今回は、オートマティックトランスミッション搭載車をマニュアルトランスミッションに換装したいと言う依頼を受けましたので、この作業内容について説明して行きます。
なお、当該作業に関しましては、道路運送車両法の保安基準に基づき構造等変更検査を受けなければならない作業内容になります。
一般ユーザーがこの作業を行う場合には、まず各地方運輸局運輸監理部等へ相談される事を推奨いたします。
S15 SR20DET用6M/T
S15 SR20DET用プロペラシャフト
S15 SR20DET用シフトレバー及び周辺部品
S15 SR20DET用フライホイール、クラッチ一式
先立ってユーザー自身が主要な部品を中古部品で購入されており持ち込まれましたので、これらの部品について紹介させていただきます。
S15 SR20DET用6速マニュアルトランスミッション。
こちらにはミッションマウントも付属しています。
S15 SR20DET M/T用プロペラシャフト。
S15 SR20DET M/T用シフトレバー及びシフトレバー取り付け用スナップリング、トランスミッション側ダストブーツ、ボディー側ダストブーツとダストブーツ取り付けリング、シフトノブ。
S15 SR20DET M/T用フライホイール(中央のオイルレスブッシュ挿入済み)及び取り付けボルト、クラッチカバー、クラッチディスク及びクラッチカバー取り付けボルト。
以上が持ち込んでいただいた部品です。
各部品共、使用前に状態を確認し、必要であれば修理、構成部品等の交換等を予め行っておく必要が有ります。
早速、作業に掛かります。
車両をリフトアップする前に、室内のA/Tセレクトレバーを取り外します。
コンソールフィニシャー(A/Tリング)を外します。
クリップ4箇所で固定されているだけですので、後部より持ち上げる様にすると簡単に外す事が出来ます。
コンソールフィニシャーが外れましたら、クラスターリッドCを取り付けているビスが2本見えます。
この2本のビスを外します。
セレクターレバーはPレンジ位置ではクラスターリッドCは外れませんので、イグニッションキーをON状態にし、ブレーキペダルを踏んでセレクターレバーをNレンジ、もしくは2レンジ、1レンジにします。
この時には、車両が動き出さない様に対処しておく事が必要です。
クラスターリッドCの後部から外し、少し持ち上がった所でシガライター用カプラー、リヤデフォッガスイッチ用カプラー、ハザードスイッチ用カプラーを外します。
これでクラスターリッドCが外れました。
セレクターレバーのカバーを外し、O/D ON、OFFスイッチ等用カプラー、照明用カプラーを外します。
キーインターロックケーブルを外します。
セレクターレバーの6M/Mの取り付けボルト4本を外します。
これで室内側からのセレクターレバーの取り外し作業は完了です。
この後、リフトアップした後にオートマティックトランスミッションとの結合箇所を外します。
室内からセレクトレバーを外します
コンソールフィニシャーが外れました
クラスターリッドCが外れました
バッテリーのマイナス端子を外します
バッテリーのマイナス端子を外します。
この後、スターターモーターの取り付けを外しますので、万が一スターターモーターのB端子がボディーと接触する等が発生しますと一気に大電流が流れ危険です。
また、その他トラブル等に繋がる恐れも有りますのでバッテリーのマイナス端子は一連の作業完了迄外しておきます。
ATFを抜き取ります
サイドブレーキを解除してから、車両をリフトアップします。
オートマティックトランスミッションオイルパンのドレーンプラグを外し、ATFを抜き取ります。
ATFチェンジャー等を使用し、抜き取っても構いません。
ただし、いずれの方法でATFを抜き取っても、オートマティックトランスミッション内部にはトルクコンバーターを始め各所にATFが残っている事を念頭においておく必要が有ります。
A/T用カプラーが外れました
ヒューズボックス横でA/T用カプラーを外します
オートマティックトランスミッションにはインヒビタースイッチを始め色々な配線が入っています。
これらの配線はオートマティックトランスミッション側で外す事は出来ません。
エンジンルーム内のヒューズボックス横に多数のカプラーが集中して配置されていますが、オートマティックトランスミッションに入っている配線もここに有るカプラー4個が関係しています。
オートマティックトランスミッションから辿って来て、該当するカプラー4個を外します。
また、他の配線と一緒にホルダー等で固定されていますので、これらホルダー等も分解し、オートマティックトランスミッションに入っている配線のみを分離しておきます。
またエンジンルーム内に留める事無く、オートマティックトランスミッションの方(車両の下回りの方)へ移動させておきます。
セレクターレバーとチェンジロッドを分離します
