロッドのテンションロッドブラケット取り付け部のボルト&ナットを本締めします。
ピロボールテンションロッドの取り付けが終わりましたら、4輪ホイールアライメントテスターに車両をセットします。
4輪ホイールアライメントテスターで測定を行いながら、ピロボールテンションロッドのシャフトを回転させ、ホイールアライメントが目標値となる様に調整します。
なお、ピロボールテンションロッドの長さのみを調整するのではなく、4輪ホイールアライメントを総合的に調整し直す必要もあります。
製品の取り付け説明書に明記してある通りに、カラー部に捩れが発生しない様に調整作業を行います。
ピロボールテンションロッド、及び4輪ホイールアライメントの調整作業が終わりましたら、ピロボールテンションロッドのロックナットを前後共にスパナを使用し、本締めし固定します。
ピロボールテンションロッドロックナットの本締め後、ピロボールテンションロッドカラー部に捩れが無い事を再度確認しておきます。
ピロボールテンションロッドのテンションロッドブラケット取り付け部、ロアアーム取り付け部の締め付け具合を再度確認し、4輪ホイールアライメント調整時に緩締した箇所のボルト、ナットも締め付け具合も再度確認しておきます。
最後に試運転を行い、直進状態、旋回時の左右差、加速時、定常走行時、減速時、それぞれの状態での走行安定性を見極めます。
正常ならば作業は完了となります。
ピロボールテンションロッドを、製品に添付されています取り付け説明書に記載されています基準値寸法に調整し取り付けた場合、特に違和感無く運転を行う事が出来ます。
しかし、車両特有のズレ等が発生している場合も考えられますので、必ず4輪ホイールアライメントを同時に測定調整する事を推奨いたします。
4輪ホイールアライメントの測定調整を行わなかった場合、走行安定性の低下、タイヤ変摩耗の原因となる事が考えられます。
また、当該部品は取り付けに不具合があると、走行時に安定性を欠き、最悪の場合には重大な障害を伴った事故へと発展する場合もありますので、充分に注意を払った上での作業を行う事を推奨いたします。
ピロボールテンションロッドは、道路運送車両法 保安基準に定められた性能試験に合格した製品を使用する事を推奨いたします。
この性能試験に合格していない製品を使用した場合には、耐久性能が劣っている製品もあり、使用過程において破断等を起こす事が考えられます。
充分に注意して製品を選ぶ事も、非常に大切な事と言えます。