外れたセレクターレバー
先程、室内側を取り外しましたセレクターレバーの下部とチェンジロッドを結合させれいるピンを外し、分離します。
セレクターレバーを少し持ち上げる様にするとセレクターレバーは室内側へ外れますが、フロアパネルとの密着度を上げる為に付けられているクッション剤が張り付き、なかなか外れない時が有りますが、室内側からセレクターレバーを左右に動かすと外す事が出来ます。
これでセレクターレバーは完全に外す事が出来ました。
この時点で車両内から外側へ出す必要はありませんが、今回は外れたセレクターレバーを紹介する為に外側へ出しています。
アンダーカバーを外します
外れたアンダーカバー
ATFクーラーパイプ&ホースを外します
エンジンアンダーカバーを外します。
外れましたら、ラジエーターの下側に入っているATFクーラーのインレット側、アウトレット側のホースが取り付けられている部位が確認出来ます。
このATFクーラーホース2本を外します。
オートマティックトランスミッション側ATFクーラーパイプのインレット側、アウトレット側共にアイボルトを外し、パイプとアイボルト間に取り付けられていますパッキン それぞれ2枚ずつ、合計4枚も外します。
ATFクーラーパイプは、エンジンやオートマティックトランスミッションにブラケットで数箇所取り付けられています。
これら取り付け箇所のブラケットを外し、インレット側パイプ、アウトレット側パイプの結合箇所も外します。
ATFクーラーパイプ&ホースが外れましたら、少し知恵の輪状態になりますが、車両より取り外します。
注意点としましては、ATFクーラーに取り付けられていますATFクーラーホースを外す際、及びオートマティックトランスミッションとATFクーラーパイプを取り付けていますアイボルトを外す際にはATFが少し出て来ます。
またATFクーラーパイプ&ホース内にもATFが少し残っていますので、車両から取り外す際にはATFが出て来ますので予め受け皿等を準備して床に毀れない様に対処する事が必要です。
ATFクーラー内部をブレーキ&パーツクリーナー等で洗浄します。
その後、エアダスターで少しずつ内部に残っているATF及びブレーキ&パーツクリーナー等を排出します。
一気にエア圧を掛けると破損する恐れが有りますので注意して下さい。
ATFクーラーが出ているパイプに目盲栓を取り付けバンドでしっかりと締め付けます。
E/G、A/Tに取り付けられている箇所を全て外します
ATFクーラーパイプ&ホースが外れました
目盲栓を用意しました
ホースバンドで締め付けます
目盲栓(汎用品) 2個
ホースバンド(Tridon MH-5) 2個
プロペラシャフトを外します。
プロペラシャフトとファイナルドライブ(ディファレンシャルギヤ)との結合を外します。
プロペラシャフトを回しながら、順に4本外します。
オートマティックトランスミッションのセレクターレバー位置がパーキングレンジの位置に有ったり、サイドブレーキが作動したままだとプロペラシャフトを回す事が出来ませんので、予め確認しておく事が大切です。
プロペラシャフトとファイナルドライブの結合を外します
センターベアリングブラケットを外します
プロペラシャフトが外れました
プロペラシャフトプロテクターを外し、センターベアリングブラケットの取り付けボルトを外します。
これで、プロペラシャフトが外れました。
エンジンの最後端下側にホールプラグが取り付けられています。
このホールプラグを、6m/mの取り付けボルト2本を外し、取り外します。
ホールプラグを外した穴からドライブプレートが見えます。
エンジンのクランクプーリーに27m/mのソケットレンチ等を掛け回すと、10m/mのボルトが見えて来ます。
このボルトはドライブプレートとトルクコンバーターを結合させているボルトですので、取り外す必要が有ります。
1本外しましたら、再びクランクプーリーを90°回転させるとボルトが見えて来ます。
ここでボルトを外します。
このボルトは4本取り付けられていますので、作業を繰り返しながら順番に取り外して行きます。
またクランクプーリーにレンチを掛け、エンジンを回す時には通常のエンジン回転方向、すなわちエンジン前方から見て右回転に回す様にします。
ドライブプレートとトルクコンバーターの結合ボルトが4本外れましたら、ホールプラグを元通りに取り付けておきます。
ホールプラグを外します
トルクコンバーターの結合ボルトを取り外します
クランクプーリーにレンチ等を掛けて回しながら・・・
エキゾーストチューブの結合を外します
エキゾーストチューブの結合が外れました
エキゾーストチューブブラケットを外します
トランスミッションメンバーを外します
これよりオートマティックトランスミッションの取り外し作業に取り掛かりますが、その前にエキゾーストフロントチューブを取り外し、触媒をフック等で吊るしておきます。
トランスミッションメンバーを外すと、エンジンがトランスミッションの重量により大きく後部が下がります。
この時にエキゾーストチューブが結合したままだとエキゾーストチューブに過大な重量が加わり、トラブルの原因にもなりかねません。
今回、作業を行っております車両は、エキゾーストマニホールド&フロントチューブを藤壺技研のレガリスEXに交換していますので、エキゾーストマニホールドとエキゾーストフロントチューブの結合を取り外しておきます。
またオートマチックトランスミッションとエキゾーストチューブがブラケットを通じて結合していますので、この箇所も取り外しておく必要が有ります。
トランスミッションメンバー後部にエキゾーストチューブブラケットが取り付けられています。
このエキゾーストチューブブラケットも取り外しておきます。
ここでオートマチックトランスミッションにミッションジャッキを掛けます。
確実にミッションジャッキが掛けられましたらミッションメンバーを取り外します。
ミッションメンバーが外れましたら、ミッションジャッキを少し下げ、エンジンとオートマティックトランスミッションを結合させているボルトを取り外して行きます。
上部に取り付けられているボルトは、オートマティックトランスミッションが正規の位置では工具を挿入する事が非常に困難な為、トランスミッションメンバーを取り外し、ミッションジャッキを少し下げ、オートマティックトランスミッションが少し下がった状態で取り外すようにします。
エンジンとオートマティックトランスミッションを結合しておりますボルトは全て取り外しますが、左側1本と右側1本は緩めるだけで、外さないで残しておきます。
スターターモーターの取り付けボルトを外します。
ミッションジャッキを少し上げ、間違って急激にオートマティックトランスミッションが脱落するのを防止する為に残しておいた左側1本、右側1本のボルトを外します。
エンジンとオートマティックトランスミッションの隙間にバー等の工具を挿入し、上下左右が均等に隙間が大きくなる様に徐々にこぜます。
この時に、トルクコンバーターとドライブプレートの間にも隙間が出来ているかを確認し、この間に隙間が出来ていないようならば、バー等の工具を挿入して隙間を作ります。
オートマティックトランスミッションのトルクコンバーターが付いた状態で、オートマティックトランスミッションを取り外します。
オートマティックトランスミッションとトルクコンバーターが外れてしまうと、内部に残っているATFが大量に出て来ますので注意が必要です。
オートマティックトランスミッションを徐々に外して行く際には、配線等の引っ掛かり等無い様に注意しながら行って下さい。
オートマティックトランスミッションはかなりの重量が有り、脱落する等すれば大怪我する等の事故に繋がる危険性が有りますので、慎重に行う必要が有ります。
またオートマティックトランスミッションをミッションジャキ上に置いたままとせず、早急に床上等に下ろす事も脱落事故等を防ぐ上でも大切です。
トランスミッションメンバーが外れました
エンジンとの結合ボルトを外します
ミッションジャッキを確実に掛けます
オートマティックトランスミッションは外れました
ドライブプレートを外します
クランクシャフトリヤオイルシールを交換します
リテーナーをプーラーを使用して外します
ドライブプレートを外します。
今回は、クランクシャフトリヤオイルシールを交換する事にしました。
クランクシャフトリヤオイルシール(12279-6N200)
オートマティックトランスミッションが搭載されているエンジンは、クランクシャフト後部中央にリテーナーが取り付けられています。
マニュアルトランスミッションを搭載する場合、フライホイールを取り付けますが、この際に干渉してしまいますので予めプーラー等の工具を使用して取り外しておきます。
マニュアルトランスミッションが搭載されているエンジンでは、フライホイール中央にオイルレスメタルが取り付けてあり、マニュアルトランスミッションのメインドライブシャフトが入る様になっています。
これからフライホイールを取り付けて行きますが、ドライブプレートとフライホイールを並べて比較してみました。
本体も違いますが、取り付けボルトも長さが全然違う事が解ります。
リテーナーが外れました
ドライブプレート(左側)とフライホイール(右側)
フライホイールが取り付けられました
クラッチカバー&ディスクが取り付けられました
クラッチディスク(左側)とクラッチカバー(右側)
フライホイールをノックピンの位置を合わせて取り付けます。
クラッチ取り付け面を確認し、表面が荒れている様ならば耐水ペーパー等で綺麗に修正しておき、油脂成分を完全に脱脂しておきます。
クラッチを取り付けますが、クラッチカバーのクラッチディスク当たり面を確認し、表面が荒れている様ならば耐水ペーパー等で綺麗に修正しておき、油脂成分を完全に脱脂しておきます。
クラッチセッティングツール等を使用して、クラッチディスクのセンターを出しながらクラッチカバーを取り付けます。
A/T(左側)とM/T(右側)
クラッチレリーズベアリングを交換しました
クラッチカバー&ディスクが取り付けられましたらクラッチセッチングツールを外し、クラッチディスクが中央に有るかを念の為に確認します。
これからマニュアルトランスミッションを取り付けて行きます。
その前に取り外したオートマティックトランスミッションと、これから取り付けますマニュアルトランスミッションとを並べて比較してみました。
今回は、クラッチレリーズベアリングを交換する事にしました。
クラッチレリーズをマニュアルトランスミッションから外し、プレス等を使用してクラッチレリーズベアリングを交換します。
クラッチレリーズベアリング(30502-69F10)
レリーズフォークを一旦外し、クラッチハウジング内を清掃します。
レリーズフォークとピボット当たり箇所にグリースを塗布し、レリーズフォークを取り付けます。
クラッリレリーズ摺道部とレリーズフォークとの当たり面にグリースを塗布し、クラッリレリーズを取り付けます。
レリーズフォークを動かし、クラッチレリーズが軽く動く事を確認します。
マニュアルトランスミッションのリヤオイルシールも交換します。
トランスミッションリヤオイルシール(32136-89F00)
今回、作業を行いました車両はエキゾーストマニホールドを藤壺技研製のレガリスEXが取り付けられている為、マニュアルトランスミッションを取り付ける際、干渉してしまいますので一旦取り外します。
ミッションジャッキ等を使用してマニュアルトランスミッションを取り付けます。
この時、エンジンの前側が少し下がっていますので、エンジンの前側を少し持ち上げながらマニュアルトランスミッションを取り付けます。
この場合、エンジンの前側を上げ過ぎますと、エンジンとカウルトップパネルの間にヒーターホース等を挟んでしまいトラブルの原因に繋がる可能性が有りますので注意が必要です。
マニュアルトランスミッションをエンジンと結合させる際、真っ直ぐにマニュアルトランスミッションを挿入すると、マニュアルトランスミッションとフロアパネルが干渉してしまいますので、マニュアルトランスミッションを車両に対して右側に約60°傾けて挿入し、フロアパネルと干渉する恐れが無くなる位置迄挿入出来ましたら、マニュアルトランスミッションを真っ直ぐにし、エンジンと結合させます。
エンジンとマニュアルトランシミッションが結合しましたら、左側1本、右側1本に取り付けボルトを挿入し仮締めします。
ここでミッションジャッキを少し下げ、エンジンとマニュアルトランスミッションとを結合させるボルトを挿入し、順番に本締めして行きます。
オートマティックトランスミッションからマニュアルトランスミッションに換装した場合、エンジンと結合させるボルトの長さが変わりますので、予めボルトを手配しておく必要が有ります。
トランスミッション取り付けボルト(31377-65F02) 2本
(31377-89F00) 2本
(31377-89F01) 1本
(31377-89F02) 2本
(31377-89F03) 4本
また、同時にスターターモーターも取り付けますが、この時使用する取り付けボルトの長さが変わりますので、予めボルトを手配しておく必要が有ります。
スターターモーター取り付けボルト(081A1-0021A) 2本
エンジンとマニュアルトランスミッションとの結合ボルト、スターターモーター取り付けボルトの締め付けが終わりましたらミッションジャッキを少し上げ、トランスミッションメンバーを取り付けます。
このトランスミッションメンバーはプロペラシャフトと共に洗浄してシャシブラックで予め塗装しておきました。
トランスミッションメンバーが取り付けられましたらミッションジャッキを片付けます。
ここで先程取り外しておきました藤壺技研製のレガリスEXを取り付けました。
エキゾーストマニホールドガスケットは交換する必要が有りますので予め部品を手配しておく必要が有ります。
エキゾーストマニホールドガスケット(14036-53J00)
続いて、エキゾーストマニホールドとエキゾーストフロントチューブを結合させます。
こちらも間にガスケットを挟んでおり、念の為に予め用意しておりましたガスケットに交換しています。
FUJITSUBO Φ60オイルレスリング(080-20007)
トランスミッションマウントに取り付けられていますエキゾーストチューブブラケットとエキゾーストチューブを結合させます。
リヤオイルシールを交換しました
M/Tを挿入します
M/Tとエンジンの結合が出来ました
予め洗浄して塗装しておきました
トランスミッションマウントを取り付けました
M/T用(上側)とA/T用(下側)プロペラシャフト
エキゾーストチューブを取り付けました
エキゾーストチューブブラケットを取り付けます
プロペラシャフトを取り付けました
トランスミッションオイルを注入します
プロペラシャフトを取り付けます。
取り付けられていましたオートマティックトランスミッション用プロペラシャフトと、今回換装しますマニュアルトランスミッション用プロペラシャフトを比較してみました。
マニュアルトランスミッションの方がオートマティックトランスミッションと比較して全長が長くなる為、その分プロペラシャフトの全長が短くなっています。
また、今回はプロペラシャフト第1軸と第2軸とが分割された姿で手元に届けられています。
プロペラシャフトには重量のバランスを考慮した合マーク(ペイントマーキング)が有りますので、この合マークを確認の上、解る様に処置をしてから洗浄、シャシブラック等で塗装する事を推奨いたします。
違う箇所で取り付けてしまうと、振動が発生する等のトラブルの原因にもなりかねません。
マニュアルトランスミッションに古いギヤオイルが残っていないかどうか、ドレーンプラグを外して確認します。
残っていない様ならばそのままで、残っている様ならば排出後にドレーンプラグを取り付けます。
この時には、ドレーンプラグパッキンを新品に交換する事を推奨いたします。
クラッチオペレーティングシリンダー等を取り付けました
クラッチユニオンジョイント等を取り付けました
クラッチチューブ&ホース等を取り付けました
車両をリフトアップしている状態のままで、クラッチ油圧系統の部品の取り付けを行います。
今回作業を行っておりますS15型車では、オートマティックトランスミッションを搭載していた車両でも、マニュアルトランスミッション車の設定が有り、これから取り付けて行きますクラッチ油圧系統の部品の取り付け穴等は始めから空けられていますので、部品を用意して取り付けるだけとなります。
クラッチチューブ(30850-85F10)
クラッチチューブ(30852-52F00)
クラッチユニオンジョイント(30857-69F00)
クラッチユニオンジョイント取り付けボルト(08368-6162G) 2本
クラッチダンパーチューブ(30852-85F00)
クラッチダンパーチューブブラケット(49791-94L00)
クラッチホース(46211-0M611)
クラッチホースパッキン(46237-A4600)
クラッチホースブラケット(30635-41L10)
クラッチホースブラケット取り付けボルト(08156-8161F)
クラッチホースクリップ(46206-2J000)
クラッチオペレーティングシリンダー(30620-69F23)
クラッチオペレーティングシリンダー取り付けボルト(08121-0251E) 2本
順番に取り付けるだけですが、取り付け位置を十分に把握した上で間違いの無い取り付けや、取り付け後にクラッチホースの捻れが無い事を確認する必要が有ります。
また、クラッチチューブの内、クラッチマスターシリンダーを取り付ける部位には、マスキングテープ等で塞いでおきます。
これからクラッチペダル&クラッチマスターシリンダーを取り付ける為の加工を施しますので、異物等の侵入を防ぐ必要が有ります。
ブレーキペダルを交換して、クラッチペダルを取り付けます
ブレーキペダルを交換します
ここでリフトアップしている車両を降ろし、室内の部品の交換作業を進めて行きます。
まず、ブレーキペダルを交換し、クラッチペダルを取り付ける加工を施します。
ドライバーシートを外します。
シートベルト装着状態検出用のカプラー等が結合していますので、取り外しておきます。
シートレール等がボディー、内装部品等に接触すると傷を付けてしまう等のトラブルに繋がる可能性が有りますので注意しながらドライバーシートを車両の外側へ出します。
インストルメントドライバーパネルロアを取り外します。
まず、ブレーキペダルの交換をします。
ブレーキペダルとマスターバックを結合させていますクレビスピンをクリップを外し、取り外します。
ブレーキペダルブラケット上部に取り付けられている8m/mのボルト1本を外し、マスターバック取り付けナットと共通のカウルトップに取り付けられている8m/mのナット4個を外します。
これでブレーキペダルは外れましたが、ステアリングコラムシャフトが支障となり抜けませんので、ステアリングコラムシャフトを上部に持ち上げる様に固定している8m/mのナット4個を取り外します。
この4個のナットが外れましたら、ステアリングコラムシャフトがフロア側へ落ちて来ますので、手で支え注意しながら外します。
ブレーキペダルがブラケットごと外れ、取り外す事が出来ました。
オートマティックトランスミッション用ブレーキペダルと、マニュアルトランスミッション用ブレーキペダルを並べて比べてみました。
ペダルの大きさが全然違います。
ブレーキペダルはブラケットとセットされた状態で部品の供給を行っています。
ブレーキペダルブラケットAssy(46501-90F00)
ブレーキペダルクレビスピン(46123-03W10)
クレビスピンクリップ(00923-1081A)
マニュアルトランスミッション用ブレーキペダルブラケットAssyを取り付けます。
ステアリングコラムシャフトも元通りに取り付けます。
ブレーキペダルとマスターバックを結合させていますクレビスピンを挿入しますが、新品を用意して交換する事をお奨めいたします。
クレビスピンを外す際に、クレビスピンに取り付けられています樹脂製のストッパーが外れてしまった場合には、必ず新品のクレビスピンに交換して下さい。
クレビスピンにクリップを取り付け、ブレーキペダルの交換は完了です。
続いて、クラッチペダルを取り付けて行きますが、オートマティックトランスミッション搭載車ではクラッチペダル&クラッチマスターシリンダー取り付け穴が開けられていません。
従って、まずこの穴を開ける加工を施します。
室内側よりクラッチペダル取り付け予定部を見ます。
直ぐ近くにA/T C/Uが取り付けられていますので、このA/T C/Uを取り外します。
カプラー2個を抜き、6m/mのボルト2本を外せば、取り外す事が出来ます。
この奥側にクラッチペダル取り付け予定部が有ります。
カウルトップパネルの室内側へ貼り付けられている防音用のクッション材に切れ込みが入れてあります。
一部繋がったままの箇所が有りますので、この箇所をカッターナイフ等を使用して切り離し、クラッチペダル取り付け予定部の防音用のクッション材を取り外します。
防音用のクッション材を取り外した後を見ますと、これから穴を開ける箇所がはっきりと表示されています。
周りの部位が鉄板2枚になっている様で、この穴を開ける箇所のみが鉄板1枚となっており、段差が有りますので穴を開ける箇所がはっきりと解る様になっています。
この穴を開ける箇所の中心に、中央の1箇所にはホールソー等で31m/mの穴を、周りの2箇所にはドリル刃等で8m/mの穴を開けます。
合計3箇所に穴を開ける事が出来ましたら、バリを取り除き、ボディーと同色のタッチアップペイント等を塗り、錆止めの処置を施します。
これでクラッチペダル&クラッチマスターシリンダーの取り付け準備が出来ました。
クラッチペダルは、パダル、ブラケット等組み立てられていない状態で部品を揃え、予め組み立てておく必要が有ります。
クラッチパダル(46540-90F00)
クラッチペダルブラケット(46550-85F00)
ピン(46571-65F00)
ナット(08911-3401A)
スプリングワッシャー(08915-1401A)
リターンスプリング(46571-65F00)
リターンスプリングブッシュ(46534-35F10)
クラッチペダルクレビスピン(01521-00011)
クレビスピンクリップ(00923-1081A)
ペダルハイトアジャストボルト(01111-00182)
クラッチペダルが組み立てられましたら早速取り付けます。
クラッチペダルAssy取り付けボルト(01121-00011)
クラッチペダルAssy取り付けナット(08911-1082G) 2個
クラッチペダルを取り付ける際、カウルトップパネルの反対側、エンジンルーム側にはクラッチマスターシリンダーを取り付けます。
A/T用(左側)とM/T用(右側)ブレーキペダル
M/T用ブレーキペダルを取り付けました
クラッチペダルを取り付ける為の加工を施します
取り外したA/T C/U
クッション材に切れ込みが入れてあります
穴を開ける箇所が表示されています
取り付け穴が開きました
クラッチマスターシリンダー
クラッチペダルAssy
クラッチペダルの取り付けが完了しました
クラッチマスターシリンダーの取り付けも完了しました
加工したA/T C/U
A/T C/Uを移設しました
一旦取り外していた部品を元通りに取り付けました
表面が錆びていました
表面が錆びて歪みが生じていました
錆を取り綺麗にしました
錆を取り歪みを修正しました
シャシブラックで塗装しました
マニュアルトランスミッションにシフトコントロールレバー及び付属品を取り付けて行きます。
今回、ユーザーが用意しました中古部品のうち、シフトコントロールレバー、ホールカバーホルダーに錆等が発生していましたので、事前に処理を行いました。
シフトコントロールレバーは表面に錆が発生していましたので、この錆を落としシール部より上側をシャシブラックで塗装しておきました。
ホールカバーホルダーは表面に錆が発生しているのに加え、歪が生じていましたので錆を落とし、歪を修正してからシャシブラックで塗装しておきました。
スナップリングで固定します
シフトコントロールレバーの先端に取り付けられているブッシュに亀裂、損傷等が無い事を確認します。
シフトコントロールレバーの前後方向に注意しながら、マニュアルトランスミッションのシフトコントロールハウジングにシフトコントロールレバーを挿入し、ブッシュをシフトコントロールロッドに確実に挿入します。
樹脂製のリテーナーを押し込みシフトコントロールレバースプリングを押し縮めながら、スナップリングをシフトコントロールハウジングのCリングの下側の溝へ挿入します。
スナップリングが確実に挿入出来ましたら、シフトコントロールレバーを動かし全段のギヤにスムーズにシフトが出来るかを確認します。
確認出来ましたら、シフトコントロールレバーに組み込まれているオイルシールをシフトコントロールハウジング内へ挿入します。
オイルシールが挿入出来ましたら、同じくシフコントロールトレバーに組み込まれているリテーナーもシフトコントロールハウジング内へ挿入します。
ここ迄の作業が終わりましたら、一旦センターコンソールを取り外します。
ホールカバーをホールカバーホルダーと共に、オートマティックトランスミッションセレクトレバーを取り付けていました6m/mのボルト4本で取り付けます。
上部はシフトコントロールハウジング外側に有る溝の内、下側の溝へ挿入し束線バンド(タイラップ)で締め付けておきます。
ホールカバーアッパーも取り付けて行きます。
下部をシフトコントロールハウジング外側に有る溝の内、上側の溝へ挿入し束線バンド(タイラップ)で締め付け、上部もシフトレバーの外径が大きな所へ持って来て束線バンド(タイラップ)で締め付けます。
シフトコントロールハウジングシールを挿入します
ホールカバーを取り付けます
ホールカバーアッパーを取り付けます
コンソールフィニッシャーA/T用(左側)とM/T用(右側)
シフトコントロールレバーの取り付けが完了しました
ここで、先程取り外しておきましたセンターコンソールを取り付けます。
クラスターリッドCも元通りに取り付けます。
配線カプラーも何本か外していますので、確実に元の場所へ接続して下さい。
コンソールフィニシャーを取り付けます。
取り外したオートマティックトランスミッション用と、これから取り付けますマニュアルトランスミッション用を比較してみました。
コンソールフィニッシャー6MT用(96935-89F60)
シフトコントロールレバーの上端ネジ部にシフトノブを取り付けます。
シフトノブの段違い部に、コンソールフィニッシャーのシフトレバーブーツを被せ、ボタンを留めます。
今回取り付けましたシフトノブにはシフトパターンは明記されていませんが、マニュアルトランスミッション用コンソールフィニッシャーにシフトパターンが明記されておりますので道路運送車両法の保安基準には適合となります。
いずれにもシフトパターンが明記されていない場合には、別途シフトパターンが印刷されたシール等を用意してシフトコントローレレバーの近くに貼り付ける必要が有ります。
なお、簡易的にシフトパターンを記入した紙等をテープ等で貼り付けた物は、道路運送車両法の保安基準には不適合となりますので注意が必要です。
次は、クラッチ油圧系統のエア抜きを行います。
クラッチマスターシリンダーのリザーバータンク内のクラッチフルード(ブレーキフルード)のレベルをミニマムレベルより低下させない様に注意しながらエア抜きを実施して行きます。
また、クラッチフルード(ブレーキフルード)は塗装面に付着しますと塗装が変色を起こしたり、剥離する事が有りますので十分に注意しながら作業を実施して下さい。
まず最初にクラッチマスターシリンダーのエアブリーダーからエア抜きを行います。
クラッチマスターシリンダー内のエアが完全に抜け切りましたら、2番目にクラッチダンパーチューブのエアブリーダーからエア抜きを行います。
このクラッチダンパーチューブのエアは非常に抜け難いですので、、必要であればクラッチユニオンジョイント取り付けボルトを2本外し、クラッチダンパーチューブもブラケットから外して、クラッチダンパーチューブの角度を変えながらエア抜きを行うと、比較的簡単にエア抜きが出来ます。
ただし、クラッチチューブが接続されたまま行いますので、極端に大きく角度を付けてしまうとクラッチチューブ等の損傷に繋がる危険性が有りますので注意が必要です。
クラッチダンパーチューブのエアが完全に抜けましたら、最後にクラッチオペレーティングシリンダーのエアブリーダーからエアを抜きます。
全ての箇所からエア抜きを完了しましたら、実際にクラッチペダルを操作し、遊びの量、切れた時の床板との隙間等を測定し、基準値内に有る事を確認します。
最後にクラッチオペレーティングシリンダーから抜きます
2番目にクラッチダンパーチューブから抜きます
最初にクラッチマスターシリンダーから抜きます
ヒューズ&リレーボックスです
シフトコントロールレバーを取り付けます
青色のリレーが3個並んでいます
1.25線でジャンパー線を作りました
N・Pリレーをバイパスさせます
いよいよ改造も最後の部分となりました。
これから電気装置関係の改造を行います。
配線図と にらめっこしながら、一番簡単な方法で改造を進めて行きます。
オートマティックトランスミッション搭載車の場合、インヒビタースイッチによりオートマティックトランスミッションの現在のシフトポジションを感知しています。
このインヒビタースイッチからの信号を利用して、オートマティックトランスミッションの現在のシフトポジションがパーキング位置(P信号)、ニュートラル位置(N信号)でのみスターター信号入力時に、スターターモーターのS端子に電流を供給するようになっています。
マニュアルトランスミッション搭載車では不要な安全装置で、反対にこの回路が有るとインヒビタースイッチからの信号が入力されない状態となりますので、スターター信号入力時にも一切スターターモーターのS端子に電流が供給されなくなり、エンジンの始動が出来ない状態となります。
したがって、この安全装置の回路を破棄し、新しい回路を作る必要が有ります。
エンジンルーム内のヒューズ&リレーボックスのアッパーカバーを開けて中を見ます。
青色のヒューズが3個並んでいるのが解ります。
真ん中のリレーがN・Pリレーで、このリレーを取り外し、ジャンパー線でバイパスさせれば、この安全装置の回路を破棄し、新しい回路が出来ます。
車両に既に取り付けられています配線が1.25線を使用しているため、同等の1.25線と平端子オス2個を使用してジャンパー線を作ります。
N・Pリレーを取り外し、このジャンパー線を取り外したN・Pリレーソケットの3番端子〜5番端子に挿入します。
端子番号はN・Pリレー上部に描かれています。
ジャンパー線を取り付けましたら、ヒューズ&リレーボックスのアッパーカバーを元通りに取り付けます。
インヒビタースイッチ用カプラーを加工します
T/M中央付近のリバーススイッチ
T/M後部のニュートラルスイッチ
コルゲートチューブを巻き保護します
加工したカプラーを接続します
次に、マニュアルトランスミッションに取り付けられているリバーススイッチ、及びニュートラルスイッチからの信号線を改造します。
オートマティックトランスミッションに接続されたままとなっている配線に、8極の灰色カプラーが取り付けられた物が有ります。
この8極の灰色カプラーを使用しますので、このカプラー側に配線を約100m/m残した状態で配線を切断します。
配線図より抜粋
配線図の3番端子と、マニュアルトランスミッションに取り付けられているリバーススイッチの2本の配線の内の片側1本(どちらでも良い)、及びニュートラルスイッチの2本の配線の内の片側1本(どちらでも良い)を接続します。
この時、8極の灰色カプラーの配線は黒色でした。
配線図の8番端子と、マニュアルトランスミッションに取り付けられているリバースイッチの2本の配線の内、先程接続しなかった側の配線を接続します。
この時、8極の灰色カプラーの配線は緑色でした。
配線図の9番端子と、マニュアルトランスミッションに取り付けられているニュートラルスイッチの2本の配線の内、先程接続しなかった側の配線を接続します。
この時、8極の灰色カプラーの配線の色は桃色でした。
ここに記載しております8極の灰色カプラーの配線の色は、年式、仕様等により若干の変更が有る場合も考えられますので、配線図と照らし合わせた上で配線の接続を行う事をお奨めいたします。
以上で、電気装置関係の改造は完了しましたが、このままではマニュアルトランスミッションをシフト時に、メーターパネル内のインジケーターランプがニュートラル時とリバース時に点灯してしまいます。
メーターパネルを取り外し、インジケーターランプ球を取り外す事をお奨めいたします。
またリバースにシフト時、リバース警告音が鳴りますが、このブザーは他の警告音も発する機能が有る為、差し支えなければ取り外さない事をお奨めいたします。
オートマティックトランスミッション仕様のECCS C/Uをそのまま使用した場合、ニュートラルスイッチがON信号を発生している時(マニュアルトランスミッションギヤがニュートラル時)にはアイドリング回転数は規定の回転数となりますが、ニュートラルスイッチがOFF状態(マニュアルトランスミッションギヤが何れかのギヤにシフトされている時)にはアイドリング回転数が約100rpm上昇します。
この状態を回避する為には、マニュアルトランスミッション仕様のECCS C/Uに交換する必要が有ります。
以上で車両本体の改造は完了です。
この先、各地方運輸局運輸監理部へ構造等変更検査の申請書類を作成の上 提出し、車両を各地方運輸局運輸監理部へ持ち込み、構造等変更検査を受検する必要が有ります。